スクラップされる遺伝子組み換え種子、遺伝子資源としては無価値

 モンサント(現バイエル)などが開発した多数の遺伝子組み換えトウモロコシ、コットンの品種をスクラップにすることが検討されている(1)。いわゆるBtコーン、Btコットンと言われる遺伝子組み換えで、害虫を殺すBt毒素のタンパクを作り出す遺伝子組み換えをした品種。
 このBtコーンは花粉から実や茎、根にいたるすべての細胞でこの毒素を作り出す。この毒素があるから殺虫剤はいらない、だから環境にもいいとして宣伝された。しかし、Bt毒素が土壌微生物に影響を与え、家畜や人間の腸内環境を破壊している可能性が指摘もされ、環境や健康への影響を与えていることが危惧されている。
 そして、その売り文句だった殺虫剤がいらない、がもう通じなくなった。実際に使われる殺虫剤の量は導入当初は減ったが後に増加に転じた。なんのために遺伝子組み換えを導入したのかわからない事態に陥った。タネが高いだけ。
 こうやって作られた多数の品種はもはや何の意味もない。これがコシヒカリだったら、貴重な遺伝資源として後世に受け継がれるだろうが、遺伝子組み換え作物の場合はスクラップするしかない。殺虫能力を失った殺虫剤入り遺伝子組み換え作物なんてまったく無意味な代物だから。たぶん、このスクラップリストにラウンドアップ(グリホサート)耐性遺伝子組み換えも入ってくるだろう。ラウンドアップをかけても枯れない雑草がいっぱい出てしまっている中で、意味を失うからだ。
 
 本当に守るべき遺伝資源である在来種が消えていく。そして、遺伝子組み換え企業が作り出すほとんど将来的な価値のない品種ばかりが市場を独占してきた。ようやく陰りが見えてきたが、新たな遺伝子操作技術である「ゲノム編集」作物がとって代えていこうとするだろう。「ゲノム編集」作物では遺伝子を破壊することによって新品種を作る。機能を破壊され、バランスを崩された生物は生命力に大きなハンディを負うことになるだろう。結局、Btコーンと同様にスクラップされる運命ではないだろうか?
 その時、元の自然な遺伝子が残っているタネが残っていればいい。もし、残っていなければわれわれはスクラップを永久に食べていかなければならなくなる。本当の価値のあるものが何なのか、見失えば、未来はどうなるか、想像してみればいい。
 
 今、世界で多様な在来品種を守ろうとする動きが高まっている。ヨーロッパではヨーロッパの在来品種、新品種だがパブリックドメインとされて独占されていない品種を守ることを目的としたネットワークが生まれている(2)。すでに2万4000種が共有されているという。
 
 今、日本では種苗法を変えて、知的財産権を強化しようとしている。その知的財産権の頂点に君臨してきた遺伝子組み換え企業の品種が今、スクラップとなろうとしている。果たして、わたしたちは何を守るべきなのか、問い直すべきだろう。農水省・政府が提案する方向が果たして正しいか、真剣に問い直す必要がある。

(1) Bt on the Chopping Block
EPA Proposes Phasing Out Dozens of Bt Corn and Cotton Products

(2) Seeds4All

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