さらに危険になる小麦

先月の話になるが、今後の日本列島での食の安全というよりは食の危険を考える上でとても問題ある発表を農水省が7月17日に行っている。米国で栽培が認められていない遺伝子組み換え小麦が発見されたにも関わらず、日本政府はその輸入を止めなかったのだ(1)。

 小麦の遺伝子組み換えは世界どこでも認められていない。モンサントは小麦の遺伝子組み換えの実現に動いたが、米国では家畜の飼料の大豆やトウモロコシと違って、米国人の主食の小麦には反対が強すぎたということだろうか? モンサントは断念した。しかし、実験段階であった遺伝子組み換え小麦が商業生産されている小麦の中で発見されるという事態がこれまで4度目になっている。
 GM小麦が実験圃場から流出し、自生し始めていることを示すものとして大きな問題になった。いったん放たれた遺伝子組み換え生物は制御が効かない。遺伝子汚染を拡げていく可能性がある。もっともこれまでの遺伝子組み換え生物はとりわけ収量が高いわけでもなく、繁殖力が格別強くない、としてさほど拡がらないという推測もあった。でも、それはある環境においては異なる。つまり在来の生物が生育しにくい環境、たとえばモンサントの除草剤グリホサートが散布されている環境では、グリホサート耐性の遺伝子組み換え生物の方が優勢となってしまう。
 遺伝子組み換え小麦の問題とは別の話になるが、現在、米国では収穫直前に収穫を効率化するためにグリホサートを散布されるのが当たり前のようになり、日本に輸入される米国産小麦にはほぼ100%近い確率でグリホサートが検出されるようになっている。このような環境の中で、よりグリホサート耐性遺伝子組み換え小麦がより優勢になっていく可能性はありうるのではないだろうか? とすると、今後も小麦の遺伝子汚染が継続し、拡がる可能性も否定できないだろう。

 それに対して、日本政府の対応は何だろう? これまでは農水省は検査態勢が整うまで輸入を停止していたが、今回は止めずに輸入を継続した。これを日本農業新聞の記事は「米国産小麦の輸入停止を回避したのは、水面下で進む日米貿易協定交渉への悪影響を農水省が懸念して忖度(そんたく)した可能性がありそうだ」と批判する。

 このおかしな日本政府の姿勢は許されるべきものではない。その上で、できることとして、米国産小麦を極力食べないことで対抗したい。実際に米国産、カナダ産の小麦にはほぼグリホサートが含まれていると考えられる(有機などの特例を除けば)。グリホサートの摂取は遺伝子組み換え食品以上に小麦から起きてしまう可能性が高い。


 モンサントや日米政府はグリホサートは安全であるとする。基準値以下であれば問題は起こさないはずだ、と。しかし、実際には基準値よりもはるかに低い値で大きな影響を与える可能性が高い、という指摘がすでにされている。それも基準値の100分の1であっても危険が指摘されている。モンサントや日米政府の言う「安全」を信じるか、それとも独立した研究者の指摘を受けて、その摂取を可能な限り排除するか、その選択は一人一人が可能である(2)。

 国産小麦か有機小麦で作られたものを選ぶ。それが得られない場合は小麦製品そのものを食べないことで対応できる。

 一番、気になるのは学校給食で小麦製品が出される場合(パン、麺類など)、こうした米国産小麦が使われる可能性が高いこと。子どもにグリホサート汚染が起きてしまう。国産小麦あるいは小麦の代替品(米粉など)の使用、米食など小麦を使わない食に切り替えることを求めることはとても重要だと思う。有機に切り替えることはそう簡単ではないかもしれないけれども、この切り替えは急務であり、不可能ではないはずだ(3)。

(1) 日本農業新聞:米産小麦の輸入継続 GM新系統で異例 農水省発表

(2) カリフォルニア州政府が提案するグリホサートの安全なレベルはEPA(環境保護局)が設定する127分の1。そして環境団体が指摘するレベルはさらにその110分の1。つまり、現在の米国政府のレベルは環境団体の指摘するレベルの13970倍高い危険な値ということになる。
1. CALIFORNIA’S PROPOSED LIMIT VS. THE AMOUNT ALLOWED BY EPA
 ついでにいえば、グリホサートは内分泌撹乱物質であると指摘されている。内分泌撹乱物質はppb(10億分の1)レベルで作用してしまう。つまりその存在をなくさない限り、危険が起きてしまうというもの。だから禁止するしかないものなのだ。

(3) 添付の図は農民連食品分析センターによる調査のデータと農水省のデータを編集したもの。米国・カナダ産の小麦からグリホサートがほぼ100%の割合で検出されることには驚かざるをえない。そしてそれを使ったパンや小麦粉からもグリホサートが検出される。

農民連食品分析センター:食パンのグリホサート残留調査

農民連食品分析センター:小麦製品のグリホサート残留調査1st

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