種苗法改定の背後にある国際的「モンサント法体制」

 種子法廃止・農業競争力強化支援法、種苗法改正の流れと並行して、国際的な動き、日本政府の国外での行動を見ていく必要がある。今、世界の政府に対して、種苗法改正を要求する日本の種苗法改正の国際版シナリオが存在している。その背景には世界各国に「モンサント法」体制を押しつける米国の存在が見え隠れする。米国政府による強制というだけでは説明がつかない。日本はこの体制に一体化し、おこぼれ的利益を得ることを想定しているのだろう(1)。この動きには農水省だけでなく、本来援助機関であるはずのJICAまでが動員されている(2)。
 つまり、種苗・化学肥料・農薬の3点セットを独占的に押しつけるアグリビジネスにとって都合のいい法体制を国際的に作ろうという動きを進めている一翼を日本政府は担っている。
 
 その動きを具体的に見てみたい。

 2007年に東アジア植物品種保護フォーラムがASEAN+3(中国、日本、韓国)によって作られた(3)。日本政府はこのフォーラムを通じて、参加国のUPOV加盟のための働きかけを強め、2017年にはブルネイやミャンマーで進展があったと発表(4)。種子法が廃止された2018年にはすべての参加国にUPOV条約に基づく種苗制度の導入を求める「10年戦略」を採択させており、まさにアジアレベルでの種苗法改定に向けて動いている。
 2019年にはインドネシアの種苗法が改定され、アジア諸国の種苗法の改訂をめぐり、懸念が高まっている。タイではTPPへの加盟をめぐり、種苗法問題が大きな議論になりつつある(5)。
 この動きはASEAN地域以外でも2国間自由貿易協定などを通じて強められつつある。農民の権利を種苗法に組み込んだインドもその法改定の圧力がかけられている。メキシコなどのラテンアメリカでもケニアなどのアフリカ諸国でも世界中にその影響は及んでいる。
 だから今回の法改正で農水省の説明が全然現実にそぐわないおかしなものが続くのも、「改正ありき」という結論が先行している事情が影響しているのだろう。日本の農業や食にどう意味があるかは、本質じゃない。それは後付けに過ぎないのだから、おかしな説明になってしまうのも無理はない。
 


 

 このUPOV条約(1991年版)とそれに基づく種苗法改正に対して、今、世界各地で異論が噴出している。UPOV条約に基づく種苗法を制定していない国の方が種苗産業が活発であり、むしろこの制度の導入はその国における種苗産業の発展を阻害するというのだ(6)。ごくわずかな多国籍種苗会社だけを利するだけで、農業全体の発展には阻害物となる。
 実際に米国では新品種登録の数が他の国に比べて停滞している。米国での種苗育成者への過度の知的所有権強化により、種苗開発費が大きな負担となり、種苗会社の独占を生み、多様な品種が作れない事態に陥っている。ドイツでは早くから、通常育種への特許を排除する方向が打ち出された。そうした権利を認めることが独占を生み、農家にとっても消費者にとっても選択の自由が減り、種苗価格の高騰を生み、ドイツ社会にとって利益にならないという結論になったからだ。

 ポストコロナに向け、グローバル化ではなく、地域の食と農を守り、地域の種苗を豊かにするもう1つの方向に向けて議論の土俵を変える必要がある。すでに新たな実践に踏み出している国や地域がある(7)。性急にUPOV体制への統合を進めるべきではない。そのためにも現在の枠組みによる種苗法改定にはストップを。


 農水省の資料



 
 日本が出荷できない時は他の地域に作らせて、棚を確保させ、日本が出荷できる時は他の地域に栽培させない(日本からの輸出に支障ある出荷を監視させる)、こんな体制を組むことを本気で考えているのか、正直恐ろしい気にならざるをえない。
 旬もなくしてグローバルに生産させ、出荷をコントロールしてすべてから利益を得る、これが本当に望ましい文化になるのだろうか、真剣に考え直してほしい。
 
 
(1) 農水省 農業知的財産保護・活用支援事業

(2) 「我が国としては、今後とも、UPOV 事務局と協力して本フォーラムの協力活動及び JICA の技術協力などを通じて、UPOV91 年条約への早期の加盟、制度のさらなる充実に向けた取り組みに必要な支援を行っていく所存です。」
東アジア植物品種保護フォーラム報告

(3) 東アジア植物品種保護フォーラムとは?

(4) 農水省プレスリリース「ブルネイ及びミャンマーの植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)加盟に向けた進展について」

(5) TPP参加に揺れるタイ
เพราะเมล็ดพันธุ์ต้องปลูกต่อได้ สนทนาฉบับเกษตรกรวิถีอินทรีย์กับ ปุ้ย มัทนา อภัยมูล

(6) 種苗市場の発展のためにUPOV1991は不要とする研究報告
Access to Seed Index Shows: Implementation of UPOV 1991 Unnecessary For the Development of a Strong Seed Market

(7) UPOVのシステムに代わるものへの模索もすでに始まっている
南アフリカ諸国の場合
Registration of farmers’ varieties in SADC
コロンビアの場合

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です