ゲノム編集による遺伝子組み換え小麦の登場

 米国農務省(USDA)はゲノム編集による遺伝子操作をGMOとして管理する必要を否定し、従来の規制プロセス(それ自身、大いに問題があるものだが)も省略して、ゲノム編集によって遺伝子操作された小麦や大豆の栽培を認める決定を行った。
 これまで小麦の遺伝子組み換え(操作)はされてこなかった。遺伝子組み換え作物は世界的な反対の高まり、環境や健康被害の増大と共に大きな壁にぶつかりつつあり、遺伝子組み換え企業の将来にも黄色信号が灯り、大きな合併・買収で揺れ動いている。USDAの決定によって、このゲノム編集による遺伝子組み換えに一気に向かう可能性がある。
 しかし、USDAが考えるようにゲノム編集やRNAi(RNA干渉)による遺伝子操作によって作られた作物の安全性は確かなものではない。たとえばリンゴを切れば切った面が茶色に変色する。茶色に変色させる遺伝子をオフにすれば切っても色が変わらないリンゴができる。しかし、そのことによって生命体としてのリンゴにどのような変化が生まれるか、十分な理解がされているわけではない。茶色く変色させることがリンゴの木自身の免疫とつながっている可能性もあるだろう。それをオフにすることにより、どのような問題が生まれるだろうか? そしてオフにして切っても茶色くならないリンゴを得ることで得をするのは誰なのか、何のためなのか? 古く酸化したリンゴでも見分けがつかないのは不便でしかないではないか。しかし、続々とそのような遺伝子操作が今後、続々と行われてしまうことが危惧される。

 カリクスト(Calyxt)社は高繊維のゲノム編集小麦の商業栽培へ
High-fiber, gene-edited wheat cleared for commercialization

 カリクスト社、ゲノム編集による高オレイン酸大豆の栽培開始
CALYXT EXCEEDS FARMER ADOPTION MILESTONE FOR HIGH-OLEIC SOYBEAN PRODUCT LAUNCH

 今後、ゲノム編集に企業の金がさらに殺到してしまう。研究のあり方も企業の利益に沿ってさらに変わっていくとしたら問題はさらに大きくなるだろう。
US gene-editing ruling delights plant scientists

 ゲノム編集なしに品種改良はできないのか、下記のような例もある。従来の育種技術を使い、古代小麦と現代小麦の形質をかけ合わせて、アフリカの高熱の環境の中で育つ小麦を開発する。アフリカの食料保障にも大きく貢献することが期待できるかもしれない。こうした品種の開発に費用をかけ、その費用を保障することは十分検討に値するだろう。ゲノム編集や遺伝子組み換え技術でなければできないものではない。

Wheat in heat: the ‘crazy idea’ that could combat food insecurity

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