遺伝子組み換え作物による遺伝子汚染

 遺伝子組み換え作物の商業栽培が始まって25年。その負の影響はもはやさまざまな分野で明らかになっているが、その最大の問題の1つが、遺伝子汚染だと言えるだろう。この問題は「ゲノム編集」ではさらに危険になると言わざるを得ない。この問題を解決しないで、「ゲノム編集」作物の栽培は許されてはならない。
 モンサントなどによって世に出された最初の世代の遺伝子組み換えトウモロコシ、40を超える品種がスクラップになろうとしている。なぜかというと、もはや無用の長物でしかないからだ。虫が食べたら虫が死ぬようなタンパク(Bt毒素)を作り出すように遺伝子組み換えされたトウモロコシが作られているが、このBt毒素に対して虫たちは耐性をつけてしまったのでその品種はもはやまったく意味がない。遺伝資源としても保持する意味がない。
 でも、スクラップにしようとしても、商品棚から外すだけで、話は済まない。というのもその遺伝子は花粉の飛散によって在来種にその遺伝子を移してしまっているからだ。 “遺伝子組み換え作物による遺伝子汚染” の続きを読む

機械翻訳と人による翻訳の違い

 Google翻訳やDeepLなど機械翻訳の精度が急に上がってきた。これまで実用となったのは言語のルーツが近い言語の間の翻訳に限られた。たとえばスペイン語から英語。日本語と韓国語との相性もいい。一方、ヨーロッパ語から日本語へは使えたものじゃなかった。笑いのネタにしかならず、翻訳作業の下準備にも使えなかった。でも、それが急に読める日本語になってきて、ほぼ使えるレベルになった。最近も長いポルトガル語の論文を日本語に翻訳したのだけど、それも機械翻訳で下訳させたものに手を加えた。時々、GoogleもDeepLも意味を取り損ねるケースがあるものの、作業効率は格段に上がった。
 このまま精度が上がれば、もう翻訳という行為は機械翻訳で済んでしまうのだろうか? いや、これは危ない。もし、それに任せれば、とんでもない事態に陥ることもありうると思う。極論すれば支配的価値観によるマイノリティ文化の抹殺、異なる価値観の抹殺、実現できるはずの未来が失われることも起きてしまいかねないのではないか。 “機械翻訳と人による翻訳の違い” の続きを読む

EUの「ゲノム編集」食品規制はどうなるか?

 これまで「ゲノム編集」作物でさんざん騒ぎながら、市場に出たものは米国Calyxt社の大豆だけで、今後出ることが決まっているのも日本のサナテックシード社のトマトしかない(1)。でも、それは従来の遺伝子組み換えと同様に規制する方針を出したEUの存在があったからだと言えるだろう。そのEUで欧州委員会が4月29日、規制緩和に向けた報告書を出した。これは一気に「ゲノム編集」が世界に出てくる前提になりうるもので懸念が世界で表明されている。日本にも影響は必至だろう。 “EUの「ゲノム編集」食品規制はどうなるか?” の続きを読む

ひどい日本の「ゲノム編集」食品報道

 この報道には絶句した。日本の知的水準が現れているのか? 日本の民主主義の民度の反映なのか、とにかくひどい。
 TBSが扱う「SDGs」。なんと「ゲノム編集」でSDGs(持続可能な開発目標)。なぜ「ゲノム編集」が社会の持続性を高められるのか? 食料不足を解消できるのか? ここには論理の飛躍がありすぎる。 “ひどい日本の「ゲノム編集」食品報道” の続きを読む

多国籍企業による食のシステムの乗っ取り

 タネから流通まで、そして食のあり方まで巨大企業が乗っ取る、国連を乗っ取り、各国政府の政策まで決めていく。今、そんな動きがはっきり見えてきた。遺伝子組み換え企業だけでなく、今やAI、ビッグデータ、インターネット企業、金融セクターが結びつき、この乗っ取りが動き出している。
 国連は世界食料危機を契機に、食の政策については農民団体、市民組織に開かれた制度改革を打ち出し、小規模家族農業と生態系を守るアグロエコロジーの2つを柱する政策に大きく転換していた。世界で有機農業、化学肥料や農薬への規制が大きく進んだ。この流れを大きく変えるために、遺伝子組み換え企業=化学企業が中心となり、大きな企てをしている。 “多国籍企業による食のシステムの乗っ取り” の続きを読む

米国で気候危機を回避する議員立法「農業リジリエンス法案」提出

 アースデーに米国では気候危機を回避する上で重要な変化を可能にする農業リジリエンス法案が再提出された(1)。この法案は気候危機に曝される農家を守り、土壌の力を回復させ、農場からの気候変動効果ガスの排出を減らし、2040年にネット排出量ゼロをめざすものだが、単に数値目標だけをめざすよくある法案ではなくて、提案者のチェリー・ピングリー(Chellie Pingree)下院議員(写真左)自身が1970年代からの40年を超える有機農家であることもあって、農家の視点がある法案となっており、有機農業団体はもとより、科学者たちのNGO、米国の行動する科学者連合(Union of Concerned Scientists、UCS)など、多くの団体が賛同を表明している(2)。 “米国で気候危機を回避する議員立法「農業リジリエンス法案」提出” の続きを読む