枯れ葉剤耐性遺伝子組み換えに対するパブリックコメント

また新たに枯れ葉剤耐性遺伝子組み換え作物が承認されようとしている。12月4日締め切りでパブリックコメントが募集されている。そのパブリックコメントのあり方がいかにおかしいかは前の記事、根本的におかしい日本の遺伝子組み換え承認行政に書いた。パブリックコメントでいくら問題を指摘しても無視される。そのまま出すのではブラックホールに批判を投げ込むだけに終わる。だから、ここで自分の批判をここに表し、どう政府が対応するかチェックしたいと思う。

以下、私のコメント。


遺伝子組み換え(GMO)の承認に関するパブリックコメントのあり方について

 これまで日本ではいくつもの除草剤アリルオキシアルカノエート系(=枯れ葉剤)耐性遺伝子組み換えが承認されてきました。その際のパブリックコメントにおいて、米国においてこの枯れ葉剤耐性GMOに対する科学者、医療・農業関係者の強い反対が起きていて承認が止まっていること、生態学的にも大きな懸念が表明されていることを何度も指摘してきました。

 しかし、その指摘は無視され続けています。この農水省と環境省によるパブリックコメントは遺伝子組み換えの環境に与える影響に関する唯一のパブリックコメントであることを考えれば、承認の前に、こうした環境面への影響に関する懸念に対してしっかりとした科学的根拠をあげて説明する責任があります。
 それを行なわずに承認してしまうということは行政の怠慢と言わざるを得ません。

枯れ葉剤耐性遺伝子組み換え大豆について

 この除草剤アリルオキシアルカノエート系耐性遺伝子組み換えに対しては35人の科学者、医療関係者から強い懸念を示す公開書簡、144の農業漁業、食品、健康、消費者、環境団体からも公開書簡が送られています。その中で、この枯れ葉剤耐性遺伝子組み換えが承認されてしまうと、枯れ葉剤の使用が30倍に激増してしまうこと、さらにこの除草剤が生態系への影響や人体への大きな影響を生み出すことなどが指摘されています。

危険な枯れ葉剤のドリフト(流出)

 この除草剤は揮発しやすいため、噴霧する農場から周りの環境に流出することが危惧されます。耐性を持たない他の農作物への影響はもちろん、野生生物の生存にも大きな悪影響を与えることが懸念されます。
 さらにこの除草剤は川や海へと流れ、その絶滅危惧種の生存を脅かしている実例をすでに米国環境庁と米国海洋漁業局がすでに発見しています。

人体への影響

 枯れ葉剤の人体への影響についてはすでに多くの研究があります。致死的なホジキンリンパ腫、パーキンソン症の原因となり、出生異常、神経やホルモンへの異常の原因となっている可能性が非常に高く、米国環境庁でもその有毒性が認識されているものです。

自然に対する無限の軍拡競争

 さらにこの遺伝子組み換えがなぜ必要とされたかを見る必要があります。1996年にスタートしたモンサントのラウンドアップ耐性遺伝子組み換えが効力を失い、その耕作地でラウンドアップをかけても枯れない耐性雑草が増えていることが背景にあります。

 その結果、米国環境庁は今年、ラウンドアップ残留許容量を多くの人たちの反対を無視して引き上げました。これは遺伝子組み換えの導入によって農薬の使用が減るとする遺伝子組み換え企業の主張とは反対に、現実には農薬使用が激増している事実を示すものです。

 この事実は遺伝子組み換え技術の限界を示すものではないでしょうか?

 しかし、ラウンドアップに枯れ葉剤を加えることで対応するというのは、自然に対してさらなる軍拡で事態をコントロールしようとする姿勢と言わざるを得ません。この枯れ葉剤耐性遺伝子組み換え大豆でもラウンドアップ耐性の場合と同じく、雑草に耐性が付き、枯れ葉剤の使用が激増するというのはまず間違いないことと思われます。

 その結果、自然は汚染され、環境は破壊されます。そうした方向ではなくとも雑草をコントロールする方法は存在します。今やその方法を発展させていくべきであるにも関わらず、それとは反対の危険な方向へと遺伝子組み換え企業が暴走を始めており、それに対して規制すべき規制当局が本来の仕事をしないというのはひじょうに憂うべき現実です。

 これ以上の環境破壊、健康破壊を進めないためにも除草剤アリルオキシアルカノエート系耐性遺伝子組み換えの承認に反対します。そして、これまでに承認した除草剤アリルオキシアルカノエート系耐性遺伝子組み換えの承認を見直すことを求めます。

追記:ここでは枯れ葉剤問題に絞りましたが、この枯れ葉剤への言及と同様のことがジカンバ耐性ワタにも当てはまります。そして、グリフォサート耐性、グルホシネート耐性にも同様の問題があることを追記します。今回、対象となっている遺伝子組み換えの承認すべてに反対します。

以上


パブリックコメントを出すには以下のページを参照のこと。

遺伝子組換えダイズ、トウモロコシ及びワタの第一種使用等に関する審査結果についての意見・情報の募集(パブリックコメント)について(農水省)

遺伝子組換えダイズ、トウモロコシ及びワタの第一種使用等に関する承認に先立っての意見・情報の募集(パブリックコメント)について(環境省)
農水省でも同じパブリックコメントが同時期に行われている。どちらから出しても共有されるということでどちらかに出せばよい。

“枯れ葉剤耐性遺伝子組み換えに対するパブリックコメント” への1件の返信

  1. 如何に枯れ葉剤に強い植物を創った所で、人間や他の生き物たちは急に強くなる訳ではありません。
    私たちは健康に生きるために食べます。毒薬入りの食べ物を野に放たないでください。
    私たちはどんなに恐ろしいか、もうしっかりと見聞きし、体験済みです。
    承認は、止めてください。

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