Wake-Up Callとしての新型コロナウイルス

 世界が新型コロナウイルスを緊急の「Wake-up Call」だと呼んでいる。目を覚まして、われわれのあり方そのものを変えなければ大変なことになると言っているのだ。ただ単にこのウイルスだけの問題ではない。われわれの社会のあり方全体に関わりあることである。

 人類の歴史ではペストやスペイン風邪など甚大な被害をもたらす感染症のパンデミック(世界的大流行)が起きている。今回は何が違うのか? 近年、ウイルスによる被害は日常化しているといわざるをえない。インフルエンザウイルス、HIV、子宮頸ガンウイルス、エボラ出血熱ウイルス、人にまだ感染していない家畜ウイルス(CFS、AFS)…

 なぜこのような現象が起きているのか? そもそもウイルスはどのように人類を襲い始めているのか? ウイルスはどこから? まず考えてみよう。

 単純化したら以下のようなストーリーになるだろう。

 自然と共に共生してきたウイルスが生態系の破壊によって新たな生命体に感染し始める。その新たな感染された生命はウイルスとの関係が構築できず被害が拡大する。

 鉱山開発、牧草地、農地開拓などによって生態系が破壊される。ウイルスが依存していた動物が開発によって絶滅する事態が世界的に起きている。宿主(感染先)を失ったウイルスは他の動物へと感染先を変える。そして畜産場の辺境地域への進出によって、そのウイルスを宿した動物が家畜などと接触するケースが増える。家畜を通じて、人に感染していく(1)。

 問題を引き起こすウイルスは長く生態系の中でその宿主と共生関係を結んできた。ウイルスは子孫を自分で残せず、常に他の生命体に感染して存在している。ウイルスといえば病気や感染死をもたらすことを想定してしまうが、宿主を滅ぼしてしまえばウイルスもまた絶滅してしまう。関係が発展していくと、ウイルスは宿主の生命の維持に一定の役割を果たす共生関係になっていくケースが発見されている。そしてその宿主の遺伝子の一部へと完全に内在化されることがあることもわかってきた。人間の遺伝子にもウイルスの痕跡がはっきり残っている。生命の進化にウイルスが決定的に重要な役割を果たしてきていることが近年の研究によって明らかになってきている。人を含む生命体は微生物を取り込みながら進化を遂げてきている。
 生命が進化を遂げる時、新しい生命体が進化する中で分岐していく時、ウイルスが決定的な役割を果たしている。つまり私たちが享受しているこの生物多様性が生み出されてくるには実はウイルスが大きな力を発揮していると考えられる(2)。

 しかし、ウイルスとの共生関係が作ることができないケースでは病や感染死という脅威に襲われる。この脅威への対処策としては短期的にはそのウイルスの隔離による不活性化や治療薬などによる治療法の開発によって脅威を取り除く必要があるが、それだけでは対処療法にしかならない。
 こうした脅威を生み出すそもそもの原因が人類による生態系破壊であることを考えれば、その脅威から逃れるためには、その破壊を止め、生態系を守る社会のあり方を構築する必要がある。長期的な解決策としては生産方法を変えていく必要がある。多くの人びとが今回のコロナウイルスをWake-up Call(めざまし)と呼ぶのはこのことに気がつかなければならないということである。
 そしてそれは気候変動を抑えることにもつながることは容易につかめるだろう。つまり、このウイルス問題を突き詰めていけば気候変動を生んでいる問題にもつながるからだ。しかし、米国や日本政府はこのコロナ対策を理由に気候変動に向けた行動をサボタージュしようとしているとして批判を受けている(3)。

 この危機を作り出す原因の大きな柱の1つは単一作物を大量生産するモノカルチャー、工業型農業、さらにその究極の姿として遺伝子組み換え農業であり、家畜を工場のように詰め込んで養うファクトリーファーミング(工場型畜産)の拡大がこの脅威を生み出しているその大きな柱として存在している。この拡大を止め、小規模家族農家をベースに、生態系を守る農業(アグロエコロジー)への転換こそが究極的な解決策となる。
 しかし、このウイルス騒動の中で、小規模農家はますます厳しい状況に追いやられている。世界各地で市場へのアクセスを失った小農が収入を失い、小農が廃業に追い込まれる中で、大規模畜産、大規模農業がさらに拡がろうとしている。
 この危機の中で、小規模家族農家の支援政策は二重に重要である。それは短期的には日々の食の供給を守る上で重要であり、さらにそれは長期的な感染症や気候変動に対する究極的な解決策につながる施策として不可欠な政策となるだろう。

 海外の市民はすでに今回のウイルス蔓延の背景には工業的な食のシステムに問題があると声を上げている(4)し、市民のみならず、国連も根本的な変革の必要性を訴えている。


(簡訳)動物由来感染症(Zoonosis、人獣共通感染症)の要因は何?
(動物から人間に移される感染症)
◎ 森林破壊やその他への森林の土地利用の変更
◎ 抗生物質耐性
◎ 農業や畜産の生産増強
◎ 不法で十分規制されない野生生物の交易
◎ 気候変動

 ウイルスに対する最大の防御は生物多様性である。もっともウイルスこそが生物多様性を生み出してきたとすればそれは自明のことだが。生物多様性を守ることでわれわれはウイルスの脅威から抜け出すことができる!

 国連環境計画(UNEP)がすばしいビデオでまとめてくれている(5)。日本語字幕入れる余裕がないが、イメージだけでもつかんでもらえると思う。われわれの向かうべき姿はこれなのだ、と。
 そのためにまずは、今日明日の命、社会、人権を守ることだと思う。排除や差別を許してはいけない。

 今回の新型コロナウイルスは人類へのWake-up Callと世界の人びとが呼ぶ。自然との共存に向けて、生き方、社会のあり方を変える時!

Coronavirus – A Message from Nature

The #COVID19 pandemic is a wake-up call. On average, 1 new infectious disease emerges in humans every 4 months. 75% of these emerging infectious diseases come from animals.To prevent further outbreaks, the illegal wildlife trade & destruction of habitats must stop.#ForNature

UN Environment Programmeさんの投稿 2020年4月2日木曜日


(1)
下記のGristの記事の中のビデオや(5)の国連環境計画のビデオは視覚的にわかりやすい。人間の開発によって、さまざまなウイルスの脅威にわれわれが曝されていることがわかるだろう。
‘A common germ pool’: The frightening origins of the coronavirus
https://grist.org/climate/a-common-germ-pool-the-frightening-environmental-origins-of-covid-19/

New research suggests industrial livestock, not wet markets, might be origin of Covid-19
https://grain.org/e/6437
新型コロナウイルスを解析していくと、その起源は武漢の水産市場でも、生物兵器を作っていた研究所から漏れたものでもなく、工場型畜産を行う豚などの家畜から人間に感染した可能性が高い。

Building a factory farmed future, one pandemic at a time
https://grain.org/e/6418

Is factory farming to blame for coronavirus?
https://www.theguardian.com/world/2020/mar/28/is-factory-farming-to-blame-for-coronavirus
今の工業的な食の生産がコロナウイルスの原因を作り出す

Think Exotic Animals Are to Blame for the Coronavirus? Think Again.
https://www.thenation.com/article/environment/coronavirus-habitat-loss/

家畜からのウイルス感染については家畜との濃厚接触による感染が原因であって、食肉など食からの感染は否定されている。

(2) フランク・ライアン『破壊する創造者ーウイルスがヒトを進化させた』早川書房

(3) Coronavirus Response Proves the World Can Act on Climate Change
https://www.ecowatch.com/coronavirus-response-climate-change-2645571474.html
究極のコロナウイルス対策は気候変動対策にもなるのだ。

Japan’s climate plan branded ‘weak’ by experts
https://theecologist.org/2020/mar/31/japans-climate-plan-branded-weak-experts
世界第5位の温暖化効果ガス排出国の日本がさらに気候変動対策をさらにサボタージュする可能性に対して世界では強い批判が出ている。

(4)
アジア
COVID-19 Highlights the Failure of Neoliberal Capitalism: We Need Feminist Global Solidarity
https://apwld.org/covid-19-highlights-the-failure-of-neoliberal-capitalism-we-need-feminist-global-solidarity/
コロナウイルス感染症はネオリベラル資本主義の失敗を照らす。必要なのはグローバルなフェミニスト的連帯

アフリカ
Aftican Centre for Biodiversity: The Monoculture effect and COVID-19
https://www.acbio.org.za/en/monoculture-effect-and-covid-19

EU
Here and ready: the value of peasant agriculture in the context of COVID-19
https://www.eurovia.org/here-and-ready-the-value-of-peasant-agriculture-in-the-context-of-covid-19/
小農こそが解決策!

Agricultural and Rural Convention: Coping with Covid19 – Learning From Then and Now
https://www.arc2020.eu/coping-covid/

米国
FARMERS RESILIENT AS CORONAVIRUS HALTS ECONOMY
https://www.ecofarmingdaily.com/farmers-resilient-as-coronavirus-halts-economy/

(5) 国連環境計画:Coronavirus – A Message from Nature
https://www.facebook.com/unep/videos/266354484373641/

国連FAOによる新型コロナウイルス問題のFAQ
http://www.fao.org/2019-ncov/q-and-a/en/

添付したUNEP(国連環境計画)のイラスト
https://twitter.com/UNEP/status/1246709191663902722

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