アルゼンチンでのモンサント法案との闘い

植物は土壌微生物との共生関係を作り出し、自身が成長するだけでなく、多様な生命の生きられる環境を作り出す。しかし、第2次世界大戦で莫大な量が作られた爆弾の原料である窒素化合物が戦後、化学肥料として世界の農地にばらまかれていく。その延長線上に遺伝子組み換え農業が出てくる。そして、遺伝子組み換え企業は世界の種子市場の独占をめざし、今やわずか4社が世界の種子市場の7割を独占するに至る。
 この独占に対して、種子を守る動きは今や世界大に拡がっている。その動きを封じようと、TPPあるいは自由貿易協定を通じて、今、多くの国で農家の種子の権利を規制する「モンサント法案(バイエル・モンサント法案)」が登場している。
 今、循環・持続する多様な生命の共生に基づく世界か、バイオテクノロジー企業に支配される世界かのどちらを選ぶのか、選択が迫られているということができるだろう。

 アルゼンチンでは数年にわたってその法案との闘いが繰り広げられてきた。そして、今、アルゼンチン下院で種子法改悪法案(No.20247法案)が成立に向け、急速に動き出している。

 この法案が成立してしまえば、種子に関する警察力が強化され、知的所有権が犯されているとみなされればどの段階でも警察が介入できるようになる。知的所有権や特許で独占される領域が拡大し、種子の自由な利用は制限され、自家採種ができないケースが増えるだけでなく、たとえばバイエルはその種子を売ることへの課税が免税される、つまりアルゼンチン政府がアルゼンチンの税金をつぎ込んでバイエルの種子の販売に協力することに等しい体制ができてしまうと見られている(1)。

 そもそも米国以外でまともな手続きを経て、遺伝子組み換え作物の耕作が始まった国はほとんどないだろう。アルゼンチンは債務危機の中、海外の債権者からの政治的圧力の中で無理矢理、議会でのまともな審議抜きで遺伝子組み換え作物の耕作が始まってしまった。
 しかし、遺伝子組み換え企業にとって、後ほど、災いとなったのはあまりにどたばたの中で始まってしまったために、米国やカナダで存在するような遺伝子組み換え企業の種子の特権を定める法律を整備する間もなく、遺伝子組み換えが普及してしまった。そのため、遺伝子組み換え種子の特許も規定されておらず、遺伝子組み換え作物の種子は農家が自家採種しており、世界第3位の生産量になったにも関わらず十分、特許料を徴収できていない(もっともだからこそ、遺伝子組み換え農業はアルゼンチンから裁判所が耕作を禁止したブラジルなどの隣国に密輸され、南米が一大遺伝子組み換え耕作地となったのだから、遺伝子組み換え企業は十分利益を拡げることができたわけだが)。
 それ以来、モンサントはアルゼンチンに種苗法を変えて、特許を守る体制にするように圧力をかけ続けてきた。

 長く、このモンサント法案を拒否し続けてきたアルゼンチンでも、この法案の制定が強行されてしまうかもしれない。しかし、近年、農薬も化学肥料も使わないアグロエコロジーによる生産を掲げる小農運動が進展しつつあり、多くの農民団体、社会運動団体がこの法案制定に反対の声を上げている。(1)(2)

 この動きは日本でも別なレベルで進みつつある。2017年4月の種子法廃止法案成立、種苗法の農水省令による自家採種禁止品種の急増、さらには種苗法改悪の動きがはっきり見えてきている。
 多国籍企業による多国籍企業のための食のシステムになってしまえば、世界は多国籍企業の奴隷となる。この問題の重大さをいくら強調しても足りない。しかし、多くの市民にとってこの問題は自分に関係のない問題としてしか受け取られておらず、そこで問われるべき問題の大きさが理解されない。直接影響を受ける農民は人口の上で圧倒的なマイノリティになりつつあり、声が社会になかなか届かない。農民の問題に留まらないのは明らかであるにも関わらず、社会の関心は特に日本ではまだまだ小さい。この問題は特定の人だけのものではなく、この社会に生きるすべての人のものとして知らせていかなければならないことだろう。すべての市民的メディアの発憤に期待する。

(1) アルゼンチンでの種苗法改悪反対声明(法案の問題点など)
NO a la modificación de la Ley de Semillas – No a la Ley Bayer Monsanto

(2) アルゼンチンでの種苗法改悪反対の声(ビデオ)
No a la Ley Bayer-Monsanto de Semillas

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