窮地に落ち込む地域の種苗の状況を解決しない種苗法改正

 明日、種苗法改正案、参議院農林水産委員会で審議される。法改正案の説明はデタラメであることは衆議院の農林水産委員会でも明らかにしたところ。農水省からはそれへの反論すらなかった。無視して採決。

 さて、それではこの法改正は農水省が言うように、日本の新品種開発力を上げて、日本の農業を栄えさせるものになるだろうか? 残念ながら、なりようがない。

 その現実を見つめた報道がある。
毎日新聞 タネがなくなる日 <上>「中国から種が届きません」海外依存、コロナでリスク なぜ国内生産先細り?

 日本の地域で種が作れない。タネをつくる人材も、圃場も維持できない状態が生まれている。今回の法改正はその現実には何も手を差し伸べない。
 なぜか? 政府の考えているのはそうした地域の種苗を強化することではなく、ごく一部の民間企業が種苗から流通まで握る体制を作ることだからだ。実際にそうした動きは進みつつある。住友化学がライセンス契約に基づき、種子・化学肥料・農薬をセットで売り、全量買い上げで、種苗から流通まで握るビジネスモデルを作っている。そして、米卸の大手も種苗から流通までを手掛け始める。

日本農業新聞 米卸、種もみ供給着手 取引安定へ 全量集荷、販売まで一貫

 これまでコシヒカリやササニシキなど地方自治体がその地域にあった品種を開発し、広く地域の農業に提供してきた。しかし、この住友化学や米卸のビジネスモデルの中に、地方自治体の姿は存在しない。

 そして年始年末に政府はこれまで地方自治体が決定してきた稲の産地品種銘柄の制度をなくし、全国統一銘柄にしてしまう規制改革推進会議の提言の検討会を持つ予定だという。全国統一銘柄になってしまえば、地方自治体の銘柄決定権は事実上なくなってしまう。これではいくら種子条例を作っても、それだけでは地方自治体を中心とする種苗事業は崩れてしまいかねない。

 公共品種を支える基盤が掘り崩されようとしている。民間企業の品種に変わっていけば、種苗から流通まで企業が主導権を握る世界へと変わっていく。生産者、消費者の食の決定権、食料主権は形骸化し、企業が提供するものを生産し、消費するだけのものに変えられていくだろう。日本で食料保障の最後の砦となっていた稲が崩されてしまう。

 これが種子法廃止→農業競争力強化支援法→種苗法改正(→農産物検査法改正[これはこれから])に至る一連の法改正がめざす狙いだろう。

 この動きを許すことはできない。こうなってしまえば、もはやこの世界には農民も市民もいなくなる。企業の委託労働者とその生産物を押しつけられる奴隷になってしまう。食文化も骨抜きになる。種子を奪われればもはや民主的な社会を作ることはできない。

 この動きにどう対抗できるか? 食の決定権をどう取り戻すか? 種子を取り戻すことで食を取り戻す、タネの自由運動が不可欠なものとなる。押しつけられるグローバルな食ではなく、ローカルな食を取り戻す。それは自立した地域を作り直す過程でもある。そのためのタネの自由運動が必要だ(後日へ続く)。

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