アフリカでの種子を守る闘い:新たな小農のタネのシステムの提案

 アフリカの農民からタネが奪われつつある。先進国はアフリカに生産性を向上させるとして農薬・化学肥料・種子のパッケージを押しつけ、伝統的な種子を使うことに制約をかけようとしている。そして押しつけられる種子の中には遺伝子組み換えが含まれている。
 アフリカでは9割近い農民がタネを保存し、活用している。それを奪い、農薬や化学肥料といっしょに買わなければならない農業に移行せよといえば何が起きるか、あまりに現実的でないか、現実的であるとしたら次に起きるのは債務による破産、インドで起きたような自殺、さらには難民化ではないか?
 しかし、アフリカでタネの権利を守る運動は強まりつつある。3月には西アフリカ8カ国の農民団体の代表がセネガルに集まり、西アフリカ小農種子委員会(COASP, West African Peasant Seed Committee)の会議が開かれた。8カ国のうち7カ国ではすでに農民の種子の権利を制約するUPOV1991年条約が有効になっており、厳しい状況に置かれている。
 ますます深刻化する気候変動、土壌の崩壊に有効なものは農薬・化学肥料に依存する「緑の革命」に基づく農業ではなく、生態系の力を最大限に活用するアグロエコロジーであるとして、そのアグロエコロジーを可能にする小農の種子のシステムであり、そのもとで、生産性も向上でき、健康や自決権の回復も可能であるとして、宣言をまとめている。

 小農の種子をどう政策として促進できるだろうか? 国際的な制度としてフォーマルな種子制度(種子の認証に基づく種子生産・流通の仕組み)では多様性に富んだ小農の種子は処理ができない。ブラジルではクリオーロ種子条項を設け、そうしたフォーマルな種子制度の規定を免除させることで農家の種子を認めることに成功した。

 アフリカ生物多様性センター(African Centre for Biodiversity)は種子を図のように4つのグループに区分することで、小農の種子システムを位置づける提案を行っている。フォーマルな種子制度に柔軟性を持たせるものだ。この従来のフォーマルな種子制度だけでは農業生物多様性は危険なレベルに激減してしまう。その制度の下では種子は均一、同質なものでなければ認証されない。多国籍企業により有利となり、しかも種子企業は寡占化している。そのために種子の多様性は排除されてしまうからだ。

 日本ではコメ、麦、大豆においては公的種子事業が行われているが、それはフォーマルな制度の中に位置づけられる。フォーマルな種子制度にはまらない自家採種などの活動は種子の多様性を守っていく上で貴重なものだけれども、それをどう公共政策の中で位置づけるか、まだ十分議論できていないのではないだろうか? 日本でそうした農家のタネをどう政策的に位置づけるかを考えた時、このアフリカ生物多様性センターの提案は参考になると思う。

第6回西アフリカ小農種子市宣言
Declaration of the 6th West African Peasant Seed Fair

アフリカ生物多様性センターの種子政策ペーパー(提言)
Seed policy paper: Towards national and regional seed policies in Africa that recognise and support farmer seed systems

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