日米貿易協定と日本の危機

 日本の食・農業が今まで以上に危機的な状況にされようとしている。日米貿易協定が情報も公開されずに締結されようとしているからだ。中国に売れなくなった米国の余剰トウモロコシの買い付け問題が大きな関心を呼んでいるが、この一連の問題は想像以上に深刻なものがある。
 その問題を考える前に、この問題をアマゾン破壊との関連から考えてみたい。

 アマゾン破壊を生み出したその背景に大豆があることは多くが指摘している。ではなぜ、ブラジルで大豆なのか? 単位面積当たり最大のタンパク質を生む戦略物質として大豆に注目が戦後集まる。日本はその圧倒的な供給を米国に依存してきた。田中角栄が首相となった時、米国政府との間に軋轢が生じる。米国政府は大豆禁輸を打ち出してきた。そこで田中角栄が指示したのが米国以外からの大豆調達。そこで目を付けたのが軍事独裁政権下のブラジル。ここからブラジルでの大規模大豆栽培計画が始まっていく。
 しかし、日本は戦後、米国の傘下の下、名目的な独立に留まり、農業も米国の食料戦略が基本となり、大豆、トウモロコシ、小麦という穀物を米国への依存が前提となった。田中角栄は日本の独立をめざしたのか? しかし、その後、日本は米国への隷属をより強める道を辿っていることは歴史を見れば明白。
 ブラジルでの大規模大豆開発事業は結局、何を導いたのだろうか? それは日本の独立性を高めただろうか? 否。JICAが税金をつぎ込んだ計画で利益を得たのはカーギルなど米系多国籍企業だった。ここで米国との示談が成立したのだろう。私たちの税金を使って、ブラジルの環境を壊して、米系多国籍企業に利益を吸い上げられる。それを日本政府は「奇跡の成功」の計画と振り返る。
 このプロジェクトが進む70年代、80年代、米国が中心となった世界の食料体制が変わり出す。

 それまでの体制と言えば、大恐慌の時に生まれたニューディールに基づく農業・食料体制が基本だった。農家が作る穀物を政府が買い上げを全面保障、生産の大規模化を奨励して、その結果、過剰に生産される穀物は米国の世界戦略の上で戦略物質として使われた。
 しかし、この国家による食料体制は徐々に機能しなくなる。米国政府がソ連に対して禁輸を決めた。しかし、多国籍企業はその規制の裏をかいくぐりソ連に穀物を売り、巨額の利益を上げた。もはや政府の力よりも多国籍企業の力の方が強くなり出したのがこの年代だった。
 このニューディール政策で生まれた大規模穀物生産はその後、遺伝子組み換え時代を迎え、さらに大規模化を遂げる。そして、今、ゲノム編集への転換が迫りつつある。米国政府は巨額の補助金を出して、その生産体制を今も支えている。補助金がなければあの米国の安い穀物生産は成り立たない。大規模農家も巨額な負債に苦しめられている。
 そして、この古い農業が米国の環境に大きな影響を与えている。そして米国人の健康にも影響を与えている。なにより、環境破壊によって、維持ができない。そして、政府からの補助金がなければ維持できない。米国で生まれたアグリビジネスはこうした脆弱性の元にある。続かないビジネスは変わらなければならない。持続できる農業として米国ではRegenerative Agriculture、再生農業が今、大きな注目を浴びている。
 気候変動も人びとの健康も農家も守ることができる新たな政策を民主党のアレクサンドリア・オカシオ=コルテスらが提唱している。グリーン・ニューディール政策だ。今、米国は歴史的転換点にある。大量の穀物を海外に輸出する農業よりも、地域で循環する農業の方が農家にとっての利益も高いことがわかってきた。もし、米国から大量の穀物輸出がなくなり、地域循環型の農業に変わっていったら何が起きるだろう? 日本も変わらざるをえない。これまでの自民党の農業政策では対応できなくなる。

 しかし、今、トランプ政権はこの古い体制の維持に懸命だ。そこには遺伝子組み換え企業も穀物メジャーも、政権を支持してきている多国籍企業の利権がかかっている。その体制延命のために私たち日本のお金をつぎ込むというのが今回の日米貿易協定の目的の1つだろう。
 アマゾン破壊も今回の余剰トウモロコシも、日米貿易協定も1つのこととして見えてくる。

 世界が買わなくなった余剰トウモロコシを日本が買い付ける。一度だけではないかもしれない。大豆も小麦もさらに売りつけられるのではないだろうか? これは日本の農業への大打撃となり、回復がより困難になる。そして、金がつきれば日本は捨てられるだろう。

 もちろん、そんなシナリオ、ゴメンである。これは日本の農家の問題だけではない。日本の今後がかかっている。落ち行く世界帝国への依存だけにしがみつく日本か、それとも…。
 米国でも変化は起きている。私たちが連帯できる人びとがいる。さまざまなレベルでつながっていくことで、変化を作り出す力になるだろう。旧来の体制を維持して助かるのはごく一部の多国籍企業であり、米国の農家ではない。

 米国政府との安倍首相の口約束をこのまま易々と受け入れることはありえない。米国の古い体制もそう長くは持たないだろう。大きな変化を起こせる可能性は高まっている。今後の大きな変化のために、1つでもきっかけを作り出すことが重要だろう。大きな力を国会へ!

現在の日米貿易交渉をめぐる情報としてAMネット代表理事の松平尚也さんの記事がとても参考になる。

検証・日米貿易交渉  野党合同ヒアリングから見えてきたその姿

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です