バイオパイラシー問題を考える:ピープルズ・サミットでのセミナーから(その1)

Rio92と20年経ったRio+20を比べた時、何に違いがあるだろうか?

その端的な違いの1つは遺伝子組み換え企業による農業への支配が南北米大陸で展開されたことであり、また多国籍企業による政治の介入の進展度合いではないだろうか?

1996年、モンサントが作ったラウンドアップ耐性大豆が米国で承認されて以降、米国で大々的に、南米では最初はこっそりと、2005年以降には堂々と遺伝子組み換え作物が栽培されるようになった。

1992年では考えられないレベルでモンサントなどの遺伝子組み換え企業は他国の政治へと介入するようになった。政府高官を買収し、規制を緩和させ、国の規制力を麻痺させ、2012年にはもはや国家はこうした多国籍企業への規制力をほとんど奪われていた。

生物多様性を奪う企業の象徴とも言える遺伝子組み換え企業の規制はRio+20の公式会合では一切口にも出ない。そして確実に世界の生物多様性を奪っていく。ヨーロッパはともかく、日米のマスコミは遺伝子組み換えの問題点を多くは語らない。いや米国はともかく日本のマスコミはほとんど語らない。

遺伝子組み換え企業はその遺伝子組み換えによって環境をリスクにさらし、さらに農薬によって環境を汚染する。しかし、同時に種子産業の独占も計っており、世界中の種子企業のかなりの部分がすでに遺伝子組み換え企業によって買い占められてしまっている。

遺伝子組み換え企業だけではない。化粧品、医薬品メーカーが南の生物多様性の豊かな種子を探索し、それを自分たちの特許として、知的所有権を取得し、その使用を独占するという問題が起きている。

まず典型的なBiopiracyのケースを描いてみよう。

まず北の国の研究者が旅行者を装って、先住民族や伝統的なコミュニティを訪れ、その薬草などの知識を取材していく。こっそり種をくすねて、研究所に戻り、企業の発明として先進国で特許の手続きをしてしまう。先住民族がその種から作った薬草を村のマーケットで売ったら特許違反となってしまう。

自然や人びと(特に先住民族)が太古から育ててきた多様な種子、それは国外の多国籍企業が発明したものではなく、自然の力が生んできたものである。しかし、それを彼ら企業は自らの発明として特許を取得している。南の国々から生物多様性を奪う行為としてBiopiracy(バイオパイラシー、生物資源の盗賊行為)と非難されている。

この問題について、ピープルズ・サミットでフランスのNGO、「Biopiracyに関するコレクティブなオルタナティブ(le Collectif pour une alternative à la Biopiraterie)」が6月21日に開催した。

以下はその簡単な報告である。
バンダナ・シーバ
最初に登場したバンダナ・シーバ(Vandana Shiva)はBiopiracyを北が南を再植民地化する第2のコロンブスと呼んでいる。第1のコロンブスは南の土地を自らの領土=植民地として、特許制度を持ち込んだ。第2のコロンブスでは南の生命そのものを所有する、究極的な植民地化を狙う。

バンダナ・シーバはBiopiracyの例を2つ挙げた。1つは現在ダウ(以前はユニオン・カーバイド)が引き起こしたボパールの化学工場の事故であり、もう1つはモンサントのアレルギーを引き起こさないグルーテンなしの小麦への特許である。「モンサントは何一つ発明していない。この小麦は長いことインドの人びとが食べてきた」

コミュニティが種に関する知識を持って自分たちの生活を支えることの重要性をバンダナ・シーバは訴える。種の特許はこれを壊してしまう。もはや農民は自分の種を改良していくことはできなくなる。改良どころか保存すら許されなくなる。その種の特許はモンサントが保持し、毎年、農民はモンサントから種を買わなければならない、という。モンサントは飢餓をなくすためにはモンサントの技術が必要であると主張するが、実際には収量は増えない。また農薬を減らせるというが実際には遺伝子組み換えの導入によって農薬の使用が増えてしまう。種を買うことも農薬も必要としなかった農民がそれをモンサントに払うということになる。

モンサントは莫大な利益を上げることができるようになる。農民コミュニティからすれば大きな損失である。実際に遺伝子組み換え木綿(Btコットン)でこの悲劇が起きた。借金地獄にさらされたインドの木綿農家は30分に一人というペースで自殺していったのだ。モンサントのBtコットン以外の種は入手できず、農民は債務奴隷となるか自殺するかの選択を余儀なくされた。

モンサントはインドからナスを盗み、遺伝子組み換えナスを作った。遺伝子組み換えナスについては承認が拒否され、モンサントがインドからナスを不法に盗んだことが暴露されて、インド政府の側がモンサントを訴える準備をしている。

こうした事態が世界レベルで起きている。種など生命は多国籍企業の発明ではなく、種に特許を認めることとは盗み=生命の植民地化を認めることであること、人びとが先祖から受け継いだ種を自分たちの力で守っていかなくてはならない事態となっている。

バンダナ・シーバは「種の多様性は発明ではない。生命は発明ではない。生命に特許を認めることは正当性のない、非合法で、道徳に反する行為である」として非難する。

バンダナ・シーバは今年の10月2日(ガンジーの誕生日)に国際的なSeed Freedom Campaign(自由な種キャンペーン)の開催を世界によびかけている。これはハイデラバードで10月8日から19日にかけて開かれる生物多様性条約第11回締約国会議(COP11)につながるキャンペーンとなる。リオデジャネイロからインドへとつながるキャンペーンとなることだろう。

次はブラジル先住民族のケース、ペルーのケース、ブラジルセラード、アマゾンの取り組みの報告に続きます。

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