イタリアとインドでの多国籍アグリビジネスとの闘い

 たまには朗報! 世界で新型コロナウイルスの問題で大騒動の中、とっても問題な動きが同時に進行しつつある。 

 壁にぶち当たった遺伝子組み換え農業の行き詰まりを突破するために「ゲノム編集」作物をまったく規制せずに栽培・流通させると同時に農家の種苗の自由を奪っていく動き。バイエル(旧モンサント)はそのために巨額のお金をつぎ込んで、各国政府に圧力を加えている。

 たとえばその動きが現れたのはBrexitでEUから離脱した英国。EUのバイオテクノロジーに対する厳しい規制をBrexitの機会を使って一気になくそうということで今、英国で「ゲノム編集」の規制緩和が行われようとしている(1)。「ゲノム編集」食品を無規制で流通させるだけではない。従来の遺伝子組み換え作物も規制緩和させようとしている。英国だけではない。アフリカのケニアでもその動きは進んでいる(2)。イタリアでもその動きが激しくなった。でもイタリアでは多くの農業団体、環境団体、市民団体が協力してそのバイオテクノロジー企業の意図を挫いた(3)。タンザニアでも計画されていた遺伝子組み換え作物の栽培実験が農家に与える影響を憂慮して中止となった(4)。

 インドでは最低価格保証などをつぶして、農業生産・流通を近代化させる、とする農業3法が成立した。この3法が施行されると巨大企業が自由に農業を支配していき、小規模農家は生きていけなくなるとして、インド全土で巨大な反対運動が組織され、世界中にもその様子が放映された(日本でも放映されただろうか?)。世界中の農民組織、市民組織が連帯メッセージを送り、この運動は大きなものとして注目されている(5)。インドの農民たちは巨大な反対運動を構築し、3法が撤回されるまで闘うとしたが政府は全然譲ろうとしない。そしてついに最高裁が仲裁に入ることになった(6)。
 
 インドの闘いもイタリアの闘いも大きな意義を持っている。社会の生存の基盤である農業を多国籍企業などの大きな企業の営利の源泉に変えていこうという動きは今や世界に同時進行している。この動きは農業の工業化、自然破壊を進め、気候変動、生物絶滅の危機を大きなものにしていく危惧がある。そんな危機に対して、農民組織だけでなく、環境運動も入って、大きな社会的な反対運動が組まれている。この動きには将来につながる重要なものになっていくだろう。

 一方、日本でも同様のプロセスが進みつつある。種子法廃止、農業競争力強化支援法、種苗法改正、「ゲノム編集」作物の登場と規制緩和、さらには農産物検査規格の見直し(農産物検査法改正?)といった一連の動きだ。インドやイタリアのような動きがなかなか日本で生まれてこない。

 農水省は改正種苗法について北海道から沖縄まで各地で1月下旬から2月初旬に説明会を開くとしている(7)。しかし、このコロナ状況で危険をおかしてまでするべきことなのだろうか? オンラインもあるのだが、これはオンラインでやればいいというものではない。やはり対話が大事だろう。でも各地の会場の参加人数はわずか。施行を延期すべきなのではないだろうか? 本日から種苗法改正に伴うパブリックコメントも始まった(8)。今回のパブリックコメントは一番問題になる自家増殖に関わる条文の実施が来年2022年4月となっていることもあって、全体像が見えにくいものとなってしまっている。

 なぜ、日本では海外のような動きになっていかないのだろうか? それは分断されているからだ。農民の中での分断、消費者との分断、全体像がなかなか共有されない。でも、この動きは海外の動きとつながっている。
 どうすれば世界に逆行するのではなく、このような世界のポジティブな動きと共に進めるように変わることができるのか? 以前、日本はその先頭に立っていたこともある。しかし、ここ数十年の政治によって、壊されてしまい、今では逆行を止めることが難しくなってしまっている。なんとか知恵を出し合って、大きな方向転換を図っていく必要があると思う。

(1) Don’t hide 英国での遺伝子組み換え、「ゲノム編集」の規制緩和に反対するオンライン署名
https://donthide.gmfreeze.org/

(2) Push back against risky and unsafe RNAi GM cassava cultivation in Kenya
https://www.acbio.org.za/en/push-back-against-risky-and-unsafe-rnai-gm-cassava-cultivation-kenya

(3) Environmental and Farmers Organizations in Italy Stop Government Attempt to Give Green Light to GMOs and NBTs
https://navdanyainternational.org/environmental-and-farmers-organizations-in-italy-stop-government-attempt-to-give-green-light-to-gmos-and-nbts/

(4) Ministry cancels GMO seed trial
https://www.ippmedia.com/en/news/ministry-cancels-gmo-seed-trials

(5) Indian Farmers’ Protests: Farmers around the world send messages of solidarity and support
https://viacampesina.org/en/indian-farmers-protests-farmers-around-the-world-send-messages-of-solidarity-and-support/

(6) India’s Supreme Court stays implementation of new farm laws
https://www.aljazeera.com/news/2021/1/12/indias-supreme-court-stays-implementation-of-new-farm-laws

(7) 改正種苗法全国Web説明会の開催について
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/zenkoku.html

(8) 種苗法の一部を改正する法律の施行に伴う農林水産省関係省令の整備に関する省令に関するパブリックコメント
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550003248&Mode=0

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