種苗法:問われる公的種苗事業の存在価値

 この間、種苗法改正をめぐって、さまざまな人たちから質問が農水省に出されているのだけど、この間の農水省の説明や、質問に対する回答に現実との大きなギャップを感じています。
 もっとも、他の情報公開でよくあるように黒塗りの答えが出てくるようなことは一切なく、担当されている農水省の方はとても真摯に答えてくれていて、それはとってもありがたいと思います。そこには今後、同じ方向を歩む可能性も感じられるのだけど、それでも種苗法改正に絡むところはどうにも納得がいかないことばかりなのです。
 そこで納得がいかないことについてまとめてみることにしました。まず、その1。 “種苗法:問われる公的種苗事業の存在価値” の続きを読む

種苗法を取り巻く見えないプレーヤー

 検察庁法改正案、強行採決されず、まずはよかった。反対の声を上げたすべての方に感謝。でも来週が正念場。この法案が成立すれば日本のすべての領域に悪影響を及ぼすだろう。でも、ここで踏ん張ることができれば大きな意味があると思う。

 昨日一昨日と2日、国会に行って、自民党の農政関係の議員に会い、種苗法改正についての懸念をお伝えしてきた。ほぼこちらの主張に同意する議員も、部分的に趣旨は理解するという議員もいる。まともな国会であれば即決はありえず、議論が相当噴出せざるをえない。与党の中にもこれだけ批判があるのだから。しかし、それにも関わらず、結論として来週、自民党は1回だけの委員会で採決、衆院通過まで狙っていることは間違いない。 “種苗法を取り巻く見えないプレーヤー” の続きを読む

海外の農民の権利と種苗法改定

 種苗法改定にどんな問題があるか、前の投稿で番外編としたことに少し説明加えます(動画あり)。

番外編:国内の農家に種苗法改定により自家増殖を抑制させるだけでなく、その影響は海外の農家にも及ぶ。
農水省は植物品種等海外流出防止総合対策事業に5億6700万円、農業知的財産保護・活用支援事業に3億9300万円の予算概算要求して自家増殖させない体制を構築しようとしている。

 これは種苗法改定案に書かれていることではないのですが、種苗法で掲げられた「日本の種苗を海外に流出させない」ための具体的方策として具体化されたものです。 “海外の農民の権利と種苗法改定” の続きを読む

種苗法改定法案、ココが問題

 なかなか拡がらなかった種苗法改定批判、このところになって、有名人の方たちに取り上げられるなど急に拡がり始めました。一方、複雑すぎて、どこが悪いのか、よくわからない、という話もよく聞きます。じゃあ、手っ取り早くどこが問題なのよ、ということを、まとめます。 “種苗法改定法案、ココが問題” の続きを読む

種苗法改定案に関する自民党Q&Aを検証する その2

 種苗法改定法案を通すために自民党がQ&Aを作成して、国会議員やマスメディアに配布している。しかし、その受け答えには大きな問題があり、種苗法問題の部分については別記事でまとめた。
 このQ&Aには種苗法以外にも2018年4月に廃止された主要農作物種子法(種子法)についても触れられているので、それについても以下にコメントする。 “種苗法改定案に関する自民党Q&Aを検証する その2” の続きを読む

種苗法改定案に関する自民党Q&Aを検証する

 この間、今回の種苗法改定案にある問題について詳細に指摘してきた(1)。しかし、国会からの情報によると与党はこの法案を新型コロナウイルス感染を理由に審議を実質的にせずに、4月中に衆参1回切りの形式的な審議に留め、成立させようという意向であるという。 “種苗法改定案に関する自民党Q&Aを検証する” の続きを読む

自家採種一律禁止は日本だけ!

 種苗法改定、日本政府は農家の自家増殖一律禁止はグローバルスタンダードだと言いたいようだが、それは事実と異なる。

 確かに植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)では育成者権のある登録品種を農家は自家増殖することができないとされている。しかし、15条で例外が規定されており、締約国は合理的に育成者の権利を侵害しない範囲において農家の自家増殖認める品種を定めることができる。そして各国、それぞれその国で重要な作物の例外を定めている(表参照)。
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知財立国戦略と種苗法改定

 日本政府は今後の日本経済発展の源泉を知的所有権に求めて、農水省は2015年に知財戦略2020を作りました。「農業とは情報産業である」とまで言っています。その中で、種苗の知的所有権を強めるために登録品種も大幅に増やすとしてきましたが、その現実はどうなっているか。増えるどころか逆に日本だけ登録品種が激減してしまっています。
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