大地を再生するリジェネラティブ・アグリカルチャーの映画

 世界の大きな底流。辻信一さんの言葉で言えば「反生命」から「生命」への流れ。リジェネラティブ・アグリカルチャー(大地再生型農業)の大きな進展を描いた映画。
To Which We Belong
 この映画はそのリジェネラティブ・アグリカルチャーが米国や世界の農業を変え、農業だけでなく、漁業や社会までも変えるさまを描き出している。推薦文を書かせてもらったのだけど、そこで一言、批判めいたことも書いてしまったので、簡単に触れておきたい。 “大地を再生するリジェネラティブ・アグリカルチャーの映画” の続きを読む

有機農業と差別・排外主義、優生思想:ブラジルの運動から考える

 食料高騰がひどい。さらには食料危機。急いで国内での食料増産に向け動かなければならないのに、日本政府はさらに軍事的危機を煽って防衛費増強という真逆の方向に走っている。
 軍事的危機を煽らなくても私たちは十分、多重な危機のまっただ中にいる。気候危機、生物絶滅危機、そして食料危機。戦争始める前に、対外貿易止まれば2年で国内6割が餓死するというアフリカの多くの国よりも脆弱な日本の農業をなんとかしなければならないのに。
 
 この危機はどう超えられるのか、すでに答えは出ている。グローバルな食のシステムへの依存を減らし、ローカルな食のシステムを強化すること、同時に生態系を守る社会へと転換させること。そして、差別・排外主義や優生思想と闘い、一人一人の尊厳を守ること。この3つの要素が不可欠だが、すでにそんな実践をしている運動がブラジルにある。 “有機農業と差別・排外主義、優生思想:ブラジルの運動から考える” の続きを読む

金子美登さん、追悼

 日本を代表する有機農家と言えば必ず出てくる金子美登さんの訃報。あまりに突然で言葉が出てこなかった。それほど親しくさせていただいたわけではなく、遠くからその姿を見る関係であったけれども、小川町に講演に呼んでいただいた上に、霜里農場を案内していただいたことは忘れられない。
 日本を代表する有機農家といえばどんな人をイメージするだろうか? 自然を愛する哲人? もちろん、それは間違っていないのだけど、金子さんは何でも手掛けるマルチな人だった。それはたとえば再生油で動くトラクター(写真)、畑で必要なエネルギーも自分が作る、トイレは一見普通のトイレだが、それも畑の肥やしになる、すべては循環する地域循環のシステムを作り上げるエンジニアであり、さらにそんな社会を夢想するビジョナリーだった。
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米国農務省、有機農業転換計画を本格始動

 これまでの化学肥料や農薬に依存した工業型農業から離脱することは急務だ。なぜならこれが様々な多重危機の根幹の主因となっているからだ。気候危機も生物絶滅危機も人の健康危機も、そして食料危機も深く関わっている。すべての状況ですでに待ったなし。だから食料危機を前に「有機農業は棚上げ」という宣伝に対しては警戒しなければならない。逆に今こそ、化学肥料や農薬に依存した農業からの脱却は待ったなしなのだから。そして、世界ではCOVID-19のパンデミック、ウクライナでの戦争を受けて、この必要性を多くの人びとが理解するようになってきた。
 多重危機の中の食料危機
 あの米国でも有機農業への転換計画が始まる。Organic Transition Initiativeがそれで、予算は3億ドル(今日のレートで413億円くらい)(1)。米国としては大きな額ではないが、昨日紹介したFarm to Schoolとも連動して動けば、米国でも一気に有機学校給食が増やせるし、食のシステムを変えるきっかけを作り出すことにつながる可能性があると市民団体は注目する(2)。 “米国農務省、有機農業転換計画を本格始動” の続きを読む

フード・デモクラシーと日本

 日本は本当にどうにかなってしまいそう。頭が混乱する。こんな時、外の動きを見ることで落ち着きを取り戻せるかもしれない。
 MST(Movimentos dos Trabalhadores Rurais Sem Terra、直訳すると土地なし地方労働者運動、土地なし農業労働者運動)はブラジルが軍事独裁政権が終わろうとする1984年頃結成され、農地改革を求めて、農業労働者を組織して、活動してきた運動団体。その運動が辿ってきた道、論争は興味に尽きないものがある。 “フード・デモクラシーと日本” の続きを読む