COP21で問われているもの

 マスコミではCOP21での攻防はいまだに先進国対発展途上国の利害対立であるかのように語られる。古い常套句を繰り返している。しかし、その対立だけで見ていれば重要な問題を見落としてしまう。それは何かといえば、この気候変動を起こしている当の主役である多国籍企業の動きだ。 “COP21で問われているもの” の続きを読む

怒らないのは日本の文化なのか?

 長く、苦しい気持ちにさせられてしまうことだが、原爆投下といい、原発事故といい、これだけのことが起きながらなぜ日本人は怒らないのか、それが日本の文化だからだという言われ方が日本の外では良識的な人びとの間ですらよくされる。
 今回の原発に限らない。『菊と刀』以来、日本は特殊な国、特殊な文化なのだ、という断定が世界中に蔓延っているし、日本人自身、そんな評価を自らの「誇り」にしている人さえいる。もちろん、独自性は常に重要だ。でも独自性と特殊性は異なる。前者は世界文化に独自の寄与をする根拠になるけど、後者は民衆連帯の妨げにしかならない。
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Rio+20は何であったか?

日本環境法律家連盟の『環境と正義』(2012 10/11)に寄稿させていただいた。環境と法律の専門家の人たちと人びとをつなぐ貴重な存在として、これまでも『環境と正義』にいろいろ学ばせていただいている。ぜひ購読会員になることをお勧めしたい。購読申し込み

寄稿文章のブログでの公開の許可をいただいたので、その文章をここに掲載する。貴重な機会を与えていただいたことに感謝したい。
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ブラジルの核事故被害者から福島への連帯メッセージ

6月のRio+20に平行して開かれたCúpula dos Povos(ピープルズ・サミット)でブラジルの反原発運動が準備した反核テントでAVCésioという1987年にブラジルのゴイアニアで起きたセシウム漏洩事故の犠牲者によって作られた団体の代表、オデッソン氏(Odesson Alves Ferreira)にお会いした。 “ブラジルの核事故被害者から福島への連帯メッセージ” の続きを読む

バイオパイラシー問題を考える:ペルーの取り組み

ピープルズ・サミットでのセミナーから(その3)
南の国でのバイオパイラシーは新しい植民地主義であるとして非難されている。

そのバイオパイラシーの次の例はペルーだ。ペルーはブラジルと共にアマゾンの熱帯林を持ち、その生物多様性の豊かさを誇る国でもある。このペルーのバイオパイラシー防止政策は南米で最も進んだものである。

ペルーはコーヒーなど初め、有機農業の盛んな国でもあり、有機農業を汚染する遺伝子組み換えに対しては厳しい姿勢を取ってきた。昨年には10年間の遺伝子組み換え禁止モラトリアムを国レベルで成立させていることにもそれは現れている。

Ilko Rogovich, SPDA, Peru
ペルーのSPDAのIlko Rogovich氏(左端)
ペルーのNGO環境の権利のためのペルー社会(SPDA)のIlko Rogovich氏がペルーでの生物資源をバイオパイラシーから守る取り組みを説明した。

ペルーは2002年8月に反バイオパイラシー法を成立させた(*1)。2004年4月にはペルーの生物多様性へのアクセスと先住民族のコレクティブな知識を守る法(*2)を成立させ、同名の全国委員会を恒常的な機構として作った。この委員会には政府機関の他に、2つのNGOが入り、先住民族の権利が保障されるように動いている。

アマゾンのSacha Inchiをフランス企業が「発明」?

Plukenetia_volubilis (Sacha_Inchi) Euphorbiaceae_Peru from WikipediaSacha Inchi(左写真*3)というオメガ3とオメガ6の脂肪酸に富み、3000年にわたり、ペルーのアマゾン地域で先住民族によって耕作され、利用されてきた植物がある。それは先住民族の化粧品であり、栄養価高い食品であり、セラピーにも使われる貴重な生物資源である。

しかし、2006年にフランス企業GreentechがこのSacha Inchiの特許をフランスの特許庁に申請した。彼らはSacha Inchiの実をスキンクリームやヘアークリームとして使うというアイデアを「発明」した、というわけだ。彼らはその実がすでに先住民族が長年にわたり活用してきたという事実を無視していた。

ペルーの全国委員会とフランスのNGOが協力して、この特許の違法性を訴え、ペルーの先住民族がすでにSacha Inchiを化粧品として使えることを知っており、実際に使ってきたこと、Greentechはなんら発明していないことを実証し、彼らの特許が無効であることを訴え、特許は取り消された。

先住民族の伝統的知識は書かれた情報として残されていないことが多い。それに対してペルーの全国委員会はバイオロジカルな資源の情報と先住民族の知識を記録し、先住民族の権利が奪われることのないように活動している。

この後、セミナーはセラードとブラジル・アマゾンでの実践例が続く。

(*1)
バイオロジカルな資源に関する先住民族のコレクティブな知識を守る体制
Ley N° 27811, del 24 de julio de 2002, mediante la cual se establece el régimen de protección de los conocimientos colectivos de los pueblos indígenas vinculados a los recursos biológicos http://www.wipo.int/wipolex/en/details.jsp?id=3420

(*2)
ペルーの生物多様性へのアクセスと先住民族のコレクティブな知識を守る法
Ley N° 28216 de Protección al Acceso a la Diversidad Biológica Peruana y los Conocimientos Colectivos de los Pueblos Indígenas
http://www.wipo.int/wipolex/en/details.jsp?id=5752

(*3)
Sacha Inchi photo by Crops for the Future

参考情報

バイオパイラシー問題を考える:ピープルズ・サミットでのセミナーから(その2)

バイオパイラシーとは盗みであり、新たな植民地化を許してはならないという力強いバンダナ・シーバの講演の後、バイオパイラシーの具体例についてのセッションに移った。

最初はアマゾンのブラジル(アクレ州)、ペルー国境をまたがって生きている先住民族アシャニンカのベンキ・ピアンコ・アシャニンカ(Benki Pianko Ashaninka)氏が証言した。 “バイオパイラシー問題を考える:ピープルズ・サミットでのセミナーから(その2)” の続きを読む