米国で気候危機を回避する議員立法「農業リジリエンス法案」提出

 アースデーに米国では気候危機を回避する上で重要な変化を可能にする農業リジリエンス法案が再提出された(1)。この法案は気候危機に曝される農家を守り、土壌の力を回復させ、農場からの気候変動効果ガスの排出を減らし、2040年にネット排出量ゼロをめざすものだが、単に数値目標だけをめざすよくある法案ではなくて、提案者のチェリー・ピングリー(Chellie Pingree)下院議員(写真左)自身が1970年代からの40年を超える有機農家であることもあって、農家の視点がある法案となっており、有機農業団体はもとより、科学者たちのNGO、米国の行動する科学者連合(Union of Concerned Scientists、UCS)など、多くの団体が賛同を表明している(2)。
 

 法案の内容は異常気象に脅かされる農家とその土地を守るための支援を強化したり、公共種苗・畜産品種改良事業への投資、地域のファーマーズマーケットの強化や、牧草ベースの畜産を支援し、小規模畜産農家のための加工場の新設など、大規模畜産から小規模生産者を守る施策も含まれている。
 
 遺伝子組み換え農業や化学肥料を大量に使う農業によって特に中西部の農場では半分近くの土壌がすでに失われてしまった地域があると言われている。全米中で土壌を守る農業、Regenerative Agriculture(環境再生農業)が大きな注目を浴びる中、この法案が通れば、この草の根の運動を米国政府の政策として大きく全国で進めることになっていく可能性がある。
 
 UCSはこの法案により、農家が健康な土壌を通じて気候危機と闘うことができるようになると賛同を表明している(3)。
 
 UCSはこの法案が通れば、全米中の農家がカバークロップを使うなどして、土壌を破壊する農業から守る農業にシフトできると、その意義を強調する。土はより多くの炭素を蓄え、化学肥料の流出による河川や海、地下水の汚染も減り、洪水や日照りにも強くなるとしてその意義を強調する。
 
 米国と日本では農業のあり方はまったく違いすぎるほど違うが、この法案は日本にとってもきわめて示唆的なものなのではないだろうか? 今後の進展に注目したい。
 


(1) On Earth Day, Rep. Pingree & Senator Heinrich Reintroduce Agriculture Resilience Act
https://pingree.house.gov/news/documentsingle.aspx?DocumentID=3688&fbclid=IwAR2yO85fsvkJo_i51cqjX0DnH5Tbw2uH-RRNN91NiT20dr8Gx18c0D8wZUc

(2) Statements of Support for the Agriculture Resilience Act
https://pingree.house.gov/netzeroagriculture/ara-statements-of-support.htm

Agriculture Resilience Act supports young farmers in fight against the climate crisis
https://www.youngfarmers.org/2020/02/agresilienceact/

RELEASE: AGRICULTURE RESILIENCE ACT DELIVERS BOLD VISION FOR NET ZERO AGRICULTURE
April 22, 2021
https://sustainableagriculture.net/blog/release-ara-delivers-bold-vision-for-net-zero-agriculture/

Ask your members of Congress to help organic farmers by supporting the Agriculture Resilience Act!
https://advocacy.organicconsumers.org/page/17550/action/1

(3) Agriculture Resilience Act Helps Farmers Combat Climate Crisis Through Healthier Soil
https://www.ucsusa.org/about/news/ucs-expert-healthy-soil-key-combat-climate-crisis

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