グローバルな危機を無視する菅政権

 菅政権は新型コロナウイルスによる打撃からのグリーン・リカバリーとかにはまったく興味がないらしい。新政権の農業政策はまず輸出、そして種苗法改正、この2つだけ(1)。果たして今後の世界にそれは有効な政策だろうか?

 今、ブラジルやオーストラリアで米不足、米価の急騰が大問題になっている(2)。ブラジルではお米は主食。しかし、遺伝子組み換え大豆の耕作が農地の半分を占拠してしまう事態となり、米の生産は減り、輸入が増えている。ブラジル人は大豆を食べない。大豆は主に輸出用、他に家畜の餌、加工食品の原料、そしてバイオ燃料となる。アグリビジネスの利益になる大豆生産が優先され、地域の食は犠牲にされる政策、直接食用にならないものに半分も農地を取られたツケが今、ブラジル社会を襲っている。米国を追い越す勢いと言われる世界随一の農業大国が主食をまかなえないという皮肉。
 オーストラリアでは米不足が深刻だというが、オーストラリアが頼る米の輸出国であるベトナムは今年コロナウイルスの影響で米の輸出を禁止した(その後再開)。今後、感染症の蔓延や気候変動の激化で輸出国が輸出を止めざるをえない状況が起きることは当然想定しなければならない。
 だからこそ、可能な限り、食料自給率を上げることがまっとうな国の政策にしなければならないのだけれども、日本政府は米国政府から農業産品を買うことを前提に政策を組むからその政策に本腰を入れようとしない。そしてそのごまかしの農業振興策が農産物輸出となる。
 日本のスーパーには外国産品ばかりが並ぶ。それは突然消えるかもしれない。その時、日本列島の住民の命をつなぐものは何になるだろう? もっとも今の政権はそれよりも別のものに関心がある。

 種苗法改正がめざすもの、それは知財権で儲けるビジネスモデル。だから、日本で種苗法を改正するというだけでなく、すべての国の種苗法を変えさせたい。東アジア植物品種保護フォーラムなどを通じて、日本政府はアジアの国の種苗法を変えさせることにも熱心だ。JICAまでが動員されている。そうした政策を進める人たちにとっては皮肉なことだけれども、日本企業以上に海外企業が利益を収めつつあり、日本市場にも食い込み始めている(2017年日本の新品種登録の36%は外国法人)。企業が利益を得たとしてもそれが人びとの経済を潤す保障にはならない。結局、何のために仕事やってるのか?

 ウイルスなどの感染症や気候変動の脅威が増大する現在、グローバルな食のシステムをこれ以上、依存を強めるのではなく、ローカルな食のシステムに移行していく必要がある。
 今後は、輸出強化以上に地域の食の充実、種苗法改定よりもローカルな種苗をどう増やしていくかが、鍵になるはずだが、菅政権の関心はそこにはないようだ。親分に言われたことは粛々とこなし、親分には文句を言われずにできることだけを自分の政策として宣伝する。菅政権の政策に並ばないことにこそ、日本が現在の窮地から回復できる政策があるだろう(3)。
 中央がやろうとしなくても、地域で実現できることは山ほどある。

(1) 農産物輸出拡大は最重要 野上農水相「あらゆる手段講じる」

(2) ブラジルの米価の高騰は世界食料危機以来。回復は来年というが…。
Preço do arroz em SP tem maior alta acumulada desde 2008, diz associação…

オーストラリアでは米不足が問題に。警察が理由も示さずにファーマーズマーケットを制圧しているというのだけど、いったい何が起きているのか。
Australia Runs Out of Rice as Police Invade Farmers Markets

(3) 「食の安全考えよう」 東大大学院の鈴木宣弘教授、長野で講演 「日本が標的」と警鐘 /長野

「7年8か月」が一層強化される 鈴木宣宏 東京大学教授【どう思う!菅政権】

外国資本に日本売るスガノミクス 植草一秀氏ブログ「知られざる真実」

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