アマゾン・セラード破壊に加担する菅政権

 怒りを通り越して、我を失いそうになる。茂木外務大臣、南米訪問。この時期に何のための訪問なのか? 新型コロナウイルスの蔓延で死者が20万人を越しているブラジルで何を話してきたのか?
 今、ブラジルの極右ボルソナロ政権によってアマゾン破壊、先住民族のジェノサイドが進んでいると国際社会が警鐘を鳴らし、それゆえEUと南米共通市場メルコスールとの自由貿易協定も止まっている。アマゾン破壊に抗議して、ノルウェーやドイツはブラジルへの政府援助を止めた(1)。 “アマゾン・セラード破壊に加担する菅政権” の続きを読む

ブラジルの巨大ダム政策がもたらした悲劇、ベロモンチダム

 ブラジルの巨大ダム政策がもたらした悲劇。軍事独裁時代に計画されたベロモンチダム、スティングなどが参加した国際的な反対運動もあって、長く建設を阻止できてきたものが労働者党政権下で建設強行。建設に反対する人びとが指摘していた問題が実際に完成後に次々に現実のものとなる。
 ベロモンチダムの完成はダム反対運動の敗北で終わりだろうか? このドキュメンタリーはそれで終わりにならないことを示している。 “ブラジルの巨大ダム政策がもたらした悲劇、ベロモンチダム” の続きを読む

ブラジル政府が巨大ダム建設政策を転換?

 ブラジル政府が巨大ダム建設政策を転換?

 もし、本当だとすると、これは時代を画する政策転換となる。ブラジルでは水力が7割以上のエネルギー源となっており、経済発展政策の中で、巨大ダムをアマゾンを中心とした地域に作り続けるのがこれまでの柱となってきた。いわば、核をエネルギーの核に据えてきたフランスがその政策を変えるに等しい大きな政策転換となる。 “ブラジル政府が巨大ダム建設政策を転換?” の続きを読む

ベロモンチダムー戦争の布告

ベロモンチダムはアマゾンに現在建設中の巨大ダムで、完成すると世界第3位の規模になる。この計画はブラジルが軍事独裁政権であった時に計画されたが、先住民族らによる反対により計画は中断していた。Stingがダム建設反対の国際キャンペーンに加わるなど、その反対運動は国際化していたが、労働者党政権は建設を強行。
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ベロモンチダムのビデオ紹介 & Xingu+23

ブラジルのベロモンチダムにより大きな影響を受ける先住民族が他の遠くの地域の先住民族と共にダム建設と闘う決意を語るビデオ。マトグロッソ州ピアルスで300人、18の­異なる民族を代表する先住民族が集まり、ベロモンチダムが先住民族に対して与える影響を語り合い、決意を固める。

オリジナルは”Belo Monte – Piaruçu”
すでにダムの建設は2011年に始まり、川は濁り、人びとは大きな影響を受けている。現地で何が起きているか、上のビデオをぜひ見てほしい。映像も音楽も美しいビデオなので、そのまま再生させるのではなく、歯車のアイコンをクリックして、解像度を720p HDを選択し、さらに全画面で見てほしい。

ベロモンチダムに影響を受けるシングー川周辺先住民族や住民はRio+20が開かれている同じ時期、ダム建設地に近いアルタミラに集まり、Xingu+23という集まりを持つ。+23とは1989年にベロモンチダムの建設を止めた年から23年ということを意味する。

すでにサイトも立ち上がっていて、寄付も受け付けている。Xingu+23
資金的にも厳しい中行われるこの会議、なんとか支援したいところだが、日本からは直接寄付が難しいようだ。

支援するいい方法がないものか模索中。

ジウマ・ルセフ大統領へのメッセージ:ベロモンチダム建設を中止してください

ジウマ・ルセフ大統領、

ベロモンチダムの建設を中止してください。

ベロモンチダムはブラジルの地域社会のニーズに応えるものではありません。

現に現地に住む先住民族や伝統的住民は長年強く反対の声を上げてきました。その声は無視されています。

ベロモンチダムはアマゾンの鉱物資源開発に使うものと理解せざるをえません。そしてその資源の多くは海外に輸出されます。その開発の過程で、アマゾンの生態系は大きく破壊されてしまうことでしょう。

一時的に鉱山開発でブラジルが外貨を獲得し、利益を得たとしても、アマゾンの生態系が破壊されてしまえば、長期的にみればブラジル社会にとっては大きな痛手になります。鉱山資源は永続しません。しかし、アマゾンの生態系は今後長くブラジル社会を支える資源となります。

自然を破壊し続ける開発がこのまま続けばブラジルはもちろん、世界は崩壊するでしょう。その端的な例を私たちは東京電力福島原発事故で経験しました。この事故によって日本、そして世界は放射能汚染に長く苦しむことになります。このような開発はもはや続けることができない、ということを東電原発事故は示しています。

日本列島の住民はアマゾン破壊で作られるアルミや鉄を使って便利に生活してきました。そしてそのことを十分知らずに来ました。しかし、その生活はさまざまな浪費を生み出し、世界を汚染しており、もはや維持できるものではないと思います。

ベロモンチダムがひとたび建設されれば、先住民族を初めとする人びとの失われる生活、そして森、川は戻ってきません。鉱山資源はそう長くは続きません。どちらが重要か、ブラジル社会が長く幸せになれる道はどちらか、熟慮いただき、ベロモンチダムの建設を中止するようお願いいたします。

2011年8月22日

印鑰 智哉

ベロモンチダムに反対する国際デー

8月20日にブラジル国内、22日に海外でベロモンチダムに反対する国際行動が組まれる。

日本でも何らかの行動をしたかったけれども、そこまでできなかった。何もしないというわけにはいかないので、ブラジル大使館にメッセージを送ろうと思う。

その前にベロモンチダムとは何か、何が問題なのかを簡単に振り返る。資料を参照しながら書く余裕がないので、正確さに問題があるかもしれない。

ベロモンチダム建設が計画されたのは今から30年ほど前の軍事政権時代。ベロモンチダムの建設地周辺にはブラジル社会に接触をまだ持っていない先住民族をはじめ、数多くの先住民族がいる。


大きな地図で見る

その中でも先住民族カヤポは伝統的な生活を保ちながらもブラジル社会に対して積極的にデモ反対の意思表示をしてきた。カヤポのリーダー、Raoni(ハオニあるいはラオニ)がStingといっしょにベロモンチダム反対の世界ツアーを行っていて、日本にも来ている百一姓Blogカヤポ族 呪術師長老ラオーニ、日本を行く2007

なぜ、このダム計画が問題なのか?

同じく軍事独裁政権時代に計画され、建設されたトゥクルイダムはその発電量の多くが日本の出資したアルミ精錬工場のために使われている。一方、地域に住む先住民族や伝統的住民にはこうした電気は供給されていない。このアマゾン地域はカラジャス鉱山など、鉄鉱石、アルミの原料、金など豊かな鉱山資源がある。要するにそうした鉱山開発のためのエネルギーであり、その鉱山資源は主として海外に輸出される。地域住民からすれば地域の必要などはまったく無縁。このベロモンチダムも同様だ。人口の多い地域から隔絶されたアマゾン奥地に作られる水力発電は海外の必要に応じるため、地域を破壊するために作られるエネルギーだということになる。ブラジル社会のニーズに即する限り、このダム建設は不要であるという報告もある。

こうした破壊的計画は実際に直接間接に生活に影響を与える先住民族にはまったく事前の説明がされていない。ブラジルも批准しているILO条約169号違反である。

水力発電は自然エネルギーで地球温暖化対策としても優れているとブラジル政府は強調しているが、熱帯地域におけるダムはメタンガスを大量に発生させるため、必ずしもクリーンとはいえない。しかも、水体系を大幅に変えてしまうことにより、魚を中心に川の生態系は大きく破壊される。トゥクルイダムでは大量の蚊が発生し、多大な被害が出ている。川とともに生きる生活を続けてきた先住民族や伝統的住民にとってはまさに生存の危機にさらされることになる。

このダム建設が始まると、ダム周辺で巨大な規模で森林破壊が進むだろう。そして、さらなる鉱山開発なども始まり、多くの人びとが流入していくことになる。その結果、伝統的な暮らしをしてきた人びとの生活は破壊され、多くの森林が失われ、とりかえしのつかない生態系が失われてしまう。

このダムには多くの批判があり、30年間着工されずにきた。地域の先住民族もダム建設に対しては闘って死ぬまで反対する意思表示をしている。国際社会もまたStingに加え、映画『アバター』の監督ジェームズ・キャメロンが現地をたびたび訪れ、ベロモンチダム反対の声を上げている。

アマゾン破壊で作られたアルミ缶を日本でも使っている。そうした破壊を続けるのかどうか、これは現地の先住民族の生存権のみならず、日本社会のあり方の問題でもある。

ブラジル大使館にベロモンチダム建設に反対するメッセージを送ろう!
ブラジル大使館

映画アバター

AVATAR映画アバターの一シーン

映画アバターを見た。

映像を見ていたら、映画のストーリーとは無関係に、脳裏に突然、東アマゾンの壮大な森が浮かんできた。

地元の人びとといっしょにトラックの荷台に乗って東アマゾンの奥地に進んでいた時だった。突然現れた渓谷。それはグランドキャニオンを荘厳な森で包んだような絶景だった。思わず、「止まってくれ。写真を撮らせてくれ」と心の中で叫んだ。こんな景色、こんな美しい森、見たことがない。でも外国人は僕一人、他は地元の人。地元の人にとっては見慣れた光景。トラックは僕の意志とは関係なく、悪路を高速で進み、激しい揺れの中でカメラの電源をオンにすることすらできないまま渓谷は姿を消した。その渓谷は僕の心の中に残るのみ。

その渓谷が映画の中で何度もよみがえってきた。映画の中に現れる幻想的な森林に劣らない圧倒的な存在感だった。

なぜ僕はここの地に足を運んだかのか。東アマゾンの巨大な開発プロジェクトが進み、東アマゾンの自然と先住民族や小農民の生活を破壊し始めており、その開発に関して、異議を唱える国際会議が開かれた。1994年頃だろうか。その会議の後、会議から戻る人びとのトラックに乗せてもらい、奥地まで足を踏み入れたのだった。

東アマゾンには鉱物資源が豊かにある。カラジャス鉄鉱山の鉄鉱石、アルミ、そうした資源を求めて世界の投資が集まり、巨大な開発が70年代から進んだ。その結果、広大な地域で豊かな森林が破壊された。その荒廃が進んだ地域にさらにユーカリや大豆を植えるという巨大経済開発が計画され、その計画が壊滅的に環境を破壊し、また周辺地域の先住民族や小農民の人権が損なわれるという危惧が生まれていた。この計画には日本政府の経済開発援助が使われている。

日本はかなり前からこの地域の開発に関わっている。しかし、日本で十分に東アマゾンでの環境破壊、先住民族や小農民の生活環境破壊については十分知られていない。ブラジルから報告を送った。

そのメールがNHK向けにドキュメンタリーを作っているプロデューサーのもとに届き、NHKで番組を作りたいというメールをもらった。そこで、この会議やこの地域の訪問を通じて知り合った人たちの連絡先をすべてそのプロデューサーに渡した。

取材チームがブラジルに渡り、どれだけ時間がかかったろうか、プロデューサーから重いトーンのメールが届いた。NHKの上からの圧力で番組の筋書きがまるっきり書き換えられてしまったというのだ。

放映された番組には環境破壊や先住民族や小農民の人権については何の言及もなかった。そればかりか、僕が紹介した人びとの映像は、「日本の援助を通じてブラジルの小農民も生産性を考えるようになりました」と開発を賛美する文脈で使われていた。まったくありえない筋書きだった。どうして、巨大な開発によって、追い出される小農民が生産性について学んだ、と言えるのか?

アバターの主人公がスパイとしてナヴィの中に潜入して、ナヴィの世界の情報を盗み出そうとしたように、僕も外部のスパイとして、アマゾンに入り、その地の人びとを裏切った。アバターにはその後の物語があるのだけど。

かの地に、ベロモンチダムという計画通り建設されると世界第3位となる巨大ダムと水力発電所が今、作られようとしている。作られる電力は地域に住む人のためではなく、アマゾンのアルミニウムを精錬されるためにその多くが使われる。この地には多くの先住民族が伝統的な生活を続けている。このダムが作られてしまえば、先住民族の生活を支える川や森林は大きな影響を受けざるをえなくなる。

この開発に対して何をすべきか?