国連食料システムサミットに反対する世界の学者たち

 ビル・ゲイツの国連乗っ取りに世界の研究者たちがノーのオンライン署名開始。
 今、世界の若者たちが急激に動き出している原因は2つの危機。1つは気候危機、そしてもう1つは生物大量絶滅の危機。どちらも人間の活動が及ぼした結果である。そして、これにもう1つ付け加えるとしたら人間に及びつつある健康の危機だろうか? ガンや糖尿病などの慢性疾患に加え、生殖能力が激減しつつある。生存の危機。これらを作り出す原因の主軸が工業型農業。独占を生み、多くの離農者を生んでいる。社会も壊れ始めている。
 だから国連が小規模家族農家を政策の中心に据えて、工業型農業に代えて生態系を守るアグロエコロジーを採用したことは画期的だった。少なくとも2013年以降、そうした政策は国連の基軸となった。しかし、追い詰められた工業型農業を進める遺伝子組み換え企業、化学企業(以降アグリビジネス)は作戦を練り直し、これまでとは違った企業群を引き連れ、国連の乗っ取り計画を立てる。それが食料システムサミット。SDGsのためと称して、ビル・ゲイツや遺伝子組み換え企業の望む方針を国連に採用させるために、市民組織の発言を封じて9月に開催されようとしている。
 
 気候変動や生物大量絶滅という進行しつつある危機に対して、アグロエコロジーをどれだけ進めるか、今それに集中すべき時期なのに、それとは真逆の方向に進ませようとするこのアグリビジネスによる国連乗っ取り計画、影響は食料システムサミット関係に留まらず、国連の他の機関にも及び始めている。この動きに対して、すでに500を超す市民組織がボイコットを表明しているが、これに科学者たちが加わり、科学者たちによるオンライン署名が始まっている。
 
 なぜ、この食料システムサミットに反対するか、その反対の理由として以下の4つの理由を挙げている。
 
その1
 議題が世界経済フォーラムやビル・ゲイツ、偏った学者によってあらかじめ決められており、これまで国連といっしょに動いてきた市民組織や学者が排除されていること。
その2
 アグロエコロジーや有機農業の役割が無視されて、精密農業、遺伝子組み換え技術、ビッグデータが食料保障の鍵と定義されている。アグロエコロジーが排除され、民間企業が独占する問題をはらむ農業技術によるシナリオに変えられ、結論があらかじめ決まっていること。SDGsのための会議のはずなのに、やることはSDGsの真逆である。
その3
 世界食料危機(2008年前後)を防げなかった反省から市民組織を入れて大きく改組されたのが国連の世界食料保障委員会(Committee on World Food Security)、その下で市民社会と先住民族機構(Civil Society and Indigenous People’s Mechanism、CSM)も作られて、多国籍企業に牛耳られずに農民・市民・先住民族組織の発言が尊重される形で議論が積み重ねられることができるようになり、その中で家族農業支援計画も作られ、進んできた。ところが、この食料システムサミットはそれを完全に無視して、準備が進んでいること。
その4
 このサミットのトップにアグネス・カリバタ(Agnes Kalibata)が据えられたこと。彼女はビル・ゲイツが作ったAGRA(アフリカ緑の革命同盟、Alliance for a Green Revolution in Africa)の議長であり、AGRAはアフリカに遺伝子組み換えやハイブリッド種子、化学肥料、農薬を持ち込むために作られた。つまり、そうした企業がこのサミットの動向を支配し始めている。
 
 このサミットの問題を学者から世界に伝えていくとしてすでに70名近い学者(博士研究員[ポスドク]含む)が署名している。日本からは京都大学のHart N. Feuer氏のみ。日本にもこの問題に懸念を示してくれる良心的な学者はいるはず。ぜひ、そうした学者にこの署名を伝えていただきたい(6月2日追記。6月2日現在、日本を拠点とする7名の研究者が名を連ねている)。
 
 日本にとってはさらに大きな問題がある。というのも今、菅政権は「みどりの食料システム戦略」を掲げて、「ゲノム編集」やRNA農薬などの推進を「みどり」の政策として掲げ、このサミットでその方針を国際的なルールにしようと公言しているからだ(有機農業2050年までに25%も掲げているがこのサミットがターゲットとする2030年の目標は1.575%に過ぎず、農薬削減もリスク換算というごまかしがある)。
 この「みどりの食料システム戦略」→国連食料システムサミットという流れは、今後、世界をさらに危険にする勢力が世界が向かい始めた有機農業・アグロエコロジーをブロックしようとするものであると言わざるをえない。
 
 ごく一部の独占企業の利益のためにハチも人も含む世界の生命を犠牲にする、そんなありえない方向に国連が向かおうとしていることに対して、世界の農民・市民組織はこのサミットをボイコットし、対抗サミットを提案している。この10年の間での最大の危機的な状況になっている。この動きを少しでも多くの人に知らせてほしい。
 
科学者たちによる署名
Scientists Boycott the 2021 UN Food Systems Summit
https://agroecologyresearchaction.org/scientists-boycott-the-2021-un-food-systems-summit/
 
世界の市民組織のサミット・ボイコットの動き
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/5188697724490349

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