「科学」を偽るコマーシャル言語が溢れる「ゲノム編集」

 遺伝子組み換え作物が登場した時にはそれを礼賛する大量の情報が世界のマスコミに流された。

曰く、
「遺伝子組み換え食品は安全で従来の食品と実質的に同等だ」
「遺伝子組み換え技術は今後の増大する世界の人口を支えるのに不可欠だ」
「遺伝子組み換え技術は農薬の使用を大きく減らす」
 これすべてがウソであったことはすでに実証済み(1)。遺伝子組み換え食品は従来の食品とは同じではないことを米国政府食品医薬品局の科学者たちが警告していたことも法廷で明らかにされたし(2)、実際、遺伝子組み換え作物の生産性の向上はNon-GMO作物の生産性向上に劣ったし、農薬の使用は減るどころか増えた。
 
 そして今、「ゲノム編集」技術を使った食品に対して、従来の遺伝子組み換え食品登場時とまったく同様の礼賛情報で溢れている。
「ゲノム編集は自然の変異と区別できない」
「ゲノム編集はとても正確で安全な技術だ」
「ゲノム編集は気候変動の激化する中で必要な技術だ」
 
 しかし、分子遺伝学者のマイケル・アントニウ(Michael Antoniou)氏は「ゲノム編集」は最初から従来の遺伝子組み換え技術と同様に失敗することが決まっていると言って一蹴する(3)。そもそも、「ゲノム編集」を含む遺伝子組み換え技術は遺伝子の1つ1つが単独の機能を持っており、それを変えれば新しい性格の品種が作れると仮定するのだが、遺伝子はロボットの部品とは違う。ゲノムの中で遺伝子が相互に有機的なネットワークを築いているというのが最新の知見であって、遺伝子組み換え企業、バイオテクノロジー企業が前提としている「科学」は古くて、現在では通用しない仮説に過ぎない。


 
 1つの遺伝子を破壊することで、その影響はその他の遺伝子含めて多岐にわたらざるをえない。「ゲノム編集」された生物は延々と直らない後遺症に悩まされることはもう目に見えている。現に遺伝子組み換え作物も商業栽培から25年たって、スクラップにせざるをえないものが出てきている。単にスクラップにできればいいのだが、交雑によって従来の作物まで遺伝子汚染が進んでおり、その影響は長く続くだろう。回復できるかという保証はない。
 
 だから「ゲノム編集」の農業への応用が世界の農業や食を進歩させるという考え方がいかに馬鹿げているか、ということだ。古い仮定にしがみつきながら、それがあたかも最新の知見であるかのように御用学者が担ぎ上げる。しかし、従来の遺伝子組み換えが失敗したように、「ゲノム編集」による遺伝子操作による生物も従来の遺伝子組み換え生物と同様あるいはそれ以上に失敗することが初めからわかっているのだ。
 
 「ゲノム編集」作物で従来の遺伝子組み換え作物よりも深刻なのは日本政府の関わり方が「ゲノム編集」作物ではるかに大きいことだろう。遺伝子組み換え稲などを日本政府は手掛けようとしたが、それは失敗した。しかし、「ゲノム編集」ではトマトに続き、次は「ゲノム編集」ジャガイモを世に出そうとしている。われわれの税金を使って。
 失敗するとわかっているものに多額の予算をつぎ込む一方、今、日本全国で多くの人が求めている学校給食の有機化には予算を確保しようとしないし、「ゲノム編集」と違って長期的に着実に成果を出せる従来の育種の予算はカットしている。今の予算の使い道を変えれば、10年後、20年後の日本はどれだけ良くなるだろう。
 
 マスメディアもいい加減にもう少し学習してほしいものだ。遺伝子組み換え作物登場前後の情報がいかにおかしなものだったか検証して、同じ間違いを繰り返さないようにすべきだろう。情報はいくらでもある。このまま進めば失われるものは巨大なものになる。将来の日本を考えた時、この損失は計り知れない。遺伝子を破壊できる「ゲノム編集」は遺伝子研究のためには有用だが、破壊された「ゲノム編集」生物を環境中に出すべきではない。

 このまま進めば20年後、あるいはそれも持たずに10年後、失敗だったということになることは確実なのだ。いかに今、政府や一部の企業が熱狂しようと。それを見越して、その被害を最小限に留められるように今、何ができるのか、考え、実行していく。科学がいかに歪められたか、しかし、それを正す力も科学にはある。
 


(1) 遺伝子組み換え企業が宣伝する神話と科学的実証論文による現実とを対比させてコンパクトにまとめた本。「ゲノム編集」にもページが割かれている。
GMO Myths and Truths
https://amzn.to/2RH82CE
最新版は販売している書籍なのだが、第2版は少しデータが古くなり、「ゲノム編集」は含まれないがPDFで全文ダウンロード可能(330ページ)添付画像は第2版のもの。
http://earthopensource.org/earth-open-source-reports/gmo-myths-and-truths-2nd-edition/

(2) 『遺伝子組み換えのねじ曲げられた真実 私たちはどのように騙されてきたのか?』スティーブン・M・ドルーカー(日経BP)
米国での遺伝子組み換え政策の現実を法廷で明らかにした重要書籍の翻訳
https://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/16/P51450/

(3) 前述のGMO Myths and Truthsの執筆でも活躍したClaire Robinson氏とマイケル・アントニウ氏の短いメッセージ
Claire Robinson & Michael Antoniou -Gene Editing: Unexpected Outcomes and Risks

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