クローズアップ現代の報道の意義:日本の現実を見つめよう

 クローズアップ現代「世界でどう闘う?農産物のJAPANブランド」はとても画期的だったと思う。その理由第1。「モンサント文書」。実際に報道されたのは米国のラウンドアップ裁判でのモンサント社の社内文書(1)。モンサントは自社の研究でラウンドアップの人体への危険性は実際につかんでいながら知らせなかった。これがモンサントの敗訴の決定的な理由となっている。もっとも、番組の時間の多くを使っていたのはバイエル社による弁明で、衝撃は大いに弱められているが、実際に白血病になって訴訟を起こした人のインタビューやドウェイン・ジョンソン氏の裁判の映像含めて、流れたことは意義が大きい。 “クローズアップ現代の報道の意義:日本の現実を見つめよう” の続きを読む

公的種苗制度ともう1つの種苗制度の確立に向けて

 種苗法改正は問題だ、とこちらは書き続けているが、一方で、種苗法改正ではそんなに変わらない、問題じゃない、いや賛成だと言っている農家の方たちも存在する。この種苗問題を紐解いていくと驚くほどの分断がある。それゆえ、その分断を超えて行動することは容易ではない。まず栽培している品種によって状況が違いすぎる。品種開発をする側の農家と使う側の農家も一見利害が対立するようにも見える。でも問題を紐解いていけば解決策は見えてくると思う。どんな問題があるのかを見てみたい。 “公的種苗制度ともう1つの種苗制度の確立に向けて” の続きを読む

遺伝子組み換え作物をめぐるこの10年

 ここ10年、世界の動きはより激しくなり、洪水のようにますます膨大な情報が流れてくる。良いことも悪いこともある。
 その中で悪いニュースからちょっと。遺伝子組み換え農薬とも呼ぶべき遺伝子に作用する農薬を米国環境保護局が承認する可能性がある。従来の農薬は化学成分が植物のアミノ酸合成を妨げたり、毒素タンパクで害虫の腸に穴を開けたりさせたりするものだったが、これは虫の遺伝子に作用して虫を殺す。どこかの実験室で遺伝子組み換えをするのではなく、自然環境の中でそれを起こすというもの。
 いいニュースは農業のあり方を変えて、生態系を適切に3割回復させることができれば7割の生物の絶滅を回避できるというもの。このままではあと30年で100万種の生物が絶滅すると予想されている。このシナリオを変えることは可能だということ。コロナなどの感染症もやはり農業のあり方、特に畜産業のあり方が大きく関係するということも明らかになりつつある。食を変えることの意味がより明らかになっている。 “遺伝子組み換え作物をめぐるこの10年” の続きを読む

種苗法+特許法:育成者権と特許権による種苗企業の知財権強化は何をもたらす?

牧田寛氏(元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授)のこのツイート

 ぐさりと響く。停滞を続け、この停滞からの脱出方法も見えなくなっている日本でその現実を見ようとしない人たちが多い中、事態を改善させるためにはやはり現実から出発しなければならない。このツイートで思い出したのはこのグラフ。 “種苗法+特許法:育成者権と特許権による種苗企業の知財権強化は何をもたらす?” の続きを読む

「ゲノム編集」種子の後代交配種は「ゲノム編集」ではない?

 「後代交配種、販売前届け出求めず−ゲノム編集作物の“子孫”」
https://this.kiji.is/687247960347903073?c=395501877279457
 厚生労働省のこの決定がどれほど日本の現在・未来を危うくするか。まず何を意味するのか、見てみよう。要するに「ゲノム編集」された作物は届け出する(義務ではない)。でもそれを親に作った品種は届け出すら不要。そして、この後者を流通させることにすれば消費者はまったく政府が公表する情報で「ゲノム編集」食品を避けることは不可能になるという仕組みである。こんなことを許したら食のあり方を決定する手段すら奪われるということになる。 “「ゲノム編集」種子の後代交配種は「ゲノム編集」ではない?” の続きを読む

スクラップされる遺伝子組み換え種子、遺伝子資源としては無価値

 モンサント(現バイエル)などが開発した多数の遺伝子組み換えトウモロコシ、コットンの品種をスクラップにすることが検討されている(1)。いわゆるBtコーン、Btコットンと言われる遺伝子組み換えで、害虫を殺すBt毒素のタンパクを作り出す遺伝子組み換えをした品種。 “スクラップされる遺伝子組み換え種子、遺伝子資源としては無価値” の続きを読む