世銀:化学肥料の神話は終わった

 かつて解決策だと信じられてきたことがそうではないことがわかっても、なかなかその神話を捨てられないことがある。農薬は世界の農業を解決すると思っていた人は多かっただろう。でも、今、世界は脱農薬に進みつつある。
 農薬について関心は高くても化学肥料については関心はまだ高くない。でも化学肥料が実は問題が生まれる起点となる。そして化学肥料が環境や健康を破壊していることを知っている人はまだ少ないのかもしれない。

 あの世界銀行(世銀)は化学肥料の利用をこれまで世界に大々的に推進してきた。その世銀が今やその危険を公言する事態になっている(1)。

  • 化学肥料で一番含まれる窒素が飲料水に硝酸塩として入り込めば、それは赤ちゃんの命を奪うかもしれない。
  • 硝酸塩を多く含む水を飲む人の寿命は短くなる可能性
  • 子ども時代に窒素(亜硝酸性窒素)の摂取は11%〜19%の成長阻害をもたらし、それは大人になっても1〜2%の収入減につながる。
  • 硝酸塩汚染やプラスティックによる汚染などさまざまな有害物質の汚染による水の質の悪化により、経済は3分の1失われる(2)

 もちろん、水道水の質のチェックも、浄水器の活用も大事かもしれない。でも人間以外の生き物は浄水を飲めるわけではない。人間の命も周囲の生命に支えられているのだから、自然界の水が汚染されれば、結局、人間の命も危うくなる。水だけでなく、気化した窒素、窒素酸化物は気候変動を激化させ、アンモニア化して大気に流れれば呼吸器疾患の原因となる。

 化学肥料を減らすことはそうたやすいことではない。長年、使ってきたところで減らせばたちまち収穫に影響が現れてしまう。でも近年、化学肥料の利用を大幅に減らすことを可能にする方法が開拓されてきた。カバークロップの活用、木炭や根圏微生物資材の活用、有機畜産との融合などなど。
 実は日本の農研機構でも研究はされているのだけど、どうやら予算が苦しいらしい。化学企業の営業妨害だということにされてしまうのだろうか。こうした重要な研究やその普及活動ほどがんばってほしいのだが、市民からの支援も必要だろう。
 米国ではカバークロップの活用などで化学肥料の使用を大幅に減らして、収益率を高める農家が注目されている。肥料代が減って、水を改善させ、土も守ることができ、しかも収益率上がるのだから、こんないいことはない(3)。

(1) 世銀の報告
Quality Unknown: The Invisible Water Crisis

添付のインフォグラフィックはWorld Bank Tanzania

(2) Worsening Water Quality Reducing Economic Growth by a Third in Some Countries: World Bank

(3) 海外での動き

農薬は騒がれるけれども実は真の主役は化学肥料。すべては化学肥料から始まる。そして化学肥料は想像以上に健康と環境に害を与える。だけど、悪影響を与えるからといって入れるのをやめてしまえば途端に生育せずに被害が出てしまい、農家を追い詰めてしまいか…

印鑰 智哉さんの投稿 2019年12月21日土曜日

化学肥料を与えることが土壌の微生物の活動を困難にさせ、植物を病気になりやすくし、農薬使用が必須となる。しかし、化学肥料がもたらす問題は農薬使用を招くだけではない。 化学肥料で生み出されている問題を見てみよう。使用される化学肥料でもっとも量…

印鑰 智哉さんの投稿 2019年4月27日土曜日

“世銀:化学肥料の神話は終わった” への1件の返信

  1. 硝酸態窒素の問題は化学肥料のみならず家畜糞による有機肥料の多施でも起きる。
    GAP規制はこの窒素過剰抑制のために土壌検査を標準としているが、日本には有機JASを含め如何なる営農地の土壌検査も存在しない。
    カバークロップというのは、従来、緑肥・コンパニオンプランツと称されていたものとも機能が重なるが、窒素抑制と土壌微生物活性は、土壌中の窒素:炭素比を1:60の熱帯雨林の自然土壌を理想とする高炭素農法の方向性とも重なる。

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