「ゲノム編集」トウモロコシ、新味のない新品種

 「ゲノム編集」の動きが慌ただしい。
 モンサント(現バイエル)と並ぶ米国の遺伝子組み換え企業ダウ・ケミカルとデュポンが合併してできたコルテバは「ゲノム編集」されたワキシーコーンを開発、リスク評価も規制もない生産を米国、カナダ、アルゼンチン、ブラジル、チリ各国政府が受け入れてしまった。
 今年、商業生産が始まるとすると同じく米国のカリクスト社の「ゲノム編集」大豆、日本のサナテックシード社の「ゲノム編集」トマトに続く3番目の「ゲノム編集」作物となってしまうかもしれない(この間にサイバス社の「ゲノム編集」ナタネがあったのだが、規制を受ける遺伝子組み換え作物を偽って、規制を受けない「ゲノム編集」として出そうとしていた疑惑が出ている)。

 このワキシーコーンというのはワックスを塗ったようにつやがあるのでワキシーと呼ばれるが、「もちトウモロコシ」とも呼ばれるもので、独特の食感のあるものとして伝統的に中国などで育てられてきた。このワキシーコーンはスイートコーンとは異なるもちもちした食感があり、それを生かした食に使われる他、コーンスターチなどでよく使われている。
 今回の「ゲノム編集」は何をするのか、というと、このワキシーコーンの種子を従来の育種で作るのはとても手間がかかり、また収量が上がりにくい。収量の高い品種とワキシーの形質を持つものをかけ合わせて作るのに何代も交配し続けなければならない。この手間を「ゲノム編集」で「解決」するというもの。お湯に溶けやすいアミロースを作る遺伝子をCRISPR/Cas9で破壊することで、お湯でも簡単に溶けないアミロペクチン100%のトウモロコシを作るというものだ。
 
 存在しない新しいものを作るのではなく、すでに存在しているものを無視して、「新品種」を作り出すということになる。しかし、「ゲノム編集」によって、意図しない遺伝子破壊、意図しない変異、エピジェネティックな機能の損傷などが起きている可能性は十分高い。それらはアレルギーや自己免疫疾患の原因になる可能性も当然考えられるが、安全を確かめることすらされていない。
 破壊された遺伝子はもとに戻すことはできない。遺伝子操作前の原種が失われれば取り返しがつかなくなる。そのリスクを冒してまで何のメリットがあるというのだろうか? 市場を独占する企業からすれば、その育種の手間が省ければ莫大な利益を得ることができる。遺伝子組み換え企業には利益になる、ということだろう。
 
 4大遺伝子組み換え企業の1つ、コルテバが「ゲノム編集」作物を初めて開始することになれば他の遺伝子組み換え企業も一気にピッチを上げてくるだろう。しかし、現在、EUやニュージーランドは従来の遺伝子組み換えと同様の規制方針なので、この「ゲノム編集」トウモロコシの売り先にはならないだろう。トウモロコシは例外除いて品種ごとに販売ルートがあるわけではなく、現在あるルートはGMOかNon-GMOになる。遺伝子組み換え企業の野望としては「ゲノム編集」トウモロコシは後者に分類させて売ることだろうが、それではEUに一切輸出できなくなる。
 だから、現在、「ゲノム編集」を遺伝子組み換えと見なして規制する方針のEUにその方針を撤回させようと猛烈なロビー活動を展開している。その前哨戦がEUから離脱した英国で行われ、英国政府は「ゲノム編集」解禁方針を決め、パブリックコメントが行われたが、多くの市民がその方針への反対を表明している。そして、今、EUの方針が攻撃されている。
 
 日本でもサナテックシード社が「ゲノム編集」トマトの種苗の配布を始める。すでにリスクは研究者からもいくつも指摘されているがマスコミが報じるのはそうした事実ではなく、消費者の「懸念」としてまとめられてしまう。問題の所在も伝えられていない中、危険が進む。
 初期の遺伝子組み換え種子のうち、害虫殺虫成分を作り出すBtコーンはスクラップにすることが提案されている。スーパー害虫が出現して、もはや意味を失ったからだ。遺伝子を組み換える前の種子の価値は減じないが、遺伝子を組み換えた後の種子にはもはや何の価値もなくなる。ラウンドアップ耐性遺伝子組み換え種子も同じ運命を辿るだろう。こうした愚かな操作をいつまで繰り返すつもりなのだろう。もちろん、それが利益を生む限り、続くのだろう。なぜ利益を生むかというと、それを優遇する政策がそれを可能にしているだけ。政策が変わればもはやこのような無益な行為は続けられなくなるだろう。
 
 こうした状況の中で、どう遺伝子操作されていない種苗を守るのか、大きな課題が浮上してきた。この件はまた後日。

ワキシーコーンの動向は以下の記事に詳しい。
GM waxy maize: The gene edited Trojan Horse is moving through the gates
https://grain.org/e/6640

「ゲノム編集」が持つ危険については以下のブックレット参照
https://www.greens-efa.eu/en/article/document/gene-editing-myths-and-reality/
https://cban.ca/gmos/issues/gene-editing/
https://www.acbio.org.za/sites/default/files/documents/202010/genome-editing-next-gm-techno-fix-doomed-fail-regulatory-issues-and-threats-africa_0.pdf
https://www.gmwatch.org/en/news/latest-news/19730-new-scholarly-briefing-raises-tough-questions-about-gene-editing-in-agriculture

写真はGrainから。コルテバに合併される前のデュポンとその子会社Pioneerの名前が見える。中国語で表記されているけれども、米国内だろう。中国でも独自に「ゲノム編集」のトウモロコシは開発中。米中競争がEUの規制に大きな圧力になる可能性がある。

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