審議で明らかになった種苗法改正案の10の問題

 本日、種苗法改正案、参議院本会議で可決で成立へ。本会議では賛成討論も反対討論も行われず、その所要時間たった2分40秒ほど。虚偽のデータを元に法案が説明され、質疑にも虚偽答弁、正確な現実がどうなっているのか、まともな弁明もないまま成立させられたことになる。農水省・政府による虚偽の説明、答弁の責任は問われることもなく。

この間の答弁(わずか衆参合わせて10時間20分)で問題となった部分をざっと箇条書きで書いてみよう。

1. 立法の根拠が不明
(その1、自家増殖ができるから、海外に流出する、その2、自家増殖できるから新品種が増えない。どちらも根拠なし)

2. 法改正による影響の見積りを過小に見積もる
(登録品種の占める割合は農水省が説明するよりもずっと多い。農水省が農家の自家増殖の実態を把握していない。これではどれだけ法改正で農家に影響が出るかはっきりわからない。信頼できる数字を出していないので、その説明が信頼できず、その数でいくら説明されても誰も納得できない。)

3. 自家増殖の許諾に関する明確な規定がない
(その1、許諾が得られなければ自家増殖禁止になるが、そうなるケースは今後増えることが予想されるが、それを防ぐ手立てがない。その2、許諾料は市場原理が働くから極端に高くならないだろうという希望的観測のみ。独占されれば市場原理は働かない。現に農研機構の種苗は農研機構が独立行政法人化した後、上昇してしまっている)。

4. 育成者権だけを強化して農家の権利とのバランスが失われる。農家の負担が増えることは事実
(ようやく最後に認めたが、登録品種の種苗を自家増殖する農家の負担は増えることは確実。バランスを保つための施策がまったくない。離農者が増えれば育成者にとってもかえってマイナスになる)。

5. 日本での新品種開発はこの10年間、停滞を続けているが、それを打開するための方策が示されていない
(新品種開発のための予算、人材の確保、種苗を買う農家の数、すべてにおいて今後の見込みが厳しい。ただし「ゲノム編集」だけは予算が付けられる。果たしてそれが地域が、農家が、消費者が望んでいるものか、といえば完全に否定的だが、農水省の戦略では柱に据えられている。このままではこれまでの日本の地域の食を支えてきた地方自治体の種苗事業がさらに衰退することを危惧せざるをえない)。

6. 在来種などへの悪影響を防ぐ手立てが用意されていない
(特性表を用いて農水省が登録品種との関係を推定する制度が作られるが、登録品種との比較のみ。登録品種のみが保護され、在来種を共有財産として守る法制度が存在していない限り、バランスが取れるとはいえない)

7. 有機農家が有機農業に適した種子を得るための自家増殖は不可欠であるにも関わらず、有機農業への例外を認めることはできないの1点張りで、結局、日本の有機農業はこの種苗法改正によってさらなる重荷を担わされることになった
(政府は一般品種があるからいい、というが、登録品種が占める割合は大きく、それを除外することで有機農業の選択の範囲を著しく制限することになる)。

8. 今回の種苗法改正と同様の法律を持つのはイスラエルのみであり、これは農家の多様なあり方を妨げ、農家への監視をもたらす。
 
 今回の短い審議では十分詰められたわけではないが、これ以外にもさまざまな問題が存在する。たとえば
 
9. 「ゲノム編集」種苗の表示制度がない
(「ゲノム編集」作物の危険性はすでに指摘されており、EU、ニュージーランドなどは表示の対象としているにも関わらず、日本では区別できなくなる。日本の農作物への信用を失わせるものである)

10. 食料保障という観点の欠如
 育成者の知的財産権を守ることは大事なことだが、この育成者権は不可侵の絶対的な権利ではない。オーストラリア政府知財局は農家の自家増殖の権利は長年培われたものであり、育成者権が絶対ではないとして、たとえば種苗が得られないケース(育成者側が提供できない場合)など自家増殖が認められると明確に規定している(1)。
 つまり、食料保障>育成者権なのだ。食料保障は育成者権に優先されなければならない。これはきわめて憲法で保障された生存権にも関わる重要な原則であるべきはずだが、種苗法第21条2,3項が削除されることによって、日本では存在しなくなってしまった(2)。これは憲法違反と言わざるを得ないのではないだろうか? 致命的であり、即刻修正すべきものである。

 来年4月施行までにこれらの問題を再び、次期通常国会で見直すことを求めて行きたい。本来、種苗は農家が歴史的に作り出してきた共有財産。新品種育成者が育成者権を持つのは理解するとしても農家はいわば種苗という本の共著者であり、その権利を無視した種苗法は歴史を無視したものと言わざるを得ない。農業の根幹を成す種採りという行為を抑制することは農業の未来を危うくする。

 また、種苗法改正論議の枠内では到底対応できない問題がある。地域の食をどう守り、どう発展させていくか、それはこれまでの議論の枠内では解決が困難だろう。
 こちらの方は新しい提案として別途、まとめたいと思う。UPOV体制は寡占化と農業多様性の損失をもたらすとして、新しい種苗のあり方について第三世界中心に議論が起きている。それらに噛み合う議論を日本からもしていきたい。

 まずは今回の種苗法改正案が持つ問題を確認して、前に進みたい。

衆議院農林水産委員会質疑の中継

————————
参考
(1) オーストラリア政府知財局 IP Australia Farm Saved Seeds
https://www.ipaustralia.gov.au/plant-breeders-rights/understanding-pbr/pbr-detail/farm-saved-seed

(2) 現行種苗法では第28条で登録品種の利用ができない場合は育成者と協議する、応じない場合は農水相が裁定するという規定があるが、これは2年以上継続して利用できない場合に限られ、食料保障はこれでは満たすことができない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です