米国の遺伝子組み換え食品表示制度に対する訴訟

 米国政府が導入を決めた抜け穴だらけの遺伝子組み換え(GM)食品表示制度に対して、米国市民が訴訟を起こした。

 モンサントの重役が米国政府の中に入り込み、米国政府高官がモンサントの重役になるといういわゆる回転ドアによって、米国政府の政策がGM企業に都合のいいように決定されてしまう状況になっている。これに対して、市民は州政府に働きかけ、州でのGM食品表示制度を作ることに集中し、支持が広がり、2016年にはバーモント州、コネチカット州、メイン州で表示制度を作る法を実現。その他の州でも成立に向けて動いていた。
 この動きに対して、州レベルでは対抗できなくなったGM企業らはGM食品表示制度を連邦レベルで作ってしまい、州レベルでの制度を無効にする先制攻撃に出た。2016年7月に法制化され、2019年に規制のあり方が決定された連邦レベルの食品表示義務制度はまさに穴だらけで、GMO規制を骨抜きにするものだった。
 まず第一に、食品に表示されるのはQRコードか電話番号。その食品に遺伝子組み換え(GMO)が含まれるかどうかを知るためにはQRコードを読み取って、サイトを見に行くか、電話しなければならない。1つ1つ買うものを確認するためにとても手間がかかる。そして、QRコードを読めるスマホを持っていたり、携帯電話を持っていない限り、買う前に知ることはまずできない。
 次に、遺伝子組み換え食品は一番使われているのが加工食品だが、その加工食品には表示義務がない。これではほとんど実質的な情報が市民に伝わらない。
 さらに、従来の用語、GMO、Genetically Modified OrganismあるいはGenetically Engineeredではなく、まったくBioengineeredあるいはBEという新たな造語を付けて呼ぶことにされた。これまで認知が広まったGMOを使わずに言葉を替えることで、消費者を混乱させる。
 そして、GMOやGEという言葉を使うことも、義務の範囲を超えて、自主的に表示することも禁止される。

 米国ではNon-GMO Projectなど複数の民間による代替認証が広まっており、スーパーではGMOの入っていない食品を選んで買うことができている。実際に米国では近年、GMO問題に関する認知が急速に進み、世論調査などでもほぼ半数は遺伝子組み換えでないものを選ぶと答えており、スーパーでもNon-GMOラベルのついているものの売り上げが急速に増えている。しかし、この禁止が実行されれば人びとは遺伝子組み換えは食べたくない、と思っても、選ぶことができなくなってしまう。

 これは明らかに人びとの知る権利を踏みにじるものであるとして、NGOの食品安全センター(Center for Food Safety)が中心となって、さまざまな市民団体や生協、自然食品流通業者などが連邦政府を訴えた。

 実は同様のことが日本でも進みつつある。日本でも2023年からNon-GMO食品表示が実質的に不可能にされようとしている。EUやロシアでは実質的にGM食品は市場からほとんど消えているが、米国や日本ではそれとは反対に何がGMOかどうか、判断することを不可能にするように政策が組まれてしまっているのが現状。そして「ゲノム編集」された食品はまったく無規制で米国で流通始め、それが日本でも起きようとしている。
 米国ではまだ民間代替認証制度があるので、それがある限りは選択の余地があるが、日本にはそれすらほとんどない。それを考えれば、最悪なのは日本だ。
 本来、もう終わるべき遺伝子組み換え食品がゾンビとして復活してくるかもしれない。だから米国でのこの訴訟はとても重要だ。そして、日本でも同様に声を上げていかなければならないだろう。

Center for Food Safetyのプレスリリース
LAWSUIT CHALLENGES “BIOENGINEERED” GMO FOOD LABELING
https://www.centerforfoodsafety.org/press-releases/6100/lawsuit-challenges-bioengineered-gmo-food-labeling

Center for Food Safety 創設者で代表、この訴訟の中心を担うAndrew Kimbrell氏の書いた訴訟に関する記事
Lawsuit Challenges Discriminatory GMO Food Labeling Rules
https://medium.com/@centerforfoodsafety/lawsuit-challenges-discriminatory-gmo-food-labeling-rules-1df4597b8dff

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