多国籍企業による食の独占を阻む2つの国際的な取り組み

 種子や水などの公共の富の私物化に走る多国籍企業、その活動を拡げるための自由貿易協定、ラテンアメリカで、アフリカで、そして日本を含むアジアでそのプロセスは進みつつある。この動きは止められないのか?
 一方で、そうした多国籍企業による食のシステムは決して順調ではない。米国の遺伝子組み換え食品表示義務を押しつぶす上で大きな力を発揮したロビー団体 Grocery Manufacturer’s Association(GMA)からはメンバーの脱退が相次いでいる。人びとはNon-GMOを超えて有機食品の必要性に気がつき始めた。
 そして今、世界的に化学肥料や農薬と種子がセットになった「緑の革命」、いわば農業の化学産業化に対する根底的な異議が広まり、生態系の力を活用するアグロエコロジー運動が世界化しようとしている。
 もっとも多国籍企業の政治力は桁違いに大きく、各国の政治を牛耳っている。この動きを個々の国の市民運動が個別に打破していくことに大きな限界が存在する。そうした市民運動の国際連携はとても重要だが、それに加え、それと連動する国際的なメカニズムが不可欠になる。
 今、多国籍企業に関する拘束力のある国際条約と小農民の権利宣言の制定作業が国連で進んでいる。

 小農民の権利宣言(正確な訳をすることが難しい。英語では“United Nations declaration on the rights of peasants and other people working in rural areas” 英語だとpeasants、スペイン語、ポルトガル語だとcampesina(o)sでばっちり確定できるのだけど、日本だと、小農、小農民、小規模家族農家、百姓などの訳語が並び立ち、一般に通じる言葉、そして担う人が納得する言葉で一致するものを確定させることが難しい。ここではとりあえず小農民としておく。すべてを訳せば、国連小農民とその他の地方で働く人びとの権利宣言)は世界人権宣言を世界での小規模家族農家の置かれている状況に合わせて具体化したものと言うことができる。食料主権、種子の権利、土地の権利、文化の権利などにおいて踏み込んだ宣言として練り上げられ、完成間近。
 この宣言は法的拘束力を持つものではないが、種子を多国籍企業に独占されてしまうような状況において、この宣言が成立することは世界の農家だけでなく、消費者を含めたすべての市民社会にとって大きな意味がある。来年からは国連の「家族農業の10年」が始まる。多国籍企業による農業支配の進行に対して、この宣言が出ることは「家族農業の10年」の動きにも連なり、大きな弾みとなるだろう。
 しかし、日本政府は外務省が米国政府に追従して、宣言成立に異論を唱えた。なぜ外務省が何に基づいて、そんな対応をしたのか、国会でも説明がない。農業に関わることであるにも関わらず農水省はまったくノータッチ。マスコミ報道もない。

 もし、このまま種子の独占が進めば、いずれ、食が多国籍企業のものとなってしまいかねない。いや、すでにそれは部分的にはすすんでおり、日本で消費されるトウモロコシや大豆の大部分はすでにそうなっている。それが今後、コメや麦でもそうなってしまう可能性がある。
 そうした動きは今、世界で進みつつある。だからこそ、人びとはこうした宣言を準備して、そうした動きに対抗しようとしている。日本からもぜひ注目しよう!

 この宣言の次回の作業部会は4月9日から14日までジュネーブで開かれる。

ラ・ビア・カンペシーナのラテンアメリカの小農民権利宣言に関する記事
Avances del proceso de Declaración sobre los Derechos de los Campesinos por parte de la ONU

多国籍企業を規制する国際条約に関する国際的な市民の取り組み
Binding Treaty TNCs

The food industry lobby is collapsing, is its “science” institute ILSI next?

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