モンサント(バイエル)の番犬としてのトランプ政権

 なんかトランプ政権がモンサント(現バイエル)を支持しているなんてウソだ、的な人がまだいることに脱力する。「トランプは悪のように報道されているけど、それはフェークニュースで、本当は世界を救う人なんだ」ってか。どれだけニュースを見ていないのか、といっても日本じゃ報道されていないか。仕方ない。こんなことに時間使いたくないけど、大急ぎで書く。

 モンサント社は明らかに窮地に陥っている。ドル箱のラウンドアップに対する膨大な訴訟。モンサントの農薬ラウンドアップの訴訟は8万5000を超している。そしてラウンドアップの失った効果を補強するために継ぎ足した古い農薬ジカンバと混合した農薬を新製品として作ったら、それに対しても集団訴訟が起きる状況だ。

 こんな窮地に陥ったモンサント社に対する裁判の中で、トランプ政権がいかにモンサント社の救済に必死か、モンサント社の内部文書が明らかにされている。モンサント社の内部文書によればモンサント社は米国政府の支持をあてにしてよい、EUなどの外国との交渉で常に米国政府はそのために動く。モンサント社は怖れる必要がない、と報告されている(1)。

 米国内から膨大な数の裁判が起こされ、コストコなどスーパーでもラウンドアップの不売が始まり、100を超える自治体がラウンドアップの使用を規制・禁止し、ラウンドアップ(グリホサート)の農薬再承認をしないことを米国政府に求める声はかつてないほど高まった。

 この情勢であれば、グリホサートの再承認は相当、難しいのが普通だろう。しかし、トランプ政権はこんなモンサント社への逆風の中、今年1月、グリホサートの再承認を行った。これもモンサント社(バイエル社)側は再承認されないことなんてないと心配すらしていなかっただろう(2)。
 カリフォルニア州はラウンドアップやグリホサート系農薬を売る際には発ガン性物質という表示を義務付けたがトランプ政権はこれを認めず、撤回するように圧力をかけている。

 米国内だけでなく、世界各地でもラウンドアップ/主成分グリホサートに対する規制は強まりつつあるが、それに対してトランプ政権は規制をしようとする政府に猛烈な圧力を加えている。タイでは昨年12月にラウンドアップを含むグリホサート系農薬を禁止するはずだったが、米国政府からの圧力で延期せざるをえなかった(3)。同様にグリホサートの禁止を表明しているフランスやドイツ、イタリア、オーストリアへの圧力にも相当なエネルギーを注ぎ込んでいることは間違いない。

 特に今後、日本にとっても気になるのが昨年、トランプ大統領の宣言だ。彼は「ゲノム編集」を世界的に広めていくために各国政府を説得するということに続いて、これまでかろうじて米国でも存在している遺伝子組み換え作物の規制も一切なくす大統領令も発している。「ゲノム編集」に遺伝子組み換え企業の窮地を救う道を見出そうとしているモンサントにとって、そして先進国には蹴られてしまったこれまでの遺伝子組み換えの栽培をアフリカやアジアに押しつける上で、このトランプ政権のこの姿勢は大きな後押しになっていることは言うまでもない。そして日本政府もこの方向で動いている(4)。

 トランプ政権の中には今もモンサント社重役を務めたものが働いている(5)。回転ドアといって、米国政権の中には常にモンサント社の重役が入り込み、また政権の中の人がモンサント社に入り込む。このことによって、政策が常にモンサント社に不利にならないようにコントロールし、政権側は企業の支持をあてにできる。遺伝子組み換え食品の承認を実質決めたFDA(米国食品医薬品局)の担当官はモンサントの顧問弁護士だったマイケル・テーラーで後にFDAを務めた後はモンサントの副社長になっている。その後も回転ドアは現在に至るまで回り続けている。

 こうしたことは山ほど情報が出ている。中には怪しい情報もあるから気を付けなければならないけれども、それらがすべてウソで、トランプ政権は正しいことをやっているとしたら、米国政府の行った数々の決定すべて打ち消さなくてはならなくなってしまう。トランプ大統領の発言だけで終わっていたらフェークニュースで済まされるかもしれない。しかし、トランプ大統領はモンサント社やその製品、農薬や遺伝子組み換えに対する支持を口にするだけでなく、行動にまで出てしまっている。それを否定することはもはや不可能だ。

 すぐ思いつくことだけ書いてもこれだけある。調べだしたら、膨大なリストになるだろう。
 
 こうした状況をすべて見て、それでもトランプ大統領はモンサント社を支持していない、トランプ大統領は正義の味方だ、と考えるとしたら、それは相当終わっているとしか言えない。事実を認めようとしなければ、悪い方向に行くことを止めることはできない。トランプ大統領が実際にやっていることをもっと直視しなければ、日本にとって本当にとんでもないことになる。日本政府の理不尽な行動は当然、日本政府自身が決めたものだが、その源は米国政府に由来する割合がきわめて高い。苦しめられている当の主犯を英雄扱いできるメンタリティが僕にはわからない。
 
 
(1) White House Has “Monsanto’s Back on Pesticides,” Newly Revealed Document Say
https://usrtk.org/monsanto-roundup-trial-tacker/white-house-has-monsantos-back-on-pesticides-newly-revealed-document-says/

(2) EPA Finalizes Glyphosate Mitigation
https://www.epa.gov/pesticides/epa-finalizes-glyphosate-mitigation

(3) Trump squeezes Thailand in trade row over chemicals ban
https://asia.nikkei.com/Spotlight/Asia-Insight/Trump-squeezes-Thailand-in-trade-row-over-chemicals-ban

(4) トランプ政権の遺伝子組み換え規制撤廃大統領令についてFacebookの投稿としてまとめた(日本語)

トランプが世界を破壊する。トランプ米国大統領はゲノム編集の解禁に続き、従来の遺伝子組み換えの規制も撤廃するための大統領令に署名した。米国での遺伝子組み換えの規制は規制という名前に値しないものだが、それすらなくしてしまえば、いったいどうなって…

印鑰 智哉さんの投稿 2019年7月29日月曜日

(5) Former Monsanto executive picked by Trump to lead wildlife agency
https://www.nationofchange.org/2018/10/25/former-monsanto-executive-picked-by-trump-to-lead-wildlife-agency/

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