生物多様性及び及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム

 生物多様性及び及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)については追えてこなかったけれども、今月、コロンビアで第6回総会が開かれたという。その農林水産省の報告を見るだけでも、興味深い。

以下、抜粋とコメント

(1)生物多様性及び生態系サービスに関する地域・準地域評価
ア …貧困が未だ根強く残っている地域では、人々の生計は生態系がもたらす物(植物・動物・菌類等)に依存している。

 生物多様性が経済にもたらす貢献が認識されていることは重要だが、貧困国、貧困地域に限らないだろう。そもそもそれがなければ人の健康すら確保できないのだから。

イ 生物多様性は、異常気象、海面上昇、侵略的外来種、農業集約化、廃棄物や汚染の増加等によりかつてない脅威にさらされ、全体として劣化している。

 日本政府は農業集約化を進め、農薬使用基準を緩和し、汚染をさらに加速させようとしている。

(2)土地劣化と再生に関するテーマ別評価
エ 消費者と生産者の距離が離れているため、消費者の選択が土地劣化に与える影響がみえなくなっている。…
オ 急激な農地拡大と持続不可能な農地管理が土地劣化の最大の直接要因であるが、環境保全型農法等により劣化を防止し、反転させることが可能である。

 産直や生協に代表される日本の取り組みは今なお潜在力を持っているわけだけど、今、日本政府が進めようとしているのは企業が食の上流から下流、種子から市場までを握るシステムの導入で、それが進めば、消費者と生産者の顔の見える関係などというものは完全に絵に描いた餅で、存在しなくなってしまう。農業への民間参入とはまさにそういう動き。
 このままではあと60年で世界から土壌が消えてしまう。生命が生きられない環境になってしまう。そこまで事態は危険な方向に動いている。土地劣化の最大の理由である工業型農業・企業型農業から生態系の力を守り、活用する家族農業によるアグロエコロジーへの転換がFAOでも強調されるわけだが、日本政府はその真逆に進んでいる。そして土地劣化がこれ以上進めば、生態系の崩壊、命の崩壊の連鎖が起きる。これだけ世界が警鐘を鳴らしても日本は関心持たず。

カ 以下のような取組が、土地劣化の防止・削減・反転に必要である。
(ア)土地に由来する商品の持続的な生産・消費行動を促す、セクター間で調整された行動計画
(イ)土地劣化を促進する誤ったインセンティブ(持続不可能な土地利用を益する補助金等)の排除と、持続可能な土地利用行動に報いる建設的なインセンティブ(持続可能な利用を促す規制等)の考案
(ウ)農林業、エネルギー、水、社会資本等の行動計画を統合する、生態系の広がり(ランドスケープ)でのアプローチ

 種子、水、農地、すべて日本はこれとは真逆の方向に進みつつある。

 この政府間科学ー政策プラットフォームでの議論の方向と日本の政策の方向とは多くの点で真逆になっている。そうした議論を元に政策を組み立てることができれば日本も変わる。しかし、実質、政策を握っているのは米国・多国籍企業の意向を汲む規制改革推進会議などであり、こうした議論は揉み潰されてしまうだろうか?

 数年前、生物多様性のセミナーで発表した後、参加されていた土壌学の研究者の方から生物多様性とはまず土壌だと指摘を受けた。まさにその通り。どうしても絶滅危惧種の動植物など目に見えるものの多様性ばかりを考えてしまう。しかし、まさに土壌に存在する目に見えない微生物こそがこの惑星の命を支えている。
 そして植物にとって土壌にあたるものが、人間にとっては腸である。生物多様性とは我々の体の中にも存在する。100兆以上とも言われる腸内細菌。そしてその生物多様性はどんどん失われつつある。世界の生物多様性の喪失は自分とは離れた外の出来事ではなく、我々の体内もその喪失にシンクロして、我々も多様性を失いつつある。伝統的生活をおくる先住民族に比べ、我々の腸内細菌の多様性は大幅に減っている。その喪失の結果としてのアレルギー、自己免疫疾患、そして耐性菌はガンを超す人類最大の脅威へとなろうとしている。さらには生殖能力の劇的減少。
 すべてはつながっている。経済、農業、食品流通に留まらない。医療・福祉、文化、さらには健康、人の生と死。世界はその危険に気がつき出した。政策を変え始めた国もある。

 でも日本では危機においやる政策がまかり通る。相次ぐ農薬規制緩和、止まらないGMOの承認、種子法廃止・農業競争力強化支援法・農地法改悪、さらには市場法改悪…。
 それがさらに大きな危機をもたらすことに政策を進める政府関係者は気がついていないのだろう。どこから変えられるだろうか?

農水省: 生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)第6回総会の結果について

The Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services (IPBES)

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