中国・韓国に置いて行かれる日本:新品種育成で大幅減退

 SankeiBizが9月25日にこんな報道をしている。
「農水相が種苗法改正案の早期成立言及 中韓で36品種販売を受け」
 中韓で日本の品種が無断で使われたから、種苗法を改正しなければならない、と結論付ける記事になっている。しかし、本当にそうか?

 農水省は「海外で品種登録を進めることが流出を防ぐ唯一の対策」だとしている(1)のだが、この36品種で中国や韓国で登録されているものは1つもない。流出を防ぐために必要なことをしなかった結果がこれなのだが、それへの言及がない。
 種苗法を変えても、種苗法は国内法であり、出てしまったものを止める効力はまったくない。そして今回の種苗法改正の柱は農家が自由に自家増殖できなくさせるというもの。
 もし、国内の農家が持ち出した犯人というのであれば、その根拠を示す必要があるけれども、そのケースは1つしかない。訪ねてきたオーストラリアの農家に日本のサクランボ農家が登録品種のサクランボをおみやげとしてあげてしまった。このケースは現行種苗法でも違反行為であり、このケースは示談となって解決している。
 このケースをもって、すべての農家に自家増殖する権利を奪う、というのはあまりに強引な話だろう。この記事ではそれには一切触れない。肝心なことが隠されている。

 中国や韓国は新品種の育種が盛んになり、中国は近年、日本をはるかに追い越している。その一方で、日本国内の育種はこの間、停滞を続けている。その原因は農家がどんどん減ってしまう日本政府の政策に問題がある。種苗を買う農家が減れば、新品種を作ることも難しくなる。その国内の農家の負担を種苗法改正でさらに増やして、日本の農業が果たして栄えるだろうか、むしろ逆になるだけではないか?

 この改正で一番利益を得るのは外国の種苗企業だろう。今、日本の種苗の品種登録の中で外国法人が占める割合は4割近くに高まりつつある。現在は花が多いが、今後、食の分野にも入ってくることは確実だろう。

 解決策は農家の数を増やす政策に転じることだ。地域の多様な種苗を生かす政策に変われば多様な品種を確保できる。世界のどこでも同じような品種になってしまったら、日本の農業は生き残ることは不可能に近くなる。日本の地域にしかないような作物を大事にしていけば、淘汰されることはない。
 そのために必要なものは農家の権利を奪う種苗法改正ではありえない。

参考
 今回の種苗法改正に関する農水省の説明があまりにおかしいので、問題まとめました。
種苗法改正に関する農水省のQ&Aに一言

(1) https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_001040.html

添付のグラフはいずれも農水省作成あるいは農水省のデータから作成したもの。

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