遺伝資源の保護とバイオパイラシー

 今、世界で多くの生物が絶滅に瀕している。野生動植物だけではない。かつて栽培していた品種が消えてしまう。特に先進国ではその消失が激しく、かつて地域毎に異なる品種が農家によって維持されていたものが商業的な種子に代わっていく中で失われていっている。
 生物多様性を確保することの重要性は1992年のリオデジャネイロ環境開発会議でもその後の生物多様性会議でも確認され、それは生物多様性条約に結実し、名古屋議定書も作られたことは記憶に新しい。FAOは食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約を2001年に作り、農家が農業生物多様性を守る担い手であることを確認している。
 それに対して、モンサントなどのバイオテク企業は種子市場の独占を急速に進める。米国政府は自由貿易協定で種子企業の知的所有権の優越を定めたUPOV1991年条約の批准を相手国に強要する。しかし、この条約を批准すると、種子企業の知的所有権を守ることが優先されるため、それまで農家が保持していた種子の権利とその生物多様性が犠牲になってしまう。
 コスタリカでも2009年、米国との自由貿易協定を結ぶためにUPOV1991年条約に批准する。その結果、コスタリカの国の種子行政は生物多様性条約に違反するものとなっていると、環境保護団体が政府を訴えた。昨年末のその判決で、その訴えが認められた。

Ecologistas demandan Oficina Nacional de Semillas por evadir controles legales

  世界最大の小農民運動組織La Via Campesinaはバイオテク企業DivSeekが世界の種子バンクのすべてから遺伝子情報を取り出してバイオパイラシーを犯そうとしていると2014年に告発したが、FAOはDivSeekの求めを退けた。

The International Treaty of Seed – FAO refuses to collaborate in biopiracy: INRA and CIRAD must do the same!

 種子を守ることは、生物多様性、公共の財産を企業独占から守ることであり、企業によるバイオパイラシー(生物資源の盗賊行為)からその公共の富を守るものである。生物多様性条約は米国を除く国際連合加盟国すべてが加盟している。つまり世界のコンセンサスはここにある。しかし、米国を中心とする自由貿易協定はそれをモンサントなどの知的所有権のもとに、その生物多様性を危機に陥れようとしている。ただ、UPOV1991年条約に参加する国は米国などによる強要にも関わらず50数カ国に過ぎない。

 種子の多様性、その権利を守ることは世界の大多数の人びとのためであり、一方、それに敵対するのはほんのわずかの多国籍企業とそれの影響下にあるものだけである。まさに1対99あるいはそれ以上の違いがある。
 こうして見るならば種子を守ることが世界のコンセンサスだということができる。それを危うくしているものこそ、多国籍企業に支配された米国や日本が進める自由貿易協定であると言えるだろう。

 この問題は決して農業に関わる人びとの問題ではない。食や医療など深く社会の成員全員に関わる問題であり、さらに人間社会を超えて、環境全体に関わる環境問題でもある。
 多国籍企業によって脅かされている種子と種子の権利を守ることは社会の大きな課題だ。

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