メキシコ:トウモロコシ保護法はトウモロコシ国家管理法?

 生物多様性こそが私たちの命を守ると書いた(1)。その多様性を守ってきた農家のタネが危うくなっている。ラテンアメリカの他の国々でも大きな問題となっている。

 特にメキシコが今、とても危ない。TPPや米国などとの自由貿易協定が大きな制約をもたらそうとしている。 “メキシコ:トウモロコシ保護法はトウモロコシ国家管理法?” の続きを読む

ブラジル:在来種を守る条項はいかに生まれたか?

 ウイルス感染症は人間や家畜だけでなく、植物もターゲットになる。作物の多様性を失えば、作物が全滅する、そんな脅威に直面する。

 実際にアイルランドで19世紀に悲劇が起きている。ジャガイモが菌病にやられ、ほとんど全滅。同じ品種だけ大量栽培していたことが原因。そのために多くの貧農が食べていけなくなり、2割が餓死、2割が国を捨てて移民せざるをえなくなった。

 何がその後の救いとなったかというと、ジャガイモの原産地の南米にはきわめて多様なジャガイモが存在していたこと、その多様な生物資源を使うことでその後は難を逃れることができたこと。つまり、ヨーロッパの人びとは南の地域の生物多様性に助けられたということができる。生物多様性を守ることはそうした脅威から命を守ることにつながる。 “ブラジル:在来種を守る条項はいかに生まれたか?” の続きを読む

土壌微生物、テーハ・プレータ、アマゾンとわたしたちの未来

 未来への希望は足下にある。土壌が持つ不思議な力。土いじりしている時の充足感には何か確実に根拠があるのだろう。

 アマゾンの先住民族は土壌微生物を育てる手法をはるか昔に開発して、自然が作る森よりもより豊かな森と畑を作り出していたことが近年、確認された。それがテーハ・プレータ(Terra Preta、黒い土)から知ることができる(1)。 “土壌微生物、テーハ・プレータ、アマゾンとわたしたちの未来” の続きを読む

ウイルス蔓延への処方箋とは?

 新型コロナウイルスによる社会への影響、日本では冬に向け、今後さらに厳しい状況が来ることが危惧される。新型コロナウイルスだけでなく、他の人に感染しうる危険なウイルスの蔓延も今後ありうる。絶望的? いや、そうではない。ウイルス感染の真の原因を取り除くことで経済的に崩壊することなく、最悪のパンデミックを防止することは可能。しかも、その対策は多くが同時に気候変動防止にもつながるだけでなく、数多くの雇用も生み出す。 “ウイルス蔓延への処方箋とは?” の続きを読む

畜産のあり方を考える

 土壌微生物と植物の共生関係は興味が尽きない(1)のだけど、これだけ見ていると近視眼的になってしまう。この世の中には動物もいる。当然、人間もいる。
 動物の出現はこの土壌微生物と植物の共生関係をさらに拡大している。雨の少ない地域、特に寒冷な地域ではこの動物の存在が重要になる。なぜなら、そうした環境では土壌微生物は繁殖していくことが困難であるからだ。微生物たちは動物の腸にそうした環境でも繁殖していくことができる場所を見つける。あらゆる生命が必要とする窒素は微生物が空中から取り入れ、植物を通じて、動物にも供給される。そして炭素は植物の光合成によって微生物や動物に与えられる。
 わずかな草を草食動物が食べ、その動物のお腹の中で微生物が繁殖し、糞となって排出されることで、土の中に炭素が蓄えられる。また草食動物が草を食べるたびに土の中の根は土に還るスピードが加速し、土が増えていく。肉食動物の存在が草食動物の増えすぎをコントロールし、過度に草が食べられないように維持される。土の中には水分や炭素や窒素が蓄えられ、気候変動も抑えられる。
 この動物相を失うと、草、土壌微生物、土の循環が維持できなくなり、砂漠化してしまう地域がある。砂漠化すれば土は失われ、植物も、土壌微生物も激減する。その結果はさらなる気候変動が加速されることになる。 “畜産のあり方を考える” の続きを読む

米国の遺伝子組み換え食品表示制度に対する訴訟

 米国政府が導入を決めた抜け穴だらけの遺伝子組み換え(GM)食品表示制度に対して、米国市民が訴訟を起こした。

 モンサントの重役が米国政府の中に入り込み、米国政府高官がモンサントの重役になるといういわゆる回転ドアによって、米国政府の政策がGM企業に都合のいいように決定されてしまう状況になっている。これに対して、市民は州政府に働きかけ、州でのGM食品表示制度を作ることに集中し、支持が広がり、2016年にはバーモント州、コネチカット州、メイン州で表示制度を作る法を実現。その他の州でも成立に向けて動いていた。
 この動きに対して、州レベルでは対抗できなくなったGM企業らはGM食品表示制度を連邦レベルで作ってしまい、州レベルでの制度を無効にする先制攻撃に出た。2016年7月に法制化され、2019年に規制のあり方が決定された連邦レベルの食品表示義務制度はまさに穴だらけで、GMO規制を骨抜きにするものだった。 “米国の遺伝子組み換え食品表示制度に対する訴訟” の続きを読む

「ゲノム編集」:種苗への表示が不可欠だ

 遺伝子組み換え(GM)農業の終わりが見えた、と昨日書いた。GM企業は最後のフロンティアとも呼ばれるアフリカでGM農業の拡大を狙っている。先進国ではもはや増やすことは不可能に近く、援助を武器にアフリカ諸国に遺伝子組み換え作物(GMO)の栽培を長年迫っているが、抵抗は大きい。GM企業が言うようにもし本当にGM技術が収穫の向上をもたらし、飢餓から人類を救ってくれるのであればとっくにアフリカ諸国はGM農業に踏み出していただろう。でも、食用のGM作物を作っているのは実質、南アフリカくらい。アジアではGM稲(ゴールデンライス)の栽培を迫るが反対は強い。 “「ゲノム編集」:種苗への表示が不可欠だ” の続きを読む