ローカルフード育成支援条例/法制定に向けて

 種苗法改正案可決ということで今後どうすればいいだろう。まったく合理的根拠もない法改正なのだから、無効を訴えたり、法の変更を求めることは必要だが、一方で、施行に対しての準備もしなければならない。
 たとえば、特に公共種苗の許諾料を課さない(あるいはそもそも許諾を求めさせない)ことを求めるなどの要求も必要になるかもしれない。ここでは一度、全体の流れを考えてみたい。

 日本政府はここ近年、大企業の利益を優先する施策のラッシュ。種子関連でも民間企業の投資意欲を高めるため、として種子法は廃止され、民間活力を引き出すとして農業競争力強化支援法が作られ、種苗企業の力を強める種苗法改正が行われている。
 この中で農家が守ってきた在来種の種苗に加え、地方自治体が行ってきた公的種苗事業が今後の攻撃の標的になっていくだろう。安くて優良な品種が多くあれば、民間企業が利益を上げることは難しいからだ。コシヒカリ、ササニシキなど日本を代表する多くの稲の品種は地方自治体が開発したもの。しかし、そもそも地域の農業を支えるために行われてきた公的種苗事業は利潤を上げることを目的としていないし、利潤を求める民間企業と同じ条件で市場競争させられれば、衰退を余儀なくされてしまうだろう。

 農水省はイノベーション戦略2020で中長期の種苗事業のロードマップを描いているが、産官学のバイオ研究で開発した新品種を民間企業が商品化するという筋書きになっている。地方自治体の農業試験場は儲からない基礎研究や実験場に位置づけられるか、廃止を余儀なくされるものも出てくるかもしれない。これまではこの農業試験場こそが日本を代表する品種を開発してきた。しかし、この政府の戦略ではその姿を見出すことができず、せいぜい民間企業の手足になってしまっている。新品種開発の中心は民間企業に代わり、その目的は農家や消費者のためではなく、民間企業の利潤となるだろう。新品種開発の主体は農研機構を中心とする国や大学・企業の研究機関に移り、その開発方法も従来の品種改良ではなく、バイオテクノロジーが幅を効かし、「ゲノム編集」も使われていく可能性が高い。地域の発展のために品種開発されていた時代は終わりを告げてしまうのだろうか? それは日本の食の安全の終わりであり、多様性のある地域の食文化の終わりにもなってしまうかもしれない。この流れを変えるためには何が必要だろうか?

 種苗法改正案に賛成した国民民主党の舟山康江議員は国や地方自治体の種苗の知見を民間企業に移行させるという農業競争力強化支援法8条4項や、種子法廃止によって地方自治体の種苗事業の財源の法的根拠がなくなったことを問題視し、8条4項の撤廃と農研機構や地方自治体の種苗事業への予算の確保するための新法の必要性を訴える。しかし、8条4項の削除はいいとしても、予算を確保すればこの流れを変える有効な手立てとなるだろうか?
 むしろ、舟山議員の提案はこの国のイノベーション戦略2020の後押しになってしまうのではないだろうか? バイオ技術を使った新品種開発研究のためには多くの予算がいる。この法案が成立すれば農水省も大助かりだろう。基礎研究を農研機構や農業試験場が行い、新品種は民間企業が作っていく体制が強化できる。現在の農研機構の理事長は三菱電機、理事には三菱ケミカルや住友化学出身者が名を連ねており、民間企業と政府機関との回転ドア(寡占企業と政府の間で相互の組織を同じ人間が代わり代わりに担う)が回り始めている。ここに予算をただ注ぎ込むことは、わたしたちの食の権利を守ることにつながるどころか、民間企業を利するだけではないか。ここでは地域の農家や消費者も地方自治体の存在も素通りになる。
 
 この流れを変えるためには何が一番必要か? やはりここで取り戻さなければならないのは何より農家や消費者の決定権であり、地方自治であると思う。国から始まるのではなく、逆に農家、消費者、地域、地方から始める必要がある。その鍵を握るのは市町村だろう。市町村で地域の食・ローカルフードを守る条例を作ることが考えられないだろうか?
 可能な限り、地域で育てられた種苗を使って育てた農作物を学校給食や地域の食に活用していく。地域の在来種を保全し、活用する。地域での新品種育成や種苗の増殖、種採りを支援する。化学肥料や農薬の使用を可能なかぎり抑え、「ゲノム編集」を含む遺伝子組み換え作物は厳重に規制する。さらに地方自治体が開発した公共品種を公共財産として守っていく。地域の住民の健康や地域の環境を守る食を作るために住民参加で政策を作る協議会ができれば常に新たな住民のニーズを取り込んでいくことができる。
 都市部の自治体であれば農村部の自治体と提携する必要があるだろう。行政の区割りにとらわれずにできるだけ近い地域の提携を高め、広域での食料自給率を高めることも必要になるだろう(原発事故や産業事故による汚染が厳しい地域は汚染のより低い地域と提携する必要があるかもしれない)。
 すでに類似する条例を持っているところは欠けているところを補うだけでいい。すべてをやろうと思うと難しいかもしれないが、鍵となる部分を実現するのはそう実現が困難なものではないだろう。
 ここで鍵となるのが参加型の仕組みの導入。選挙したらそれでお終い、後は行政に任せるということでは食のシステムはいつの間にか企業本位に変わっていってしまう。農家、消費者が参加して、決定権を行使していけるような仕組みができればそれを変えられる。米国やカナダでは200を超える自治体で食料政策協議会が作られているという。韓国でも多くの自治体で住民参加によるローカルフード委員会が作られていると聞く。これが人びとの決定権を甦らせる。
 もっとも市町村の力だけでは困難な部分もある。公的種苗事業は都道府県単位なので、そのレベルでも同様に動かしていかなければならないし、都道府県も財源含めて動くための基盤が必要だが、その部分は国の財政支援が必要になる。でも、こうした自治体が増えれば国を動かすことも容易となる。

 ちょっと荷が重い? まずすぐ個人でできることには何がある? では、こんなことをやってみてはどうだろう?

 まず個人でローカルフード宣言をする。できる限り、地域の種苗から作られた採られた農産物を地域の農家から買って農家を支援する、できるだけ化学肥料や農薬を使わない、環境に配慮したものを買うことを消費者として宣言する。グループ、組合でできればもっと力になる。そうした個人・グループが増えれば、幼稚園、保育園、子ども食堂などでもそうした食を実現できるし、スーパーでそうした食材のコーナーを作り出せるかもしれない。
 地方自治体で宣言できればさらに大きな一歩となる。地方議会選挙や地方首長選挙で食に関心のある人が選ばれれば自治体での取り組みは一挙に進み、学校給食も変えていけるかもしれない。そして、国政レベルでも同時並行で働きかける。国でもローカルフード支援法/在来種保全・活用法を実現させ、自治体での取り組みを支援することができる。
 今、全国で多くの人たちがかつてない規模でこの問題の重要性に気がつき始めている。地域で声をあげることで、その地域の多くの人に伝わっていくだろう。プライバシーに配慮しながらそうした声をお互いに可視化できるオンラインツールがあれば地域の種苗と食を守る動きを加速できる。こうした動きを同時並行的に全国で広げていく。今ならばこうしたことは十分可能になってきていると考えるのだけれども、いかがだろう?

 12月9日にWebでローカルフードをテーマとした会議があるという。ローカルフードを重視する運動は今、世界中に同時多発的に進行中。成果をあげている。日本でも!

“ローカルフード育成支援条例/法制定に向けて” への1件の返信

  1. 種苗法改定反対し、種子条例制定の署名活動をして身にしみて感じたことは、県民(国民)のほとんどが知らない、関心がない、分からないという事でした。県会議員も知らない。説明しても大変なことだと反応する人は関わった中で片手に満たない数でした。私の下手な説明や足りない知識の為でもあります。農薬、ゲノム、テレビで報じないので猶更なのでしょう。印鑰さんには本当に感謝です。コープ自然派のズームイベントでもお話を聞かせて頂きました。印鑰さんのような方が今の日本にいらっしゃることは奇跡に思えます。でもみんながぶら下がっているようで、大変な重荷を背負わせている気がします。もっと国民の意識が変わらないと何も変えられない、意識変わるのかなと思うこの頃です。けれど何もしないでは居られない、印鑰さんのブログ読ませて頂き少しでも知識を増やします。

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