ヨーロッパ大豆宣言と日本

 2017年7月、EUの14カ国は「ヨーロッパ大豆宣言」に署名した。現在、EUは8割以上の大豆を輸入に頼っており、その輸入量は中国に次ぐ第2位(EU全体で)。そのほとんどが南米からやってくる遺伝子組み換え大豆である。それに対して、EUでの大豆生産を強化して域内産の大豆に代替していこうというものだ。EU産の大豆は非遺伝子組み換え大豆なので、遺伝子組み換え食品からのいっそうの離脱を可能にするかもしれない(もっとも、署名した国の政府の念頭にあるのはNon-GMO化以上に大豆の大規模栽培の展開にあるかもしれない)。

 南米では先住民族や小規模農民の土地が奪われ、大豆の大規模栽培が行われ、モンサントの農薬ラウンドアップ(グリホサート)だけでなく、枯れ葉剤(2,4-D)なども使われており、人びとの生活も健康も社会も破壊している。それは隠された戦争が行われているようなものだとして、それを止めようという市民活動は南米はもちろん、EUでも長く行われてきている。今回の宣言が南米での大豆生産拡大を止めることにつながるとしたら、その意味では歓迎できる宣言ではある。
 しかし、同時に大規模大豆栽培がEUで行われることにつながればEUの小規模農家が排除され、EU内での環境破壊、健康被害が進んでしまうことになる。ヨーロッパのLa Via Campesinaはこの宣言への反対を表明している。

 大豆は東アジア原産であり、ヨーロッパ人は大豆を食べない。大豆の用途は家畜の飼料、食用・産業用のオイル、バイオ燃料であるが、その高タンパクさゆえ戦略物資化し、南北アメリカ大陸が世界の生産の8割以上を握る。そもそも、それほど大豆生産が大きくなった理由はそれだけ飼料や油が現代の食のシステムで大きな割合を占めるにいたったからといえるが、それを維持するためにはどこで生産するにしても環境コスト、社会コストが大きくなりすぎる。食を変えることに取り組まずに解決できる問題ではないのだろう。

 一方、大豆は日本や東アジアの食文化にとってはなくてはならない核心的な存在だ。それにも関わらず、日本人は大豆に無関心であると思わざるをえない。第2次世界大戦前ですでに自給率は2割程度。ほとんどを中国東北部や朝鮮半島からの輸入(略奪?)に頼っていた。戦争でそれを失い、戦後は米国に依存し、さらにその先を南米に拡げ、現在はアフリカで作ろうとしている。国内の農業を切り捨てて、国外の小農家も追いだして、大豆が日本にやってきている。
 日本の食品加工企業は日本国内での生産を減らして、中国へ進出し、中国で大豆を世界から集めて加工し、中国から世界に売る戦略に転じているので日本国内への大豆輸入は近年減少傾向だが、日本の大豆への関与、そして大豆による環境・社会の破壊への関与は減っているわけではない。
 過度の肉食や加工食品を減らせば大豆の大規模生産の必要性は減らせる。そしてその中で食文化の中心として、大事な大豆生産を国内でやっていくことが可能になっていくのではないだろうか? 日本でこそ大豆宣言を作る意味があるのではないかと思わざるをえない。

European Soya Declaration (PDF)

13 EU member states sign the European Soya declaration

European Soy Declaration a historic diplomatic success

European Coordination Via Campesina: Open Letter: the European Soy Declaration must be rejected

Soy change: time to stop South America paying the price for Europe’s factory farms

【三石誠司 宮城大学教授】2017.08.11 (043)EU農業の持続可能性と「大豆宣言」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です