日本企業が手を染める「ゲノム編集」トマト

 ついに日本企業が作る「ゲノム編集」トマトが米国農務省によって規制外と認定されてしまった(1)。「ゲノム編集」されたことは表示せずに米国では普通のトマトとして売ることができるようになった。そして、おそらく日本でも?
 
 昨年、日本政府が「ゲノム編集」作物の栽培、「ゲノム編集」食品の流通を、米国政府と同様、実質野放し(任意の届け出のみで表示もせずに栽培・流通可能)としたけれども、その後、日本の企業の中で、「ゲノム編集」の届け出例は聞いていない。
 なぜかというと、「ゲノム編集」に対する規制を決めているEUやニュージーランドのような例があり、バイオテク企業の中でも「ゲノム編集」への批判が高まることにも警戒感が高いと考えられる。今、栽培・商品化されている「ゲノム編集」作物はカリクスト社(Calyxt)の「ゲノム編集」大豆油やサイバス社の「ゲノム編集」ナタネ油くらいだろう。技術的にもさまざまな問題が指摘されている。そんな時に出てきた。しかも日本企業が日本で登録せずに、まず米国で。今後、さらに…?
 
 この「ゲノム編集」トマトを開発したのはサナテックシード株式会社、本社は東京。このトマトは健康機能性成分として注目されるGABAを多く含むトマトになるように、GABA整合性酵素GADの自己抑制機構を「ゲノム編集」で破壊したもの。GABAの産出を抑制する機能を破壊することによってGABAの含有量は増える。

 もっともなぜ、生物は特定の物質を産出することを促進する機構と抑制する機構の両方があるかといえば、それは生命のバランスを保つためであり、そのバランスを保つ機構を破壊することは、その生命のバランスを破壊することになると私などは考えるのだが、それを新品種として生産しようというのだ。

 遺伝子の損傷などによる病気の治療のためであれば遺伝子レベルで変える必要性はありうるかもしれないが、わざわざその技術をバランスの取れた機能を破壊することが果たして許されることであるか? その技術が何をもたらすか、誰にもわからない。わかってからではもう世界は元に戻らない状態になってしまうかもしれない。
 それを、いかに健康機能成分が増えるからといって、健康にいいとして奨励できるかというと、そこには大きな陥穽が存在しているように思えてならない(2)。しかし、このバランスを破壊されたトマトを作ることに規制はもはやないということになるのだろう(少なくとも米国や、そしておそらく日本でも)。

 残念ながら、このトマトを摂取することでどんな変化が生まれるかについての調査などはされていないだろう。実際に政府に問い合わせてもそうした調査については把握していない。懸念を表明すると、自然の中でも遺伝子が壊れることはあるので、それと同じと「考えられる」、だから調査する必要がない、と政府は返答する。こんな仮定に基づいて、食が変えられていこうとしている。少なくとも彼らの想定する「安全」とはその程度のものであることは知っておく必要があるだろう。

 このトマトはこのマークが付くそうだ。日本で売られるようになる日も遠くないのかもしれない。このマークとこの会社の名前はおぼえておいた方がいいかもしれない。

 この商品が売れてさらに「ゲノム編集」食品が増えてしまうか、それとも売れずに退潮となるかは消費者次第である。

(1) ゲノム編集高GABAトマトが米国農務省AIRプロセスを完了

サナテックシードとは

(2) 想定されている通りになったとしてもバランスを失った植物に問題があると考えるのだが、想定通りにならない可能性も当然ある。GADの自己抑制機構とは関係のない遺伝子を破壊してしまう、あるいは予定通りの遺伝子を破壊できたとしても、その遺伝子に予期しない変異が生み出されるケースは少なからず生まれる可能性がある。

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