遺伝子特許を主食に認めるのはとんでもない

  種子法廃止や種苗法改正問題が日本でも迫る前に、海外では特にラテンアメリカで反「モンサント法案」とよばれる運動が社会を揺るがしていた。日本の種子法廃止や種苗法改正問題はこのこの問題と関わっていることは明らかだったから、2017年から20年にかけて、ラテンアメリカやアフリカ、アジアで動いている問題を日本各地で話して回った。
 
 種苗法改正時には十分問題にできなかったものが今、大きな問題になっている。それが特許の問題。種苗法で扱われる権利は「育成者権」と言われるもので、一方、遺伝子組み換え作物で使われるのはそれに加えて「特許権」だ。この育成者権と特許権はどう違うのか、というと一言で言えば、特許権の方がずっと問題が大きい。 “遺伝子特許を主食に認めるのはとんでもない” の続きを読む

グアテマラで再び「モンサント法案」世界で進む危険な動き

 「モンサント法案」がかつてラテンアメリカ中を駆け巡った。「モンサント法案」とは農家に数少ない企業の種子を使うことを強制し、在来種の自家採種による農業を実質的に不可能にしてしまう法案を意味する。でも、ラテンアメリカの農民は大きな運動を起こして跳ね返した国も少なくない。たとえばグアテマラは2014年のサッカー・ワールドカップのどさくさに議会が「モンサント法」を承認してしまったが、全国的な抗議行動を受けて、裁判所はその法成立を無効とし、議会も撤回を決めた(1)。
 
 でも、いったん潰した「モンサント法」がグアテマラで再び甦り、議会に提出された(2)。 “グアテマラで再び「モンサント法案」世界で進む危険な動き” の続きを読む

UPOV条約で危うくなった日本の種苗

 種子法廃止や種苗法改正は農家以外の多くの方の関心も引きつけたと思います。でも、実はこの動きにはUPOV(ユポフ)条約という国際条約が関わっていることはまだあまり知られていないかもしれません。しかし、このUPOV条約というのは大きな問題を持つ条約で、この条約による影響を日本も大きく受けているのが現実なのです。そこで8月8日にOKシードプロジェクトが日本消費者連盟、家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)、農民運動全国連合会と共催でこの問題に関する学習会が開催されました。そこでの印鑰の発表を少し補強してまとめたのが以下の記事です。長くなってしまったので、印刷版のPDFファイルもアップしました。
 動画でも公開されています。末尾にそのURLを掲げます。 “UPOV条約で危うくなった日本の種苗” の続きを読む

民間企業だけに種子は任せられない

 だから言わんこっちゃない。三井化学が作る稲の品種「みつひかり」が消えるかもしれない。交配不良で十分な品質の種籾が作れなかったからだという。天候不順が理由にされている。「みつひかり」は稲ではめずらしいF1品種。毎回、異種交配させないといけないからタネを作る負荷も通常の固定種よりも高い。気候変動に弱いことが露呈したと言えるかもしれない。
 
 2017年に種子法廃止を決めた理由は種子法があると民間企業が活躍できないからというものだった。その種子法が2018年に廃止され、すでに5年が経とうとしているのに、民間企業が活躍しているという話は聞こえてこない。 “民間企業だけに種子は任せられない” の続きを読む

根本的な政策整備が不可欠(種子法・種苗法)

 どうにも現実の表面的な動きにとらわれてもっと大きな波に呑まれてしまうことが多い。僕が主なフィールドとしてきたのは日本の国外の動き。2010年頃から世界で「モンサント法案」と言われる動きがラテンアメリカ、アフリカ、アジアなど世界各地で本格化していて、その動向を追っていたのだけど、2017年日本でも種子法廃止が閣議決定されてしまった。国内の動きは誰かがやってくれるだろうと思っていたけど、結局、追わざるをえなくなった。しかし、問題を詰めていくと、この動きをつかむためには1990年代あたりからの動きを見ないとその本質が見えないことがわかってきた。
各国新品種届け出推移
 2001年の統計では日本の新品種出願数は世界第2位。ところがそれは年々落ちていき、2009年には中国に、2015年には韓国に抜かれている。中国は別格としても他国は毎年、新品種開発する数は順調に増えているのに、日本だけ逆に急速に落ちている。この20年間で半分くらいに落ちてしまった。 “根本的な政策整備が不可欠(種子法・種苗法)” の続きを読む

EUで始まった有機在来種販売合法化

 政府は今の方向が唯一の方向であると言い切るが、本当にそうか? 種子の知的財産権を守るUPOV条約の遵守こそが日本の農業を発展させる唯一の道だとして種苗法も改正してしまったが、UPOV条約を作り出した本家のEUでは、そのUPOVの原則を変える重要な種子政策を2022年1月から実施している。UPOV条約体制下では無視される有機農家の在来種を販売可能とする画期的な転換が行われた。 “EUで始まった有機在来種販売合法化” の続きを読む

農薬規制の抜け穴:種子コーティング

 農薬使用は米国でも規制される流れになっているが、まったく規制されていない抜け穴がある。それがタネへの農薬コーティング。米国で生産されるトウモロコシのほとんど、大豆の大部分の種子がネオニコチノイド系農薬などの農薬でコーティングされている。タネにコーティングされたネオニコチノイド系農薬は作物が生長するにつれて植物の細胞に埋め込まれる。それを食べた虫は死ぬ。その毒性は出荷される農作物でも維持され、健康にも影響を与えることが懸念される。
 虫だけではない。コーティングされた物質の大部分は土壌に溶け出し、土壌微生物や鳥などの野生動物にも影響を与えていることが知られるようになってきている。ネオニコチノイド系農薬の規制は強まる傾向だが、この種子コーティングは現在、米国では環境保護局(EPA)では把握すらしておらず、規制法も存在していない。
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みどりの食料システム戦略成立:議論は尽くせたか?

 「みどりの食料システム戦略」を支える「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案」、21日に参議院農水委員会で可決、そして22日本会議で可決。附帯決議も含めてすべて全会一致。有機農業推進が政策となったことは重要だが、果たして実効ある政策となっているか、それに向けた審議はされたかというと大いに疑問を呈さざるをえない。  “みどりの食料システム戦略成立:議論は尽くせたか?” の続きを読む