グリホサートをめぐる攻防

 米国環境保護局(EPA)は4月30日にグリホサートを安全とする提言を発表。つまりEPAはモンサント・バイエルの影響下にいまだあることが示された。しかし、グリホサートによって生態系に与える影響について言及され、規制案が示されることになった(1)。

 EPAに先立ち、EUの食品安全基準を審査する欧州食品安全機関(EFSA)はグリホサートの発ガン性を否定する調査報告書を提出したが、この文書はその肝心の「安全性」の判断についてのところのほとんどがモンサントが作った文書のコピペ(丸っきりの丸写し)であったことが曝露され、その根拠が揺らいだ。フランス、ドイツ、イタリア、オーストリア各国政府はこれを相手にせず、グリホサートを禁止する方向で舵を切った。
 米国政府機関はグリホサートは安全と言い続けたが、裁判では昨年8月から3度続けて2つのケースでグリホサートに発ガン性があると見られるという判断に基づくモンサントの賠償責任を認める判定が出ている。
 ここであえてグリホサートが安全であると言うことは相当のことなのだけれども、やはりモンサントの政治力はまだ健在ということだ(先日の判決の直後も政府高官はモンサントを擁護する発言をしていたので、想定内のことだが)。

 しかし、市民団体はこの判断を批判する声明を発表している(2)。

 残念ながら日本政府は2016年にグリホサートを安全とする評価書を作っており、これを元に2017年最大400倍の規制緩和を行っている。スリランカはグリホサート系農薬を禁止、ベトナムは新規輸入を禁止する中、日本はその真逆を行くわけだが、2021年には再評価することが約束されている。しかし2021年に使っている国がどれくらい残るのだろうか?

 グリホサート(モンサントの商品名ラウンドアップ)がもたらす被害は発ガン性だけではない。植物のアミノ酸を作るシキミ酸経路をブロックし、植物を枯れ死させてしまうが、同様に土壌細菌や腸内細菌も影響を受ける(3)。腸内環境を破壊することでさまざまな疾病に関わることが想定されるが、それ以外にも懸念されているのが生殖に与える影響である(4)。精子の数も激減し、胎児の発育に影響を与える可能性が指摘されているだけでなく、世代を超えて影響する危険を指摘する研究が先日、発表された(5)。つまり、子どもの代では一切なくなっていたとしても親から影響を受け継いでしまう可能性が指摘された。ベトナム戦争で撒かれた枯れ葉剤によって作られたダイオキシンは3世代にわたって影響を与えると言われている。グリホサートはこの枯れ葉剤ではないが、同様に世代にわたる影響があるかもしれないということになる。

 先日、バイエルの株主総会が開かれたが97%を超えていた信任は44%台に落下。販売停止にする流通業者も相次ぎ、禁止する国、自治体も相次ぐ。このまま訴訟が続けばバイエルの存続も揺るがしかねない現実となっている。しかし、日本では販売が急増している。

 日本でグリホサートをどうしていくか、対岸の火事ではまったくない(6)。

(1) AFP:グリホサート「発がん性低いが環境リスク潜在」、米が新規制提言
https://www.afpbb.com/articles/-/3223305

(2) EWG: Trump EPA Sides With Bayer/Monsanto Over Science, Claims Cancer-Causing Weedkiller ‘Safe’
https://www.ewg.org/release/trump-epa-sides-bayermonsanto-over-science-claims-cancer-causing-weedkiller-safe

守るのは野生生物だけ? と批判する声明。実際に北米を象徴する蝶であるオオカバマダラの幼虫の餌となるトウワタ属(milkweed)がグリホサートによって激減し、そのためにオオカバマダラが絶滅危惧となっている。これへの対応はするが、全米、世界に拡がる健康被害は無視するのだろうか?
Center for Biological Diversity: EPA Proposes Re-approving Glyphosate, Ignoring Cancer Risk — Plan Includes Only Minor Restrictions to Protect Wildlife
https://www.biologicaldiversity.org/news/press_releases/2019/glyphosate-04-30-2019.php

(3) Concerns over glyphosate pass from human health to the soil
https://www.politico.eu/article/glyphosate-concerns-pass-from-human-health-to-soil/

(4) Global Glyphosate Study Pilot Phase Shows Reproductive and Developmental Effects at ‘Safe’ Dose
https://glyphosatestudy.org/press-release/global-glyphosate-study-pilot-phase-shows-reproductive-and-developmental-effects-at-safe-dose/

(5) Assessment of Glyphosate Induced Epigenetic Transgenerational Inheritance of Pathologies and Sperm Epimutations: Generational Toxicology
https://www.nature.com/articles/s41598-019-42860-0

(6) グリホサートの販売中止を求めるオンライン署名(日本) by 小樽・子どもの環境を考える親の会
「グリホサート製品とネオニコチノイド系農薬製品の 販売を中止してください!」

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