知財立国戦略と種苗法改定

 日本政府は今後の日本経済発展の源泉を知的所有権に求めて、農水省は2015年に知財戦略2020を作りました。「農業とは情報産業である」とまで言っています。その中で、種苗の知的所有権を強めるために登録品種も大幅に増やすとしてきましたが、その現実はどうなっているか。増えるどころか逆に日本だけ登録品種が激減してしまっています。

 日本政府は農家が自家増殖してしまうから種苗会社が新品種開発意欲をなくしているというのですが、このビデオではその原因を現在の日本政府の政策の欠陥に求めました(1)。自動車産業などを優先し、農業を犠牲にする政策、さらに種苗を育成するための長期的な研究予算が確保されないこと、必要な人材が得にくくなっていること、農村の基盤が崩されてしまっていることが大きく影響していると思います。実際に日本国内で育種される新品種の割合も減り、近年では外国で育種されるものの割合が増えてしまっています。その責任をすべて国内の農家のものにするというのはまったくおかしな話だと思います。
 米国も停滞気味です。これはまた別な事情が考えられます。特に米国では通常育種にも特許が認められており、それは一部の種苗企業に大きな力を与える一方、それが重荷となって、新品種開発が停滞している可能性もあると思います。特許権者の許可がなければ利用もできず、特許料の支払いは新品種育成にかかる費用を劇的に増加させてしまうからです。
 一方、ドイツは通常育種に特許を与えることは種苗会社に大き過ぎる権限を与え、農民や消費者に権利侵害を生み出す可能性があるとして、特許を認めないとしており、欧州議会も昨年、その方向を押す決議をしています。

 日本でも米国と同様に通常育種に特許を認めており、種苗法の下での育成者権と特許法での特許権を両方取得することができ、日本政府は遺伝子レベルの知見の特許を速やかに承認して、種苗会社の競争力を強めようという方向を向いていますが、それは米国に見られるように種苗企業の少数独占につながり、全体としての新品種の増加には抑制的に働く可能性が高いと思います。そうなれば種苗の多様性、選択肢は減っていきかねません。通常育種に特許を認めないドイツの政策は日本でも今こそ採用を検討すべきなのではないでしょうか?(2) このまま進んでいっても先はないと思います。

 種苗企業の競争力だけが日本の農業の力の源泉であるかのような考え方はやはり偏っています。種苗育成者と農家は農業の両輪であり、お互いが栄える道を模索すべきだろうと思います。

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