知らない間にゲノム編集の種子を買ってしまう危険

 10月1日、厚労省がゲノム編集食品の届け出の受付を始めたが、10月9日、農水省もゲノム編集技術による生物(つまり農作物、家畜、魚、昆虫、微生物含む)の届け出を受付開始(1)。

 届け出をするのはゲノム編集生物を開発したバイオテクノロジー企業(遺伝子組み換え企業)。通常の遺伝子組み換え生物の場合は遺伝子組み換え企業は申請をして、認可が下りるまで販売も開放空間での栽培・育成もできないが、ゲノム編集と認められれば、このプロセスが必要なくなる。ゲノム編集か遺伝子組み換えか、どちらにあたるかは事前相談をして、農水省が判断、遺伝子組み換えに当たらないと判断されれば、後は届け出だけで販売可能となる(もっとも届け出は義務ではなく、届け出しなくても罰則はない)。

 事前相談のための用紙も届け出の情報提供のための用紙もわずか3ページの簡易なもの。実際にゲノム編集する際にはさまざまな遺伝子を挿入するのだが、それが残れば遺伝子組み換えと判別される大きな別れ道になるはずなのに、「移入した核酸の残存の有無(選抜・育成の経過及び当該核酸の残存の有無を確認した方法に関する情報を含む。)」 という記入欄があるだけ(写真)。しかし、実際には挿入した遺伝子が残っていると報告されるケースも存在しており、残らないという保証は何もない。

 本当に残らないと言うのであればたとえば1000回とか1万回やって一度も残らなかったとか証明する膨大な実証実験のデータを示すべきだろうし、こんな小さな欄に、少し書いて済むような軽々しい事柄ではないだろうに、ここにメモを埋めればいいらしい。しかも、企業側の自己申告。これでは農水省はどうやって確認できるのか。

 さらに大きな問題はたとえば種子を買う際、ゲノム編集されたものかどうか知るすべがいまだに確認できないことだ。届け出された情報を公開すると農水省は言うが、買う時にその情報を確認する術がなければ知らずに買ってしまうことは防げない。知らないうちに遺伝子操作された種子を買って、植えてしまう、という事態も生まれかねない。もちろん、信頼ある種子しか買わない、とすれば個々には対応方法はあるだろう。しかし、今のままでは、知らぬ間にゲノム編集が拡がってしまって、いつの間にか日本はゲノム編集ばかりになってしまう、という事態は起きてもおかしくない。種子や苗だけでなく、同様のことが種牛や種豚、鶏の場合にも起こりうるだろう。ちなみに、ゲノム編集鶏が製薬用の原料としてコスモバイオがゲノム編集ニワトリを「作製」(生命にこの言葉を使うことに強烈な違和感を感じるが)し、鶏卵を作ることを発表している(2)。これは薬の原料用なので農業に拡がることはないのだろうが。
 今回の農水省の受付開始は日本の農業にとってとんでもない影響をもたらす可能性がある。果たしてその責任は誰が取るのだろうか?

 農水省に種子などへの表示義務を求めると同時に、公的種子事業においてゲノム編集種子を作らせないこと、さらには種苗会社や販売企業にもゲノム編集品種を売らないことを求めていく必要があると思う。

(1) 農林水産分野におけるゲノム編集技術の利用により得られた生物の生物多様性影響に関する情報提供の開始について

(2) コスモバイオ、日本全薬工業からゲノム編集ニワトリの作製を受託

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