みどりの食料システム戦略:パブリックコメント

あれこれ書いていながら僕自身はまだパブコメ送っていません。パブコメをめぐってどんな問題があるのか探ることを優先してきました。実際に送るコメントは相手に影響を与え、採用を考えてもらえる必要があり、書き方は難しいですね。模範的な書き方にはならないですが、僕なりに書いてみました。そして送りました。
 なおここで有機農業と書いてあるのは特定の農法ではなく、アグロエコロジーを念頭に書いています。有機農法か自然農法かと区別するのではなく、慣行農法からアグロエコロジーの理想に近づける方向で考えたいと思っています。


 
 気候変動が激化し、生物大量絶滅の危機が叫ばれ、人類の生存そのものが脅かされ始めています。この原因の大きな部分を占めるのが工業型農業と指摘されています。この危機を克服し、次の世代に生きられる環境を渡すのは私たちの責務であり、国連が宣言したように、この工業型農業を化学肥料や農薬に依存しない有機農業・アグロエコロジーへと転換させることは全世界的な緊急課題です。実際に世界ではこの20年で5.5倍近く、有機市場が拡大していますが、残念ながら日本では低迷を続けています。この事態を変える責任が日本政府にはあります。
 
 今回、「みどりの食料システム戦略」において、有機農業の目標を2050年までに25%と設定したことはその上で重要なことと考えます。しかし、内実を詳しく検討すると、そのための施策は現状の踏襲に留まっており、2030年までの目標はわずか1.575%というきわめて低いものになっています。EUがその時点で25%(オーストリアなどは現地点で20%)を目標としていることから考えると議論にならない低さと言えます。しかもそれを2040年までに新技術を開発して、それ以降に一気に爆発的に増やすというのではもはや現実性、実現可能性に欠きます。
 しかし、現実に日本の中でいくつも成功例があり、それを活用すればはるかに高い成果を上げられるでしょう。千葉県いすみ市は学校給食での有機米実現をめざし、実現しました。その結果、20アールしかなかった有機農地がわずか4年で2000アールと3桁急増したのです。そのためにかかった予算は年間500万円と若干の研修費と聞きます。これは日本の多くの自治体で実現可能な方法です。成功を可能にしたのは自治体による買い上げ、少ない労力で有機農業を可能にする技術的指導があります。この条件があれば、どこでも急速に有機農業を拡げることは可能になります。その条件を整えるのが政府の役割ではないでしょうか。
 
 世界各国での有機農業の進展も千葉県いすみ市や木更津市と同様に学校給食などのための公共調達政策が大きな力を発揮しています。EUの多くの国では公共調達の5割を有機にする目標を立てています。韓国ではすでに多くの地方で学校給食のお米は有機米となっており、ブラジルなどにおいても州レベル、市レベルで同様の動きがあります。こうした政策が有機農業生産の基盤を作り、その発展を可能にしていると言えるでしょう。
 しかし、この戦略にはそれが欠けています。有機農業の発展をもっぱら市場の力で実現させる、そのために消費者を啓蒙するキャンペーンを考えているようですが、消費者からすれば買いたくても売っていない、買おうにも高くて買えない、という状況が続いており、啓蒙されれば買うという状況ではないことは明らかです。国民運動でそれをやると言いますが、結局はそれは国の無為無策であり、消費者に全面的に責任を放り投げるものです。まずは国が有機農産物を買い上げる計画を立て、有機農業の生産基盤を拡大させる必要があります。公共調達目標を含まない有機拡大というのはありえません。2030年までに公共調達有機少なくとも5割達成の目標を立てましょう。
 
 そして、それを可能にする技術支援もまた不可欠な施策です。フランスでは新農業未来法を制定していますが、そこには経済支援だけでなく、技術的な支援も含まれています。
 日本では稲作の場合、戦後、本来の成苗による田植えに変えて、稚苗密植栽培が導入されましたが、これは農薬と化学肥料の使用を前提としたものです。密植によって苗の成長が難しくなるため化学肥料投入が不可欠となり、病虫害も起こりやすく、また未熟な稚苗を使うため、雑草にも負けやすく除草剤の使用も必要になってしまいます。
 しかし、成苗疎植、つまり成熟した苗を1本や2本のみをまばらに植えることにより、病気は減り、成長はしやすくなり、代掻きによる雑草の種をあらかじめ取り除いたり、深水管理によって、生え始めた幼いヒエを浮かしてしまうことで、労力をかけずに効果的に抑草することが可能になります。
 さらに稚苗だと田植えは早めに行う必要が出ますので、小麦などとの二毛作が現実的に不可能になりますが、成苗を使う場合は田植えは6月の梅雨時にできるので、二毛作も地域によっては可能となり、自給率も有機率も一気に高まります。そして大豆との輪作を行うことで化学肥料に依存しない有機のサイクルが完成できます。これは民間稲作研究所がまとめた技術体系の例ですが、こうした技術を学ぶことで持続可能な規模に経営を拡げることが可能になります。
 もっとも、この方法を活用するためには一本植えできる田植機の導入や耕運機による代掻き・深水管理によって稲の生育に影響を与える草を押さえる技術を研修する必要があり、個々の農家で取り組むことには困難があります。ですからいすみ市や木更津市のように自治体が支援することが決定的に重要になります。木更津市では一本植えのための田植機や播種機を貸し出し、農家の負担を大きく減らしています。このような支援政策があれば、有機農業は急速に拡大させることは可能なのです。
 
 以下、取り上げる必要のある施策を述べます。
 
● 有機農業の基盤を拡大させる上での推進力となる公共調達政策を打ち立てること。2030年までに公共調達における有機農産物の比率を少なくとも50%に。地方自治体の学校給食の費用を国が負担する(学校給食を無償化する)。
 
● 有機の生産技術に必要な研修、機材の導入の支援を行う。
 
● 有機の種苗を提供するための体制の整備。種苗生産に関わる生産者を所得保障などで安定的生産が可能になるようにする。
 
● 地域の有機農家が守ってきている在来種の種苗を守るための策を地方自治体を通じて実現すること。そうした種苗を地域で、そして他の地域でも活用できるように活用できる体制を構築すること

● 新規就農者のみではなく、既存の慣行農業実践農家が有機農業転換する場合にも所得保障をしっかり行い、転換に伴うリスク軽減を行うこと
 
● 食の政策はトップダウンでは機能せず、ボトムアップが不可欠である。地方自治体で、住民参加により、食料政策協議会あるいはローカルフード委員会を組織し、その地域の食の政策を形成する
 
● 小規模ロットを受け付ける小麦の製粉場などがないと、地域で小麦の生産を拡大させることはできない。そうした製粉場の設立、運営も地域の食料政策で構想し、支援し、実現していく必要がある(地域の民間企業との連携なども重要になる)。
 
● これまで有機農業研究、実践を積み重ねてきた農民団体の経験を全国的に拡げる必要があり、単なる技術に留まらず、それを政策に実現させていくために、協議会を横断的に作り、市民組織の参加の下で計画策定、施策実施、その評価ができる仕組みを構築すること
 
● 食が原因となる慢性疾患が世界で注目されている。食の政策において、そうした医療、福祉、教育関係者、栄養士、料理研究家など領域を超えた検討が不可欠になっている。そうした人びとが地域の食料政策に関われるように協議会を運営していくことが必要になる。また環境政策として、生態系に関わる専門家の協力も必要である
 
● 政策決定において、ジェンダー的なバランスが重要になる。世界的に見ても食の向上において、女性が果たしている役割はきわめて大きい。ジェンダーの多様性の容認、平等は農業・食の産業の発展に欠かすことはできない。ジェンダーの観点から常にチェックをすることが不可欠である
 
● 化学肥料の影響をなくしていくこと。大豆や緑肥・カバークロップの活用を進め、また有機畜産との複合を拡大し、有機に限らず、慣行栽培においても化学肥料の使用を大幅に減らし、土壌の回復、水資源の汚染から環境を守ること
 
● 「ゲノム編集」の種苗は規制すること。有機の種苗と交雑してしまえば有機農業は成り立たなくなる。「ゲノム編集」種苗に関する厳重な規制を実現すること。表示なく、種苗が流通しないように早急に手を打つこと。種苗に遺伝子操作の有無の表示を義務化すること。知らないうちに地域で「ゲノム編集」の栽培が始まらないように規制を早急に行うこと。「みどり」の戦略の中で「ゲノム編集」の開発を行うことをやめ、戦略の中から削除すること
 
● 化学農薬の影響をなくすことが必要。これまでの化学農薬の評価には致命的な欠陥が存在した。細胞の中に浸透できない単体の純粋な主成分のみで安全性が評価され、その危険性がまったく評価されないままに流通させられてきた。実際に使用される条件で再評価を行い、規制を早急に行うこと
 
● RNA農薬についてはすでに化学農薬以上の危険が指摘されており、それが「みどり」という名前でついた戦略で推し進められることには根本的に受け入れられない。RNA農薬については「みどり」の戦略からは削除すること
 
● 有機農業とは両立しえない、有機農業を脅かすバイオテクノロジーの応用が「みどり」の戦略に入れられることは完全に矛盾しており、削除すべきである
 
● 地域の食の循環を強化することが重要になる。予算・権限を大幅に地方自治体に与え、地方自治体が地域の有機の食の循環を作り出せる政策を長期的に実行できるように現在の法制度を変更すべきである
 
● 気候変動を止めるためにカーボンゼロを実現しなければならないが、原発再稼働はありえない。東電原発事故によって、多くの農家が農地を失った。この脅威をなくすためにも原発は全廃すべきである。そして代わりに小規模水力発電を農村で活用することが可能である。近年開発された小規模水力発電は環境を破壊することなく、安価で、建設期間も短く、効率的に発電が可能になっているものが現れている。農村は食料だけでなくエネルギーを生む地域に変えることができる。山がちの農地の多い日本の農村には多くの地域で活用できる技術であり、普及すべきである
 
● 今、世界では小規模家族農家の支援、化学肥料や農薬に依存しないアグロエコロジーを進めることが圧倒的な人びとによって支持されている。その政策をこれまで日本政府も支持すると表明してきた。今、日本の各地で学校給食の有機化を求める声が高まっている。それこそが国内外の世論である。
 一方、ごく一部の企業はバイオテクノロジーの活用を全世界的に進めようとしているが、世界の市民はそれに反対している。日本国内でも同様である。
 日本政府はこのような中で、ごく一部の企業の利益に基づいた戦略を国連で主張するとしたら、それは世論、民主主義の原則に反した背信行為となる。民主主義の原則に基づき、そのような行動はしないことを強く求め、国連総会が決定した家族農業の10年、アグロエコロジー推進をさらに進める方向で関与することを要求する。
 
 以上


 
パブコメはこちらから
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550003303&Mode=0

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