みどりの食料システム戦略:公共政策の貧困

 期限が間近(12日)に迫った「みどりの食料システム戦略」の中間とりまとめのパブリックコメント。今後に大きな影響を与えることなので、しっかりと意見を表明する必要を感じる。コメントで書くことはまた別途、まとめるつもりだけれども、いくつかその前提となることを書いておきたい。 “みどりの食料システム戦略:公共政策の貧困” の続きを読む

「みどりの食料システム戦略」パブリックコメント後編

 2050年までに有機農業を25%に拡大する目標を設定した「みどりの食料システム戦略」の中間取りまとめに関するパブリックコメントの締め切り4月12日が1週間後に迫る(1)。これは今後の日本の社会に大きな影響を与える可能性が大なので、先日に前編を書いた(2)が、その続きを考えてみたい。 “「みどりの食料システム戦略」パブリックコメント後編” の続きを読む

改正種苗法の影響? 原種価格の急激な値上げ(栃木県)

 4月1日から改正種苗法の一部が施行となった。これまで地方自治体が担ってきた種苗事業を民間企業に移行させる動きが止まらない。予算が後退し、一部の種子価格が上がり、農家の負担が増やされる。米価は暴落する中、地域の農業の存続がより危機的になる。対抗策を早急に打ち出す必要がある。 “改正種苗法の影響? 原種価格の急激な値上げ(栃木県)” の続きを読む

「ゲノム編集」飼料での後代交配種のパブコメ

 またパブリックコメント、しかもひどいパブコメなので意気消沈、読む気もしないと言われるかもしれないけれども、書かざるを得ない。日本政府は2019年10月に「ゲノム編集」農作物を実質的に申請・承認プロセスを経ずに、安全性の検査もないまま、「同断・届け出」という奇妙な仕組みを作って、表示などの規制もせずに生産・流通させることを認めた。
 もっとも問題なのは、最初の「ゲノム編集」種苗は相談・届け出を求めるけれども、その種苗を親として交配させた後代交配種(つまり「ゲノム編集」種苗の品種同士、あるいは「ゲノム編集」種苗と従来の種苗とかけ合わせてつくった子の種苗)は届け出しなくていいとしたことだ。
 届け出すらしないのだからもう規制も不可能になる。従来の作物とまったく区分ができなくなってしまう。そうすれば反対すらできないだろう、というバイオテクノロジー企業の悪知恵をそのまま受け入れたわけだ。

 しかし、それを飼料に使う場合についてはパブコメで批判が殺到し、農水省も後代交配種でも形質が変化した場合など一定の条件の場合は届け出が必要とすることに昨年2月に方針転換した。でもその方針が使われることは一度もないまま(1)、早くも農水省はさらに方針転換して、その決定を反故にして、後代交配種は一切届け出不要に変えるとしたのだ。それが3月5日に締め切りとなるパブコメで示された方針なのだ。あまりに異例の朝令暮改的迷走だろう。よほどバイオテクノロジー企業から圧力を受けたのだろう。
 怒って当たり前のことをやっているのだけど、マスコミは報道しない。そんな中、粛々とバイオテクノロジー企業のための政治がまた進もうとしている。でも、黙ってられないから、以下のコメントを送る(2)。 “「ゲノム編集」飼料での後代交配種のパブコメ” の続きを読む

バイオテクノロジー企業の言いなりの日本政府

 「ゲノム編集」作物の飼料としての取り扱いに関するパブリックコメント(既報)の締め切り(3月5日)が迫ってきている(1)。
 今回のパブコメについては2月4日にまとめているのでそれを参照していただくとして(2)、今回のポイントは以下
・ 日本政府は「ゲノム編集」された作物を親として交配させた品種(後代交配種)は届け出すら不要としている
・ 飼料としてそうした作物を用いることに対して行われた2019年9月開始のパブリックコメントに批判が殺到→農水省は2020年2月7日に後代交配種で一定の変化が出たものは届け出を求める方針を出す(3)
・ パブコメを受けて変更した政策を今回のパブコメではひっくり返し、後代交配種の届け出を一切不要とするもの “バイオテクノロジー企業の言いなりの日本政府” の続きを読む

種苗法改正で本当に問われるべきだったこと

 改正種苗法について、立ち位置によってさまざまな意見があると思いますが、以下のことを念頭に入れていただければ大変幸いです。

 これまでの種苗法は新品種を育成した育成者とその種苗を使う側の農家の両方の権利を守らなければならないというものでした。新品種を作ることができなくなれば農業にも影響を与えてしまいますから育成者の方たちが事業をやっていけることはもちろん、重要です。そしてそれを買う側の農家がいなくなれば、売り先がなくなってしまいます。だから両方をバランス良く支えることが不可欠になるけれども、今回の法改正はそのバランスを壊してしまうことに懸念があります。

 でも、それは問題の1つに過ぎません。今後、地域で必要とされる種苗をどう確保していくか、という問題があります。各道府県で活用される種苗を調べていけばすぐわかりますが、国や地方自治体が開発した公的品種が大きな割合を占めています。これを民営化することが今回の種苗法の隠れた目的でしょう。 “種苗法改正で本当に問われるべきだったこと” の続きを読む