混乱の国家に代わり地方自治体の食の政策が進化

 米国の連邦議会が乱入・占拠されたのとほぼ同時に日本では緊急事態宣言。どちらも危機的なまでの政治の形骸化、麻痺を印象づける。悪い動きは国を超えて連動していて、パリ合意から離脱した米国トランプ政権を盾に、ブラジルのボルソナロ政権はアマゾン、セラード、パンタナルという重要な生態系の破壊・農地・鉱山開発を加速。かつてない速度で環境が破壊されている。人類の生存がより危険に。安倍前政権はそのボルソナロ政権を積極的に支援してきた。
 こうした動きばかりに目を奪われていると絶望以外ないように思えてくる。政府は多国籍企業の代弁者となり、次から次へと彼らのために規制緩和し、人びとの権利、公共財産は奪われる動きのオンパレード。しかし、そんな中、マスコミにはまず流れないが、希望を持てる動きも実は大きく広がってきている。
 ブラジルのアグロエコロジー全国連絡会議(Articulação Nacional de Agroecologia、ANA (1))はブラジルでアグロエコロジー(2)の普及に向けて活動し、ブラジル政府に小農を基盤とするアグロエコロジー政策を採用させるまでに成果を上げてきた。ボルソナロ政権になって、その政策は大きく歪められてしまったけれども、その政策はすでに地方自治体に根を下ろしている。 “混乱の国家に代わり地方自治体の食の政策が進化” の続きを読む

Kiss the Ground: 気候変動を止めるRegenerative Agriculture

 気候変動を激化させ、世界の土壌をあとわずか60年で崩壊させかねない状況に追い込んでいるのは戦争技術が作り出した工業型農業システム。
 しかし、生態系のシステム、特に土壌微生物の動きに学び、その力を生かす農業に転換すると、現在の危機的状況は劇的に変えることができる。気候変動を抑制するどころか、かつてそうあった安定した状況にまで危険な技術を1つも使わずに取り戻すことができる。そんなことは夢のように思われるかもしれないが、科学者たちもその力に太鼓判を押す。
 生気を失い砂漠化した工業的農業システムの畑に、豊穣な生態系の力を引き出す農園が広がる。そして、前者の農場で働くものは国からの補助金がなければ赤字経営になってしまいかねないのに対して、後者の生態系を生かした農園は大きな富をもたらす(米国の平均の1エーカーあたりの利益は3ドル以下、それに対してRegenerative Agricultureを実践する農家の農園は100ドル以上をもたらす)。だからこうした農業の進展が止まらない。年々強まる気候変動の猛威を前に希望を失っていると、なんという夢物語だと思うかもしれない。でもこれは夢ではなく、実際に動いている、十分達成可能なもの。
 その姿を描いたドキュメンタリー映画 “Kiss the Ground”。Vimeoで120円で視聴できる(ただし、Vimeoは英語。字幕なし1時間25分)。Netflixでは日本語字幕もあるとのこと。ぜひ、多くの人に見てもらいたい。


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稲葉光國さんのビジョン

 民間稲作研究所の稲葉光國さんが今朝早く亡くなった。その報せに呆然として何も手に付けることができなくなった。
 稲葉さんがいなければ全国の学校給食を有機にするなんていうのは夢の夢だっただろう。いすみ市の学校給食のお米がすべて有機米にあんなに早くできたのも稲葉さんの技術指導なしには考えられなかった。稲葉さんの話を伺うと、日本の食を自給し、しかも有機にすることが夢物語ではなくなると思えてくる。日本のあちこちから、うちでもやりたい、という声が出てきていた。有機転換したい農家とそれを応援する消費者、地方行政が組むことで効果的な取り組みができそうだ、この動きを日本各地で、と胸は躍った。 “稲葉光國さんのビジョン” の続きを読む

土壌微生物、テーハ・プレータ、アマゾンとわたしたちの未来

 未来への希望は足下にある。土壌が持つ不思議な力。土いじりしている時の充足感には何か確実に根拠があるのだろう。

 アマゾンの先住民族は土壌微生物を育てる手法をはるか昔に開発して、自然が作る森よりもより豊かな森と畑を作り出していたことが近年、確認された。それがテーハ・プレータ(Terra Preta、黒い土)から知ることができる(1)。 “土壌微生物、テーハ・プレータ、アマゾンとわたしたちの未来” の続きを読む

ウイルス蔓延への処方箋とは?

 新型コロナウイルスによる社会への影響、日本では冬に向け、今後さらに厳しい状況が来ることが危惧される。新型コロナウイルスだけでなく、他の人に感染しうる危険なウイルスの蔓延も今後ありうる。絶望的? いや、そうではない。ウイルス感染の真の原因を取り除くことで経済的に崩壊することなく、最悪のパンデミックを防止することは可能。しかも、その対策は多くが同時に気候変動防止にもつながるだけでなく、数多くの雇用も生み出す。 “ウイルス蔓延への処方箋とは?” の続きを読む

気候変動の1つの現れとしての新型コロナウイルスとその解決策

 新型コロナウイルスの被害が世界で止まらない。特にブラジルでの感染拡大が急速に拡がっており、米国を上回り、現在世界でもっとも急速に拡大を続けている。
 新型コロナウイルスだけでなく、その他のウイルス、あるいは耐性菌(ウイルスではなく、バクテリア、病原菌)による感染症もここ近年急増している。さらに気候変動の激化はそれに拍車をかけるだろう。

 これまで気候変動の問題を話していても、どこかみな危機感がなかった。でもこのウイルスも気候変動がもたらす問題の1つと受け取れば、気候変動がもたらす被害が少しリアルに感じられるのではないか? これは命に直結する問題なのだから。気候変動によって感染症の危険は増すのだから。 “気候変動の1つの現れとしての新型コロナウイルスとその解決策” の続きを読む

新型コロナウイルス禍と食の行方

 この20年の世界の変化、特に食・農業政策に起こっている変化は巨大なものがある。まず最初の大きな一撃は2007年/2008年の世界食料危機。しかし、それ以上に大きなインパクトを与えたのがこの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症COVID-19の蔓延の事態となるのではないだろうか? “新型コロナウイルス禍と食の行方” の続きを読む