フランスの農薬・有機事情とネオニコチノイド農薬問題

緊急セミナー!「ネオニコチノイド系農薬規制のフランス最新情報ほか」(末尾参照)に参加してきた。

 自分の講演会に出るだけで精一杯だったので参加者として出ることは最近ほとんどなく、今回もぎりぎりで行くこと決めたけれども、このセミナーの内容はさまざまま意味で大きな衝撃を感じた。

 最初は羽生のり子さんによるフランスでの農薬規制・オーガニック事情。すでにフランスでは主なネオニコチノイド系農薬の禁止が決定済み。人びとの意識はラウンドアップ/グリホサートの禁止に向かっていて、2000人が尿を検査するも、ほぼ全員からグリホサートが検出され、その多くが国の責任を求める告訴に加わっているという。その市民の権利意識のあり方はまるで別世界。フランスから学ぶものは多くあることを実感。

 次に平久美子さんのネオニコチノイドの公衆衛生への影響に関する講演も衝撃的。
 EUなどが禁止に向かう中、日本だけ大幅緩和しているのが現実。それがどう現実に出ているのか。日本の住民は健康じゃないかと思われるかもしれない。でも、その影響は子どもに確実に出ていると考えざるをえない。新生児の尿からもネオニコチノイドが検出された。母親の胎盤を通過し、胎児に伝わっている。そして胎児の成長に影響を与えている可能性が非常に高い。

 OECDのデータでは先進国の中で日本が圧倒的に低体重児の割合が多い(添付の図では2013年のOECD加盟国での2500グラム以下の新生児の割合を示すが、日本が断トツの1位となっている)。その割合は1970年代と比べて現在は倍近くに増えている。ダイエットの流行による影響だけでは説明しきれないだろう。子どもの発達に大きな影響を与えていることは疑うことは難しく、規制の強化が必要だが、日本政府はその規制と反対に次から次へと規制を緩和している。日本列島の住民はよほど有機食品だけで食事をしていない限り、ネオニコ漬けになっているだろう。食事だけではなく、お茶や室内の殺虫剤や家のシロアリ防除などでも使われている。
 さらに、この問題は人間の健康問題だけではない。今、昆虫が世界からほとんど消えてしまう「昆虫カタストロフィ」が話題になっている。これが起きれば人類の生存そのものを危うくするほどの巨大な問題を引き起こす。2050年には人類は生存限界を迎える、と言われるほど、もうそこに迫ってきている危機。もはや待ったなしの状況にわたしたちはいる。

 さて、どうするか? ネオニコチノイド系農薬散布の中でも、なかなか代替策が難しいものもあると言われることだろう。しかし、中には散布の必然性が低い、散布することで逆に余計な問題が生まれるというものも少なくない。たとえば、斑点米を防止するためのもの。そして、松枯れ病防止を名目に松本市などで続けられているネオニコチノイド農薬の散布。まずは、こうした大きな被害を生む農薬散布を即時禁止させること、そして、次に代替策が難しいとされるケースで使われるネオニコチノイド農薬をどうやって減らせるか、なくせるかを検討し、何ができるか考えていくことだろうと思う。もはや、ネオニコは必要悪だなどと言っている時代じゃなくなっている。子どもの命が大変なことになっている。そして自然も。

緊急セミナー!「ネオニコチノイド系農薬規制のフランス最新情報ほか」

添付の図はこの61ページ。この図は当日使われたものではなく、同じ観点を伝える資料として以下から採った。
Health at a Glance 2015 OECD INDICATORS

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