アマゾン破壊と日本(その2)「アマゾンの国際化」

アマゾンで原生林破壊が急速に進みつつある。この問題で次に考えたいのが「アマゾンの国際化」問題である。

 アマゾンでの原生林破壊に反対するブラジル国内外から上がる声に対して、ブラジルの大土地所有者などの開発側は、それを「アマゾンの国際化」であるとして批判してきた。

 つまり、海外の勢力が環境運動と称して、アマゾンを守れと叫ぶが、それによってブラジル人が自分たちの国を開発するまっとうな権利までも奪われようとしている、という意味で「アマゾンの国際化」と呼んできた。それはブラジルの主権を奪う動きであるとして、国内のナショナリズムに訴えて、そうした国内外の批判の声を逆手に取って悪用してきた過去がある。

 もちろん、ここには議論のすり替えがある。アマゾンの開発を狙っているのは多国籍企業の鉱山企業とそのエネルギーを担う大規模ダム建設関連企業、大規模農畜産業であって、一般のブラジル市民ではない。その利益は海外に流出し、ブラジルのごく一部の特権層を潤す以外にはまったく残らない。そして、アマゾンに住む先住民族、キロンボーラ(黒人共同体)、伝統的住民たちの生活はそうした大規模開発によって壊されてしまう。しかし、ナショナリズムを煽ることでそうした現実を隠すことが可能になる。

 1992年、リオデジャネイロで開かれた国連環境開発会議では、当時のアマゾン州知事が「Ecologist, Go home!」という巨大な広告を掲げた。これもそんな文脈である(もっともその広告にはFrom the governor of the state of Amazonas, the home of Ecologyのような言葉が書き添えられていて、ちょっと多少のユーモアはあったのだが、要するに外国人は黙れと言うことだ)。

 こうした議論の背景にはアマゾンの鉱山資源を狙う多国籍企業や穀物メジャー、大規模寡占地主層などが存在していたが、この議論に巻き込まれたのは右派の政治家だけではなく、ブラジル共産党(PCdoB)や一部の労働者党も含まれていた。
 2014年にブラジルの森林を守ってきた森林法が改悪された(1)。これまで水源近くは森林を伐採できない厳しい規定などがあったがそれが緩和されてしまった。実はこの法案を提案したのはブラジル共産党のAldo Rebeloで、ジウマ労働者党政権の新科学技術イノベーション相も務めている。
 そして、アマゾン奥地に建設されてしまったベロモンチダム建設を進めたのは労働者党政権自身だった。こうした左派もこのアマゾン開発の一翼を担ってしまったという事実は否定できない。ベロモンチダム建設もその水力発電は金鉱山の動力に使われると言われており、その金鉱山の掘削を狙っているのは多国籍の鉱山企業だった。

 しかし、一方で、先住民族の運動やそれと連帯して闘ってきている環境・人権運動、NGO、そしてこの地域の小農民の運動は一貫して、このようなアマゾン破壊が多国籍企業によるブラジル収奪につながることを見抜き、闘ってきた。
 実際にこうした大規模開発で小規模家族農家が追い出され、農地改革も止められて、大規模地主をさらに太らせる動きとつながる。もちろん、労働者党や左派勢力にそれに反対する議員たちは存在しているが、もっとも、そのような勢力はブラジルの議会内にはまだ少数派であるのが現実である。

 アマゾンの破壊をブラジルの主権を奪おうとする外国勢力に操られた環境団体や先住民族の責任であるかのように発言した先日のボルソナロ大統領はこのような流れの中にある。

 MSTはこの動きを「政府は悪意を持って反応している。土地なし農業労働者を敵に仕立て上げて、アマゾンの森林を焼き、大地主たちを武装させて農民たちを攻撃しようとしている」と警戒する(2)。実際に小農民や土地なし農業労働者運動や先住民族の殺害事件が次から次へと起きている。
 危機に陥っているのはアマゾンの森林だけではない。そこで抵抗している先住民族や小農の生存もまた危機にさらされているのだ。

 ブラジルのマスメディアはわずか9家族に握られていると言われる。そんな中、圧倒的に寡占勢力側にバイアスのかかった放送がされることが多い。それではブラジルの市民は開発勢力に乗ってしまっているのかというと現在は決してそうではなくなっている。

 ブラジル世論調査・統計機関(Ibope)の調査によると大統領選でボルソナロに投票したか否かに関わらず96%の人がアマゾン破壊を懸念し、政府はそれを止めるために行動すべきであることに同意している。そして88%という高い比率のブラジル人がアマゾンを自分たちの誇りであるとして守ることに同意している(3)。
 つまり、ブラジル国内でもアマゾン破壊に対する批判は圧倒的多数に及んでいるのであり、一部の人が言うような「ブラジル人にまかせていたらアマゾンは壊れされて、地球はダメになってしまう」というような事態なのではなく、破壊を止めたい、というのが大多数であるし、大統領の支持率は急落している。しかし、現政権が変わらないでいられるのはその大統領を支える勢力が存在しているからだ。それをしっかり分析して、その勢力に対して全世界の市民が協力して止めることが求められていると言えるだろう。暴力にさらされている先住民族や小農民運動と連帯してこうした破壊的な動きを止めることこそが必要なのだ。

 先週には先住民族を含む10万人の女性たちがブラジリアに集まり、女性の権利やアマゾンの保護を求めて声を上げている(4)。すでに大きな動きは拡がりつつある。それなのにどうして破壊が進むか、破壊を引き起こす極少数の動きを政府が止めようとしないからだと言えるだろう。

 それではこの破壊と日本はどのように関わっているのか、次に考えてみたい。

(1) ブラジルでの森林法改悪(2014年)

(2) ブラジルの小農や農業労働者への暴力が現在ひどくなっている状況を伝える記事
Ampliação da posse de arma no campo vai aumentar violência, dizem entidades

(3) ブラジルのアマゾンに関する世論調査を伝える記事
BBC: Eleitores de Bolsonaro querem que governo combata desmatamento, diz pesquisa Ibope

(4) 女性たちのマルガリーダの行進と先住民族女性の行進

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