インドの2019種子法改悪との闘いから学ぶ

 日本で種苗法改悪に向けた動きがはっきりしてきたが、インドの場合は東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を離脱することで、その脅威から抜けられるのではないかと思っていたのだけど、残念ながらその動きは止まっていないようだ。新たな種子法改悪法案が出てきている。日本政府はなんとかインドをRCEPにつなぎとめたいようで、働きかけに必死だ(1)。

 インドの種子をめぐるこの20年の動きは日本の今後の展開のプレビューではないかと思わせるほど、日本での現在の動きを思わせるようなことが何年も前から動いている。

 インドには「植物の品種保護と農民の権利法」(Plant Variety Protection and Farmers’ Rights Act)という法律が2001年にできている。名前の通り、植物新品種の育成者の権利だけでなく、使う側の農民の権利も規定した法律であり、さすが「種子の自由運動」の創始者ともいうべきバンダナ・シバがその制定に関わっただけあって、とても参考になる。もっと注目されるべきだろう。

 インド政府は生命に対する特許を認めない。薬草から抽出した薬も、コットンを遺伝子操作して遺伝子組み換えコットンにしても、あくまで普通の商品として売るだけの権利承認に留まり、特許権者というオールマイティを企業に与えることはしていない。モンサントはインドの特許法を改悪させようと試みてきているが、インドはそれをはねつけてきた(残念ながら日本は遺伝子組み換えのみならず、通常育種についてすらも特許を認めてしまっている。そして来年には特許法と整合させる改訂を種苗法にも施そうとしている)。

 でもこの20年の間にインドの公的な種子事業はすっかり力を奪われてしまった。公的種子事業体は予算がなくなり、公的研究機関は多国籍企業の研究所になりかわってしまった。まさに種子法廃止・種苗法改訂で日本で進もうとしているプロセスと言えるのではないだろうか? 地方自治体の関係者の方たちにとっても重大なことだ。

 公的な種苗研究所が力を徐々に削がれ、そして多国籍企業に吸い取られてしまう。コットンの種子はほとんどモンサント関連の種子提供会社によって独占されてしまったが、その後、遺伝子組み換えナスやマスタードに対しては強い反対運動でそれをはねのけ、まだ始まっていない。しかし、それが種子法改悪という形で現在、インドに迫っている。

 今年、2019年に提案された種子法案は古い1966年の種子法を撤廃し、2001年の「植物の品種保護と農民の権利法」の農民の権利を否定し、多国籍企業にフリーハンドを与えようというものだという。インドはモンサントの遺伝子組み換えコットン(Btコットン)で多くの農民が債務のために自殺せざるをえなくなる悲劇を経験した。この新法案はさらに遺伝子組み換えナス・マスタードなどを合法化する道を招くとバンダナ・シバは批判する。

 このプロセスはそのまま日本でも起きる可能性がありうるだろう。地域の農業試験場が予算を失い、農家は毎回種苗を買わざるをえなくなり、自家増殖して自営していた農家は排除され、企業的な農園に変わっていくかもしれない。その農園では地域には向かないグローバルな品種を無理矢理育てるために化学肥料や農薬を多用していくだろう。そうした企業的農園は儲からないとわかれば途端に生産を止める。

 日本の地域の食を支える農を守る政策を早急に打ち立てなければ、自然災害以外にも企業の都合で生産が止まることによる食糧難にも苦しめられる時が来るだろう。それもそんな遠い未来ではない。さらに日本ではゲノム編集をテコに遺伝子操作大国に変えられていく可能性があるだろう。

 インドで2019年種子法案が廃案になることを望む。そして日本政府はインド政府をRCEPに引き留めるべきではない。そして、われわれは早急に種苗法改訂案が持つ問題を共有して、対策を練る必要がある。公的種苗事業を守り、そして在来種などの公共財産としての種苗を守る仕組みを作ることだろう。インドではすでに全国各地に無数のシードバンクが作られ、農民に在来種が提供されている。そうした取り組みから学ぶものも大きいだろう。

(1) 日本経済新聞:RCEP、改めて協力呼びかけへ 日印外相が会談

(2) THE SEED BILL 2019 IS A THREAT TO INDIA’S SEED SOVEREIGNTY AND FARMERS RIGHTS

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