育種農家と種苗法改定について

 ブドウの育種を手掛ける農家で林ぶどう研究所の林慎悟さんにお声をかけていただき、「種苗法改正」について議論させていただきました。林さんは登録品種マスカットジパングという新品種を育成された方です。しかし、農家による新品種の育成は現在大きな困難に見舞われており、種苗法改正はそれを変えるとして、法改正に賛成されています。
 法改正に賛成される林さんと反対する僕との間で議論は成り立ったか、ご覧いただければ幸いです。

『種苗法改正について考えよう!』第4回①

『種苗法改正について考えよう!』第4回②

 林さんのブドウの育種にかける思いと実践には大いに感動しました。そして、農家として育種をしていくことの大変さについても、よくわかりました。林さんは貴重な存在だと感じました。林さんのような育種をされる農家がやりがいだけでなく、収入もしっかり得て、新たな人材が育つ未来を展望できるようになっていくことがとても大事だと思います。そのためにどうしていくかが問題になります。

 今、日本での登録品種は頭打ち、むしろ減少傾向にあります。日本での育種が難しい時代に入ってしまっているからです。
 なぜでしょうか? 農水省は農家が自家増殖してしまうから育成者側が新品種を作る意欲を失うからだと言うのですが、これは説得力がありません。というのも、これまでずっとそうだったのですから。それでも新品種は増えていました。なぜ近年は減ってしまったのか、農水省の説明は説明になっていません。

 その原因は何でしょうか? 近年は種苗を買う側の農家の数が減る一方。特に自由貿易協定などで関税は下がる一方。地域の市場は地域の産物ではなく、外国産の農産物ばかりであふれる状況になりました。そして農業に関わろうとする人が減り、中でも育種に関わる資質を持った人材を得ることが難しくなっています。こうした総合的な農業・農村政策に決定的な問題があると考えます。
 その時に、種苗を使う側の農家をさらに厳しく規制することで新品種が増やせると期待できるでしょうか? 残念ながらその政策で国内の育成品種が増えるとは思えません。


 
 今、日本の登録品種で増えているのは外国企業のものです。2017年に新規登録された品種では36%に達しています。今回の種苗法改定は国内外問いませんので、改定されれば外国企業の育成品種がさらに増えていくでしょう。

 むしろ、やるべきことは地域の育種家(新品種開発する農家)と種苗を使う側の農家を両方とも底上げすること、つまり、海外のグローバルな品種に対して、地域に合ったローカルな品種を作って、その成果物が売れるように、地域の農業と地域の食を底上げする政策が必要だと思います。

 新型コロナウイルスの蔓延で長距離輸送に頼るグローバルな食のシステムの危うさが明らかになっています。今こそローカルな農業、ローカルな食のシステムを強化すべき時が来ていると思います。野菜のタネは日本国内で1割しか採られていません。日本国内で育種も、種採りもできる状況を作り出すことこそがもっとも優先すべき課題ではないでしょうか?

 具体的には地域での育種、種採りへの支援、その種苗を使った農産物を地域の学校給食などで生かしていくなど、ローカルフードを支援する政策を地方自治体や国に要求していく必要があると思います。
 外国企業含めた企業支援につながる種苗法改正ではなく、地域の育種家、農家や消費者のためになるローカルフードを応援する政策こそ求めていくべきだと思います。

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