国会での追及:みどりの食料システム戦略

 昨日、参議院地方創生及び消費者問題に関する特別委員会でのやり取り、今後に関わることがあると思うので、メモしておきます(正確な文字起こしではありません、ビデオでお確かめを)。
 
 質疑に立ったのは川田龍平参議院議員。

 第1問目(川田議員)
 国連食料システムサミット(UNFSS)に世界の農民・市民団体がボイコットを表明して、対抗サミットが計画されていることについて同認識しているか?
 
農林省の答え
 国連のサミットは市民にも開かれていると承知している。

わたしの感想
 開かれているというけれども、議題を作り直そうともしない、つまり耳を貸さない態度をとり続けているのに、それで「開かれている」っていうのは誠意のない答え。
 2010年以降、食をめぐる国連のあり方は大幅に民主化されて、市民団体の発言が重視されるようになった。その国連が多国籍企業の政策を各国政府に要求する場に変わってしまうということは重大な問題。(1)

 第2問(川田議員)
 国連食料システムサミットでは食料生産全体にバイエルやGoogleなどが提供するプラットフォームを使って管理するシステムの導入し、バイオテクノロジー技術、デジタル技術が大きな力を発揮することになるが、これらの多国籍企業に日本の農業を委ねるのは日本の国益にとっても大きな問題をはらんでいる。わずかな企業のために食料保障を犠牲になる。農水省が進めようとしている「みどりの食料システム戦略」も同じ方向性。2050年までの戦略という長期戦略をわずか2週間のパブコメで決めてしまうのは問題。もっと慎重に検討すべきではないか?

農水省
 国連は企業だけではない、農水省もはば広く生産者団体や消費者団体からも意見を聞いている。それを踏まえて長期的な戦略を立てた。

わたしの感想
 消費者の代表の話を聞いたって言うけど、「ゲノム編集」食品ばんばん進めてください、っていうようなことを言う人は消費者の代表とは認められない。都合のいい人たちから都合のいい意見を聴取して、それで進めていくというのはこれは独裁的手法だと思うのだが。もっとも2週間のパブリックコメントで1万7000を超えるコメントが寄せられたことは農水省にとっても驚きだったようで、上記の返答に付け加えて以下のことを述べている。

農水省
 パブリックコメントで対話の重要性が強調されており、戦略のまとめに、あらたに「国民の理解の促進」という項目を追加した。わかりやすい説明で「国民の理解」を促していきたい。

わたしの感想
 パブリックコメントで出てきた反応を受け止めたということは肯定的な一歩。これは評価できる。だからしっかりやってほしい。でもその次の「わかりやすい説明で、国民理解を促す」というのは結局、政府の考えを市民に押しつけるという姿勢であり、これでは対話とは呼べない。対話は相互が同じ姿勢になってこそ成り立つ。結論ありきは対話ではない。

 第3問(川田議員)
 日本政府は国連のアグロエコロジーの推進や家族農業の強化という方針に賛同してきた。しかし「みどりの食料システム戦略」は企業によるイノベーションに偏った戦略になっている。これは従来の政策からの逸脱ではないか? 有機農業の拡大も2030年の目標はわずか6万3000ヘクタールに留まっている。実質的に有機農業を拡げる施策がそれまでにない。
 パブリックコメントを受けて、「現場で培われた優れた技術の横展開」を追加したことは日本でこれまで行われている有機農業の成果を取り入れようとしたものであるとして、評価できる。世界的に日本の有機稲作はトップの水準にあるが、その横展開が難しい現状にある。そのための新たな施策が求められる。
 千葉県いすみ市では比較的わずかな予算でわずか4年で学校給食のお米をすべて有機米に転換できた。こうしたことを求める声は全国から上がっている。これを政府が支援すれば短期間に有機農業を大きく拡げることができる。そのためには予算を確保し、慣行農法の農家が有機転換する上での支援をすることが必要だ。農家から農家へ伝える方法は世界でも有効性が認められており、いすみ市でも実施されたが、こうした支援を政府はしないのか?
 
農水省
 自然災害、気候変動による影響、生産者の減少、農村コミュニティの衰退、SDGsへの対応の重視などを背景に若手の生産者、中山間地域の生産者、中小家族経営者などを含む幅広い意見交換を行い…(省略)、農作業の安全性、生産性の向上と生産者の裾野の拡大などを通じた持続的な基盤の構築を目指しています。
 本戦略は中小家族経営を中心とするさまざまな生産者、企業者、商社のそれぞれの理解と協働の上で実現するもの。関係者が総力を挙げて生産性の向上と持続性の向上に向けて全力で取り組んで参ります。
 
わたしの感想
 具体的質問を一般的な原則で答えることによって質問には答えない。空疎な反応。しかし、追加して、別の担当者が以下の返答
 
農水省(安岡審議官)
 有機農業の強化について。近年、水稲、ニンジン、バレイショなどの根菜類では有機栽培の栽培技術の確立が進んでいる。こうした技術を元に有機農業を指導できる人材の育成、農家の技術習得を進めていく、こういった取り組みは重要であると考えている。現場で実践されているさまざまな先進的な有機農家の取り組みを横展開する、議員ご指摘のような方法で推し進めることで、有機農業の取り組み拡大を図る。
 技術的な課題の解決も重要になるが、雑草管理のための深水管理の実証、除草ロボットの開発、AIを活用した技術の開発、土壌診断データベースの構築など農薬や肥料に依存しないで生産しやすくする技術開発を進めていくことにしている。
 
わたしの感想
 深水管理による抑草が国会で語られたことは画期的ではないか? 農家に方法を押しつけるのではなく、農民から農民へ、農家が作り出した技術を農家に伝える方法で、既存の技術を生かすことの重要性が語られたことも重要だろう。ただ、今、そうした支援は農家に届いていない。一部の農家が自腹で教えているというのが現状だろう。そうした農家に政府は寄り添えていない。ここは重要であるので、どのように横展開を実現するのか、いすみ市などでの成功例を拡げるために、窓口を作り、必要な財政支援がそうした農家の人たちに届くようなシステムを早急に構築してほしい。
 
 第4問(川田議員)
 既存の技術の横展開はしっかりやってほしい。いすみ市のケースは画期的。今、日本では有機農産物は買いたくても売っていない。売っていたとしても高くて買えない状態。消費者を啓蒙すれば市場が拡がるという状況ではない。世界でもまず公共調達政策で、まず政府が、自治体が有機農産物を買い上げるという政策が有機農業が離陸する上で大きな役割を果たしてきた。日本は有機農場の面積においても面積比においても世界の100位前後という厳しい現状にある。この状況では公共調達政策が大事だと考えるが、農水省の見解は?
 
農水省(安岡審議官)
 学校給食で有機農産物を活用することは、生物多様性の保全などSDGsの達成に貢献することを、児童生徒さらには地域の住民に理解してもらうと共に地域で有機農業を展開する上でも有意義な取り組みの1つであると考える。農水省の調査では全国で92の自治体で実際に学校給食に有機農産物が活用されている。こうした取り組みを拡大していくためには地域で有機農業に取り組む農業者を増やす、さらには学校給食で必要とされる品目や量を安定的に確保・供給できるような産地作りが重要。農水省は自治体が行う有機栽培の技術研修会など産地作りを支援する他、栽培計画、規格、納品方法を調整する打ち合わせ、給食利用に向けた体制作りを支援している。
 今後、有機農業のさらなる拡大が必要なので、学校給食など公共調達における有機食品の利用含めどのような取り組みが必要か検討してまいりたい。
 
わたしの感想
 これまで公共調達についていくら言っても反応なかったのだけど、パブコメで多くの人が日本全国各地から学校給食を有機に、というメッセージが送られたこともあって、かなり前向きな返答になったと言えるのではないか。これは高く評価したい。
 もっともすぐに卵か鶏かの話に変わってしまっており、これでは後ろ向きになってしまいかねない。「有機農家が…」という話にせずに、いすみ市や木更津市の実践をモデルに、まずは“政治が”始めることだ。2030年までに学校給食は〇割有機にするなどという目標を政府が、そして自治体が立てる。まずは目標を立てること。それなしには進まない。
 
 第5問(川田議員)
 有機給食は実現可能である。地方創生の観点からも坂本大臣、ぜひ考えていただきたい。
 有機農業を広めるためには現場での実践と研究が相互に融合していくことが重要だが、有機農業の実践にバイオテクノロジーの研究とは水と油の関係であり、融合させることは不可能だ。みどりの戦略で気候変動や生物多様性の対応のために有機農業の実践を拡げるのであれば、生態系を守るアグロエコロジーという科学が不可欠になる。国連FAOもその方向で動いてきたし、先進国や発展途上国の多くの大学にはアグロエコロジー学科が存在して、多くの学生、研究者が活動しており、有機農業を総合的な科学として深めている。それがさらに大きな政策を可能にしている。
 でも、日本ではアグロエコロジー学科は存在していない。日本では農家の実践のみの状態。日本の有機農業の技術はそれでも世界的に高い水準にあるが、消費者の理解は各国に比べてひじょうに低く、政策の中では1つの技術として扱われ、総合的な戦略になっていない。日本は有機農業のパイオニアであり、世界の模範でもあった。しかし、今やそれが世界の100位前後までに落ち込んでいるのが現実。それには研究の遅れもあるのではないか?
 しかし、農研機構ではアグロエコロジーでも重要な技術が研究されている。「みどりの食料システム戦略」でも言及されているカバークロップも研究されているが、予算がなくなったのか、作られたオンラインデータベースが使えなくなっている。自分の地域でどんな作物にどんなカバークロップがいいかオンラインで調べることが以前はできていた。これでは重要技術の横展開もできない。統合的なアグロエコロジー戦略を作るための研究が不可欠であり、農研機構で行われているカバークロップや土壌の炭素蓄積の研究を生かす戦略が必要。そうした研究を進めることで技術も情報も人材も世界から集まってくる。「みどりの食料システム戦略」で有機農業を強化するためにはそのような研究が必要だと思うが、見解を問う。
 
農水省(河合研究総務官)
 議員のご指摘通り、農研機構は中期長期計画でしっかりやっていく。ご指導お願いします。
 
わたしの感想
 農水省の方は最後、うれしそうに答弁されていたように見受けました。何か希望を感じる反応ではありました。
 
 今の農研機構は「ゲノム編集」などのバイオテクノロジーの方ばっかり強化されていると思うけど、アグロエコロジーをしっかり大きな柱として立てるべきだし、そのためには有機農家と連携取らないとできない。そして大学などでも同様にやっていくことがこの後進国状態を克服する上で重要だと思います。

 全国で地域の食、学校給食の有機化に取り組む人たちと農水省は対話していくことですごい力を生み出せるはず。地域の農家を守る上でも、もっとも効果を上げる方法だと思います。そのきっかけとなるような委員会質疑になったのではないでしょうか?
 川田さん、お疲れさまでした。

参議院 2021年05月14日 地方創生及び消費者問題に関する特別委員会 #04 川田龍平(立憲民主・社民)

(1) 一言説明追加しておくと、このUNFSSは持続可能な開発目標(SDGs)のための会議とされているのだけど、これまで国連の食・農に関する方針は小規模家族農業であり、化学肥料や農薬に依存しないアグロエコロジーを広めることであるにも関わらず、それを無視して、議題も民主的に決めるのではなく、ビル・ゲイツなどの息のかかった人が議長となり、バイテクノロジーやハイテク機器に基づくグローバルな企業農業を押しつけるものだとして昨年から何度も批判してきたが、国連は無視する態度をとり続けたため、これまで国連の農業政策に関わった農民・市民団体はボイコットを宣言している。一人も取り残さないことを重視するSDGsで一人を取り残さないどころか、このボイコットを表明している人びとの総数は3億人を超している。

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