「遺伝」を超えてー継承と多様性のgen

言葉の問題は大きい。今回は「遺伝」という言葉。
 「遺伝する」というと日本語では親の影響が現れるという意味に取られるだろう。親からの継承というニュアンスになる。しかし、この言葉の元はgenだ。genはgenerate、生み出す、生成するという意味を持つ。地球に生まれた単純な生命はどんどん多様化し、新たな生命が生み出され、豊かになってきた。それを科学することが遺伝学(genetics)であり、それは親から子に継承されるものと同時の新たに親にないものを生み出すメカニズムを解き明かす、つまり継承と多様性というそれ自身、互いに矛盾し対立するような2つの方向を包含する学問である⁽¹⁾。 “「遺伝」を超えてー継承と多様性のgen” の続きを読む

カナダでモンサント(バイエル)に集団訴訟

 世界でモンサント(現バイエル)の農薬ラウンドアップ(主成分名グリホサート)に対する動きはまったく止まるところがない。米国に続いてカナダでもラウンドアップに対する集団訴訟が始まる。ケベック州を除くカナダ全土で、ラウンドアップに曝されて非ホジキンリンパ腫になった人はこの集団訴訟に参加できる。
 カナダでモンサント(バイエル)に対する訴訟は2019年12月に開始されたけれども、12月11日、オンタリオ州上級司法裁判所がバイエルに対する集団訴訟を認定した(1)。なぜ集団訴訟かというと個々の裁判では追い切れないほどの被害者が出ているということだ。 “カナダでモンサント(バイエル)に集団訴訟” の続きを読む

アグロエコロジー・セミナーで感じた違和感

 アグロエコロジーの教科書が日本語で出版されたということで、アグロエコロジーをテーマとするセミナーがいくつも行われた。その一つに参加してみたけれども、違和感を感じざるをえなかった。そのセミナーではアグロエコロジーとは単に自然と調和した農業、というイメージしか感じられなかったからだ。でもアグロエコロジーについてその意義をここ10数年紹介してきた僕にとって、アグロエコロジーとは到底、そんな枠組みに収まるものではありえない。何が欠けているのか考えてみたい。 “アグロエコロジー・セミナーで感じた違和感” の続きを読む

重イオンビーム放射線育種は実質日本だけーコシヒカリ環1号、あきたこまちR問題を考える

 重イオンビーム育種米問題は、放射線育種として伝わってしまったため、幾重にも誤解が広がった。「放射線育種なら以前から世界各地でやっていたから問題ないんじゃないか?」など。でも以前からやっていたガンマ線を使った放射線育種は実質的にすでにもう終わっている。今回、登場した品種はそれとは違う重イオンビームを使ったもの。
 重イオンビームはガンマ線と比較にならないほど1点にあたる破壊力が強い。ガンマ線があたっても遺伝子が直接傷つくことは稀で、細胞内で活性酸素(フリーラジカル)が作られて、それが細胞を傷つけ、突然変異が生まれるケースが大半とのこと。それに対して、重イオンビームはイオンが遺伝子の2重鎖を切って破壊していく。同じ技術というにはあまりに違いが大きすぎる。 “重イオンビーム放射線育種は実質日本だけーコシヒカリ環1号、あきたこまちR問題を考える” の続きを読む

「ゲノム編集」魚養殖のリージョナルフィッシュ社が国内外に拡大?

 拷問養殖として批判される「ゲノム編集」魚が都内のレストランに。「ゲノム編集」魚養殖を進めるリージョナルフィッシュ社のタイ進出は政府が完全バックアップ。
 「ゲノム編集」魚養殖を進めるリージョナルフィッシュ社がタイへの進出で現地でも報道があったが、この動きの背後には日本政府の支援がある。公金が使われている。 “「ゲノム編集」魚養殖のリージョナルフィッシュ社が国内外に拡大?” の続きを読む

バイエル、5回連続敗訴。農薬ラウンドアップ裁判で350万ドルの賠償

 フィラデルフィアの民事裁判所でケリー・マーテルさんが非ホジキンシンパ種となったことでラウンドアップが原因であるとして訴えたことに対して裁判所は10対2で350万ドル(約5億円)の賠償を命じる判決を下した(1)。
 ラウンドアップ裁判は3回連続、モンサント・バイエルの責任を認める判決が続いた後、バイエルの巻き返しがあり、9回訴えが退けられたが、これで5回連続、バイエルの責任を認める判決が続いたことになる。 “バイエル、5回連続敗訴。農薬ラウンドアップ裁判で350万ドルの賠償” の続きを読む

朗報:EU、「ゲノム編集」規制緩和案、承認されず。

 EUが「ゲノム編集」(NGT)食品の無規制流通を認めてしまうのではないか、と11日は悲観的な観測を元に投稿した(1)。遺伝子組み換え企業が莫大な資金を投じてEU加盟国の買収し、2018年の欧州裁判所の判決を覆す欧州委員会の見解を発表し、昨年夏には規制緩和に向けた提案を行っており、その採決が年末という状況の中で、情勢は厳しいと考えたからだ。国内では圧倒的な反対であるにも関わらず、政府は賛成してしまう、そんな対応が多く、今後、大変な事態を覚悟した。でも結果は「ゲノム編集」規制緩和提案の承認に必要な過半数が得られず、年内の交渉は終わり。来年の攻防に舞台は移されることになった。 “朗報:EU、「ゲノム編集」規制緩和案、承認されず。” の続きを読む

EUが「ゲノム編集」作物規制緩和? 懸念される農薬増加

 本日11日、欧州議会農業委員会とEU加盟国は「ゲノム編集」食品の規制なしの流通を認める案を認めてしまう可能性が高い。この背景にはバイエル(モンサント買収企業)やBASFなどの遺伝子組み換え企業を先頭とするBig Ag(巨大アグリビジネス企業)のロビー活動があり、まさにEUが彼らに買収されていることを示すことになってしまうかもしれない(1)。 “EUが「ゲノム編集」作物規制緩和? 懸念される農薬増加” の続きを読む