種苗法改正後の企業的食のシステムをどう止める?

 種苗法改正で米がどう変わってしまうか、と書いたシナリオ、唐突に思われた方も多いかもしれない。しかし、すでに稲の登録品種を作る企業や米卸の大手には添付した図のようなビジネスモデルが作られている。
 どちらもタネで農家(農業法人)を囲い込み、収穫は全量買い取りするというもの。特に最初の例では、ライセンス契約で化学肥料、農薬の使用についても規定されるので、独立した生産者との関係というよりも、委託生産、委託労働という要素が強くなってしまう。無農薬で作ってしまっては契約違反になってしまう。

 もっとも、現在ではこれはコンビニの弁当やおにぎりのお米など業務米だけで行われているもので、生産者も大規模農家が経営の多角化のために部分的にやっている例が多いようだ。だから民間企業のビジネスに農家がすぐに雁字搦めになってしまうというわけではないだろう。今なお、日本全体の中でもその生産量が占める割合はまだわずかしかない。種子法廃止で民間参入が進むかと思ったら、まだ進んでいないというのが現実だろう。というのも業務米は単価も安く、民間企業の種子の価格は高いので、一般の農家にとっては魅力がないから。今は地方自治体が作る品種が人気が高く、それが安くいい品質で作られ続けているうちは、民間企業には大きなチャンスはない。
 でも、もし地方自治体の主要事業が衰えたらどうなるか? 実際にこの10年で地方自治体が作る新品種の数は半分以下に減ってしまっている。すでにその動きは始まっている。農業競争力強化支援法は地方自治体の公的種苗事業に大きな制約となりつつある。地方自治体から人材が失われてしまえば、もう取り戻すことは難しい。
 もっとも地方自治体の公的種苗事業が理想だったとはいえない。むしろ、多様な在来種が持つ可能性を遮るものだという批判も存在する。だから単に昔に戻せ、ということにはならない。古いものに戻るのではなく、古い制度が持っていた問題点を解決しながら、新たな公共、人びとの公共空間を再構築しなければならない。その成否の鍵を握るのは市民の参加だろう。
 
 米の流通を扱う米卸企業の動向で日本農業新聞はこう締めくくる。

 “生産基盤の弱体化で、将来的に産地が国内需要を満たす米を生産できなくなり、米の集荷競争が激化するとの見方が一部にある。米卸各社の動きの背景には「種子の供給を通じて今から産地を囲い込んでおきたい」(西日本の米卸)との狙いもあるとみられる。”
https://www.agrinews.co.jp/52495?page=2

 わたしたちに生きる力を与える食が民間企業によって囲い込まれる未来をどう考えればいいだろうか? 種子を自分たちの手の届く範囲で管理できなくなれば、もはや民主的な社会は築けなくなるだろう。
 地方での公的種苗事業、農家が守ってきた在来種が果たしてきた役割、これから果たすであろう役割を今一度、地域の人びとが再確認しなければいけない時に来ているのではないだろうか?

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