内分泌撹乱物質規制をめぐる世界のバトル

 不妊というと日本では未だに女性のせいにされることがあるかもしれないけれども、女性以上に男性の精子に大きな変化が起きていることは、日本でも少なからぬ人が知るようになってきた。
 精子が減っている(質も悪化している)という事実はかなり前からも知られていて、繰り返し警告されてきた。40年ほどの間に先進国の多くで精子の数は半分に減っていることがすでに知られている。でもその警告がいつの間にか消されてしまう。なぜか? 農薬や生活にあふれる化学物質規制の問題になる。化学企業が猛烈なロビー活動でこの話を潰してしまう。
 
 以前、この議論は日本では「環境ホルモン」の問題として語られた。内分泌撹乱物質(Endocrine disrupting chemicals、EDC)のことを指す。この問題を解決するには化学企業が作る製品を禁止する必要が出てくる。日本では、この「環境ホルモン」問題に組織的な情報操作が行われた結果、いつの間にか日本では「環境ホルモンは一時騒がれたけど、実際には大したことなかった」かのように思わせられる状況が作られてしまった(複数の知人がそう語ったことに愕然とした記憶がある)。でも、それは特殊日本国内の話。世界ではこのEDC問題は熱い問題で国際機関でも規制をめぐってバトルが今日も続けられている。
 
 だから今回の疫学者のシャンナ・スワン(Shanna Swan)氏の『Count Down』の警告も出るべくして出たものと言えるけれども、その深刻さ、「このままでは数年のうちに実質的に無精子の男性が主流になる」という警告はさすがにショックも大きい。でもスワン氏はパニックになるなと呼びかける。解決策はある。
 
 有機食品の食を食べ、生活の中の危険な化学物質を減らしていくことで、精子の状態は改善するという。食を有機にすることで回復は期待できるとスワン氏は末尾に掲げたGQのインタビューで言う。食を有機にする理由がまた1つ増えたかもしれない。
 
 軍事基地から内分泌撹乱物質であるPFASが流され、市民が口にする飲料水に入ってしまうなどとんでもない話だが、沖縄や東京の米軍基地周辺で実際に起きている。そうしたものを止めさせることも大事だし、プラスチック製品やさまざまな包装でも使われている内分泌撹乱物質を使わないようにしていくこと、そうすれば改善していくだろう。日本ではこうした情報が伝わる上で大きな困難があるけれども、今後の子どもたちの未来を考えれば言ってられない。
 
An Alarming Decline in Sperm Quality Could Threaten the Future of the Human Race, and the Chemicals Likely Responsible Are Everywhere
https://www.gq.com/story/shanna-swan-interview

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